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自称癒士の救世感  作者: 筆工房
第一章~自称癒士の旅支度~
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第六話:無毛の勇者はキャラが濃い

「今回の勇者は三人ではなく、四人なんだね」


 食堂へ案内される間、その言葉が引っかかっていた。どういう意味だろう。そのままの意味かもしれないし、よく分からない。


「今回は大活躍だったね」


 美形から声を掛けられ、現実に引き戻された。


「あ、いえ、こちらこそ助けていただいてありがとうございました」

「いいよ、フランクで行こう。私たちは仲間だろ? 同じ境遇の」

「ありがとう。ところで……」

「さっきの質問かい? 王位をくれるかってやつ。あれは試金石さ」

「試金石?」

「あそこで王位をあげる、なんて答えられたら、一生信用しないと決めてただろうね、あの女王を。

 後は知りたくなったのさ、単純に」


 この人は多分凄く慎重なんだ。口振りからは、まだ女王を信用してない節もある。


「ところで君は少し知識がありそうだね、私たちよりも」


 そんな人からこんな質問がくれば、喉元にナイフを当てられたように感じるのも無理はない。


「僕は、あなた達よりも早く目が覚めたんだ。その間に王女達と話す機会があっただけだよ」


 絶対僕のことも信用してないな、これ。


「大丈夫だって。信じてるよ、君のこと!」


 いや、それが怖いんだってば。心を読み取る能力なんじゃないの、この人。


「しかし話しづらいね、名前もないと」

「それについては」


 共に食堂に向かっていたエレノア姫から声が掛かる。


「皆様が勇者の使命に同意いただければ、聖王陛下より天名を授かる儀式が執り行われます」

「いらねぇ」


 赤髪は心底嫌そうな顔をする。


「そうですかな、それがしは楽しみでござるなぁ」


 皆の注目がスキンヘッドの男、一点に集まる。


「ん、どうなされた。皆の衆?」

「お前、喋れたのかよ」


 しかも独特。


「君は黙って見ていたじゃないか、ずっと」

「いやぁ、女王様の美しさに|見惚れておってな。その美貌と美声を目耳に焼きつけようと集中しておった故、口を挟む余裕が無かったでござるよ」

「只の女好きじゃねぇか!」

「胆の据わった方だと勝手に勘違いした、数分前の自分を殴りたい……」


 見た目もキャラも濃い人だった。


「して、お主はどの娘がタイプでござった?」

「お前、そこでよく俺に話しかけられるな!? 本当にさっきの話聞いてたのかよ!?」

「ではお主は!?」

「いや、そこに王女様達がいるのに言えるわけないでしょ!」

「つまり、意中の女子(おなご)がいるのでござるな!?」

「しまった……」

「ははーん、さては姉様にずっと見惚れてたな~?」


 ぐっ、両脇を固められた。すると、先頭を歩いていたエレノア姫が急に振り返る。


「私の妹達、とても可愛かったですよね!」


 いや、貴女も参戦するのかよ。


「……不潔」


 さらに後方のエルム姫から追い討ちがかかる。

 これが四面楚歌ってやつか。半分涙目で美形に助けを求める。


「私は……惹かれなくてね、あまり。譲るよ、君に」


 あっさりと見捨てられてしまい、責め苦は食堂に着くまで続けられた……。


 正直な話、渡り廊下のエラと部屋で会ったエラ、玉座のエラの連続ギャップは卑怯だと思う。

 ……面倒くさいから絶対言わないけど。



 食堂では、豪勢なフルコースが振る舞われた。

 前菜、スープ、煮魚、ソーセージ、ロースト肉、パン、果物……


「カボの冷製スープでございます」「ブゥの腸詰めでございます」


 材料名が謎だったので、試しながら記憶の中のどの食材に近いか、想像しながら食べることになった。

 王宮料理だからかもしれないけど、幸いにも舌に全く合わない食材は無かった。特に温かい焼きたてパンは、旅先で食べられない可能性が高く、おかわりしておいた。

 他の勇者の受け止め方も様々だった。

 美形はエレノア姫にテーブルマナーを逐一確認し、綺麗に食べることを心がけていた。

 本当に王族入りする気なんじゃないだろうか。僕はそれを盗み聞きできたので、ありがたかったけど。


「ん~、美味! もう一杯いただけますかな? できればもっと大きなグラスで!」

「ツーンときますなぁ! この食材はどこで仕入れたものでござるか!?」


 お酒と香辛料が気に入ったらしく、給仕係に何度も産地や入手方法を熱心に聞いていた。

 酒好きで女好きとか、俗世の垢にまみれすぎじゃない?


「あー、俺これパスだわ。食べる気しねぇ……」

「では代わりの品を用意いたします」


 赤髪はソーセージやロースト肉を、一口食べるや否や吐き出してしまっていた。

 菜食主義者なのだろうか? でも煮魚は食べていたな。そういえばそういう宗教もあったはずだ。記憶になくても体が覚えていて、忌避反応が起きるのだろうか。前世を知るヒントになるかもしれない。


 最後の果物になったところで、


「ではわたくしから、この世界の歴史……

 皆様を招請(しょうせい)することになった経緯も含めて説明いたします」


 エレノア姫からこの国の歴史が語られた。

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― 新着の感想 ―
[良い点] てっきり勇者として召喚されたみんなは同じ世界の同じ時代の人かと思ったんですが、どうも違うみたいですね。 記憶がないのは不便ですねぇ。
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