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【ZERO2】Against The Wind  作者: 市尾弘那
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プロローグ

シリーズものの2話目です。

1話目はこちら→http://ncode.syosetu.com/n1004h/

「ねえねえ、Grand Crossってバンド、あるじゃん」

「えー、知らなーい」

「知らなくないって。前、あたしライブに連れてったことあるもん」

 渋谷のセンター街で地面に直接座り込みながら、友人の一人にそんなふうに言われ、少女は眉を寄せた。制服の短いスカート姿のままあぐらをかいているが、下にマイクロミニスパッツを履いているので気にしない。

「何? アマ? あたし見てんの?」

「だからそう言ってんじゃんよ」

「それが何? 覚えてないんだから、大したことないんでしょ」

「そーれーがさあっ。聞いた話だけど、事務所ついたらしいよ」

 ちょっと興奮したように言う友人の顔を白けた目で見返す。今時、バックに何かついたところで売れるバンドなんて限られている。少女の友人の彼氏もバンドマンで、どこかからCDを出したとか聞いたのが一年半ほど前だったか。未だにテレビなどで見かけることはない。そんなものだ。

「だからあ? 別にそんなん、渋谷にはごろごろいんじゃね?」

「だってCRYの事務所らしーよ」

 その言葉に、少女は一気に目を見開いた。CRYは、少女も好きなメジャーバンドでCDも何枚も持っている。特にヴォーカルの整った顔に漂うミステリアスな雰囲気とハスキーな声が好きだった。パチパチと瞬くと、苦労してつけた付け睫毛が揺れるのが見えた。

「うっそ。凄ぇじゃん。じゃあオーサワと飲み会とかやるってこと?」

「いや、オーサワと飲み会するかは知らないけどさ。でもあたし、クロスのヴォーカルのカオ、結構好き。歌とか良くわかんないけど」

 スパイラルパーマをかけた長い髪を指先でくるくる回しながら、友人はガハハと笑った。その言葉に思い出そうとしてみるが、どうにも思い出せない。

「どんなん?」

「ちょっと可愛い。でさあ、友達の先輩が高校一緒だったんだってー」

「へーえ」

「んで、電話番号売ってやるって言うからさー、ミュウミュウのポーチと交換しちった」

 それを聞いて、少女は思わず吹き出した。

「馬鹿じゃね? ミュウミュウの方がいーよ」

「だって万が一さ、売れたららっきーじゃん」

「カオ、どんなん? 何か持ってないの?」

「持ってる持ってる」

 友人が携帯電話のディスプレイに表示した画像は、確かにちょっと可愛かった。少女の好みではないが、友人は好きそうなタイプだ。

「ケータイ? 家電?」

「家電」

「家電なんかかけるわけにいかないじゃん」

「一人暮らしだもん」

 それを聞いて、ちょっと面白くなる。

 つまらない日常の中の、ちょっとした刺激。すぐに飽きてしまう遊び。

 でも、確かに売れればその電話番号の価値は跳ね上がる。そして、売れるバンドなら、売れる前から知っているのはちょっとしたステータスだ。

「それ、大事に持っときなよ。そのうち売れたら、売ればいーじゃん。売れなきゃ消すだけだし」

「株みたいだよ、それ」

「株みたいなもんでしょ。良く知らないけど。でもそれ、ホンモノ?」

「ニセモノ出回るほど名前売れてないって」

 それもそーか、と納得して、少女は自分の携帯電話を取り出した。着信表示を非表示にして、にやにやと笑う。

「確かめとこーよ。ホンモノかどーかさ」











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