表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自称癒士の救世感  作者: 筆工房
第四章~自称癒士のお使い~
49/66

第四十五話:サカにある村の秘密

「では、日が沈みましたらお迎えにあがりますので」


 ロロの反応を待たずに、そう言い残してセイブ村長は出ていった。楽しめる所とは一体━━


「どんなところでござろうな、ロロ殿!」

「起きてたのかよ……」


 狸寝入りしていたチェリャが身を乗り出して尋ねてくる。ワクワクという擬音語が聞こえてきそうだった。

 正直なところ、ロロはセイブが好きではない。女王エリーとは別種の嫌悪感がある。


「じゃあ、勝手に行ってこい」

「ロロ殿は行かないでござるか?」

「興味がねぇ」


 ロロはベッドに横になる。そのまま眠りの底へと落ちていった。






「━━いやぁ、楽しみでござるなぁ!」

「はい、是非ご満足いただけると確信しております」


 頬に当たる夜風が、ロロの意識を引き戻した。チェリャの五月蝿い声が、えらく近くから聞こえる。


「あ!?」


 ロロはようやく自分の置かれた状況を理解して、飛び起きる。


「おっとと……ロロ殿、急に動くと危ないでござるよ」

「いやいや、そうじゃないだろ。なんでお前は俺を背負ってるんだ!」


 なぜかチェリャに背負われ、日の沈んだ村を進んでいた。


「そりゃ、ロロ殿が寝ていたからでござる」

「行かねぇっつったろ」

「ロロ殿、よく考えてみるでござるよ」


 急にチェリャの顔つきが真剣になる。


「な、なんだよ……」

それがし一人だけでは、寂しいでござろう」


 ロロは何度か頷いたあと、にっこりと微笑む。


 そして艶々の額を全力で平手打ちすることに決めた。






「━━到着いたしました。こちらでございます」


 セイブは何の変哲もない家屋の前で立ち止まった。扉の前に立っても誰の声も聞こえず、その建築物はただひっそりと佇んでいる。“楽しめる所”であれば、楽しんでいる声が聞こえそうなものだ。

 ロロには一つ思いあたるものがあった。


 (おい、まさか薬物じゃねぇだろうな)


 セイブに聞こえないように、チェリャに耳打ちする。


 (さて、どうでござろうな)

 (さて、ってお前━━)


 そういう間にセイブは扉を三回ノックする。一拍おいて中から声がかかる。


「こんばんは。主人は今留守にしているよ」


 中からやや年季の入った、柔らかい女性の声がする。しかし、住人不在とはタイミングが悪い。帰ろうぜ━━ロロがそう言いかけた時だった。


「旦那なら、さっきナタリアの家で見かけたよ」


 セイブが答える。寝ている間に誰かの家へ寄ったのだろうか、そんなことを考えていると扉が静かに開いた。


「入りな」


 これは先ほどの声と同じ人物だろうか。声質は同じだが、声色が全く違う、ドスの利いた声だった。

 中に入ると、至って普通の民家の内装であった。後ろからガチャリと鍵をかける音が聞こえる。


「なるほど、合言葉でござるか」


 “主人”や“ナタリア”に意味などない。ただのキーワードだった。

 チェリャは子供のようにウキウキしている。


「でもただの家じゃねぇか」


 辺りを見回しても、扉を開けてくれた女性以外に人の気配がない。怪しい臭いも、今のところはなさそうだ。


「こちらです」


 セイブに奥の部屋へと案内される。そこは寝室のようで、ベッドがポツンと一台置かれていた。

 セイブはマットレスに手を掛けると、片手で軽々と持ち上げた。するとベッドフレームの中に地下への階段が作られていた。


「なんとこれも作り物でござったか!」


 細腕で楽々と支える姿を見れば、イミテーションであることは容易に想像できた。

 階段を降りていくと、少しずつ人々の気配が強くなってくる。突き当たりにある金属製の扉から、押さえきれない喧騒の空気が漏れ出ている。


 ギギィッと押し開けられた扉の先には、地下とは思えない空間が広がっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ