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「ルーシー!」
「うおわぁっ!?」
うるせぇっ!!なんだ一体!?
……も〜朝っぱらからデカい声出すなよ……誰だ全く……
「……?」
え〜っと、入り口の方に誰か立ってるっぽいな
……上下黒いジャージ、短めの黒っぽい髪、尖った耳……
……あぁ、リサか
「……おはよう、リサ」
「ん、おはよう。まったく、もうすっかり朝ご飯冷めちゃったよ」
リサは不機嫌そうな顔をする
「……ごめん」
「も〜、はやく顔洗ってきな」
「……分かった」
「はぁ、……しっかりしてよ、ねぼすけさん」
ガチャッ……バタンッ!
リサは呆れたように肩をすくめ、部屋から出ていった
扉の向こうからギシギシと歩く音が遠ざかっていく
「……」
ボロい天井
今にもくずれそうな床
きたない壁
ほこりっぽいベット
ぜ〜んぶいつも通り、みなれた光景
……ん?何がしてぇんだ、俺?なんで周りを見回したんだ?
「……顔洗うか」
な〜んかまだ目が覚めてねぇ感じだ
……今起きないと、もう2度と起きれねぇ気がする。とりあえずベットから出よ
「うっ」
っと、なんだ?体が重てぇ……
昨日鉛でも食ったっけか?
「さすがにスカジャンとジーンズのまんま寝たのはヤバかったかな……。」
……あぁやべぇ、はやくベットから出ないとまた寝ちまいそうだ
さっさと起きよう
「……ヤな夢見たな」
ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー
ー
「やべぇ」
やべぇ
結局しばらくベットの上でぼーっとしちまった……!
あれ、リサが来てからどれぐらい経った?
「クソッ」
かんっぜんにやらかした……
せっかく起こしてくれたのに……急がねぇと俺の朝メシがっ!
ガチャッ!
ダルい体をむりくり動かして、なんとかベットを飛び出してドアを開ける
と、
「おっ。……ん、あれ?ルーシー?今起きたの?」
たまたま俺の部屋の前を歩いていた男にばったり出くわした
「……ベイン」
リサの次はベインかよ
褐色肌に長いそでの白シャツとジーンズ。背が高ぇのもあってめちゃくちゃイカつい見た目をしてんのに、話すと割とフツーだったりする。それがベイン
まとめると不思議なやつって感じ
「そして何かと鼻につく……」
「?……こんな時間まで寝てただなんて、よっぽど良い夢を見てたんだね、ルーシー」
「からかうなよベイン。……ってか、またピアス増えた?先月も新しいの買ってなかったか?」
「あぁ、これ?」
俺が指をさすと、ベインはジャラジャラとピアスを付けた耳に優しく触れた
「うん、これはね、この前ウチに依頼に来てくれた子が僕にくれたんだ。可愛いよね」
「……あ〜、はいはい。『相談所』の客とね、いつものヤツね」
「あれ?ルーシーこういうデザイン嫌いだっけ」
「いえいえ、よ〜く似合うとりますよ。コーンスープとパセリぐらいベストマッチ」
「ふふ、ありがとう」
ベインは爽やかな笑顔を見せる
「……」
ウゼぇ〜〜〜なんでこんなモテるんだコイツ
こんな全身タトゥー入ってるしピアスバチバチに開けてる15才(推定)なんて、俺ならいやだね。ときどき何考えてんのか分かんなくてちょっとこわいし
女の気持ちはよく分からん
「……」
「なんでそんな微妙な顔してるの?……そういえば、今寝起きってことは、これから海に行くの?」
「ん?あぁ、そうだよ。顔も翼も洗いたいし。ほんと水道が無いと不便よな」
「だったら、行くのはもう少し後だね」
「ん?」
「でも、うん。そうだね。最低限髪は整えようか。ねぐせが凄くて失敗したわたあめみたいになってるし」
「例えが分かりにくいし、そもそも、『もう少し後』?どゆこと?」
「……あぁ、そっか。ついさっきまで寝てたんだもんね」
……おいおいなんだなんだ、急に顔を近づけんなよ
キスされるみたいでドキドキするだろうが
……なんだ?大声で言えないようなことなのか?
「いいかい、ルーシー。落ち着いて聞いて。」
「いや、なんで耳元でささやくんだよ。普通にしゃべれよ」
「今ね、お客さんが来てるんだ。君をご指名だよ、ルーシー」
「ムシかよ……ってか、え?」
俺?