表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自称癒士の救世感  作者: 筆工房
第一章~自称癒士の旅支度~
4/66

第三話:状況は落ち着く暇を与えてくれない

「御手洗いはどこか、教えていただいても?」

「分かりました。エルム、案内を。

 わたくしはこの後の公務がありますので、これで失礼いたします」

「あ、はい。ご丁寧にありがとうございました」


 軽く会釈されたので、返しておく。どうやらお辞儀の意味はこちらでも同様らしい。一方のエルム姫は無言で歩きだす。付いてこい、ということだろう。


「教えていただければ一人で行きますよ!」


 エルム姫は一瞥したものの、すぐに前を向き歩いていった。何度か角を曲がり、部屋の物より一回り小さな扉の前へ案内された。


「ありがとうございました。あ、帰りは覚えているので大丈夫です!」


 互いに会釈し合うと、エルム姫は廊下を引き返していった。


 信用されてない、訳ではないのか……。


 本当の目的は排泄行為では無かったけれど、一人になって緊張の糸が切れたのか、尿意を催してきたので用を足す。

 水を流すスイッチはなく、その場を離れても水は流れない。周りを見渡すとレバーのついた蛇口と木製の器が目に入った。公園で見かけるやつとよく似ている。試しに動かしてみると勢いよく水が出てきたので、慌てて器で受けた。それを使って一応便器を流しておく。

 使い方、合ってるだろうか。


 もう一度水を汲み直し、バシャバシャと顔を洗う。

 汚れた訳ではないが、目覚めてから感じていた頭の“もや”が全く取れない。水はとても冷たく、ピリッとした感じが心地よかった。井戸水かもしれない。

 傍に掛けてあった手拭いを取ろうとしたが、伸ばした手は敢えなく空を切ることとなった。

 やはり“召喚酔い”とやらは顔を一回洗ったくらいでは取れないらしい。


 だけど、自分のことが何も思い出せない……。


 部屋への道を辿りながら考えてみたが、名前はおろか、年齢や職業、家族構成、友人など自分に繋がる情報が完全に抜け落ちていた。知識だけが残っている。嫌な感じだ。

 鏡がトイレに無かったので、夜になるのを待つしかないかな。


 “落ち着けるお部屋” に戻ってきた。一応ノックをしてみたが、特に返事はない。ガチャリと扉を開けて中に入る。

 天涯付きのベッドに丸いテーブル、二組の椅子、それに


 横に佇む……黒服の……少……女……



 先に別れたはずの第二王女、エラがそこにいた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ