伯爵令嬢 リエッタのお誕生日会3
バーティーの後、自室に戻って湯あみと着替えを済ませ、無言&無表情で犬のブランカのふわふわの毛を堪能する。真っ白なふわふわの毛に顔と手を埋めてひたすらもふり続ける。
ブランカはなすがまま、いつも私が落ち着くまでずっとじっとしてくれる。
我慢強い子なのだ。
我慢強すぎて円形脱毛症になるまで耐えさせてしまうことがある。
ごめんね、ブランカ。
まだ8歳でいらっしゃるのに!さすが次期女伯爵だ!などと周囲から聞こえるように囁き合う声が耳に入った。明日から届くであろう婚約申し入れの手紙をどう躱すかと考えるとうんざりする。
(平気なわけないでしょう!まだ幼気な女の子なんですからね!)
(ええ、傷つきましたよ!固まりましたよ!最初はね!)
と心の中で叫びながら座った目で遠くを見つめ、無言でブランカを撫で続ける。
ノックの音の後、そっと扉が開き、上品な香りが鼻孔をくすぐる。
香りの主は、無言でブランカをこねくり回す私の様子を見ながら、気づかわし気な視線を
送ってくる。
詰めていた気をため息とともに吐き出すと、甘えた声が出てしまった。
「バーバラお姉さま。お話を聞いてくださいますか?」
ぱっと周囲が明るくなるほどの華やかな笑みを浮かべ、バーバラ様がドアの隙間から滑り込み、ブランカを退けて私の隣に座った。
救世主に感謝の表情を向けて、ブランカは自分の特等席のソファーに移動した。
脱毛症は回避できたようだ。
バーバラお姉さまは優しく頭をなでながら聞いてきた。
「今日のあなたを誇りに思うわ。あちらでも同じように毅然と出来ていたのね?」
「はい…。ここでは仕返しもできましたけど、冷静になったら言われたことが悲しくて、なんだか空しくなってしまって…。」
ふわりと抱きしめられて肩の力が抜けた。
「本当によく頑張ったわね。私の大事なリエッタを悲しませた代償はしっかり払わせるわ。」
私の優しいバーバラお姉さまは、とってもお強いのだ。