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自称癒士の救世感  作者: 筆工房
第三章~自称癒士の開花~
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第三十三話:サカにある村

 サカにある村は、今まで通ってきた村とは毛色が異なる。

 聖王国の首都グリモアと、魔王封印の地ザンタとの中間点に位置することから、流通と防衛の要所に位置づけられている。

 今までの村は、異形に対して取りうる術が“逃亡”一辺倒であった。それに対して、サカにある村は“戦闘”することを視野に作られている。

 防壁に囲われており、聖王国軍も駐留している。上下水道も整備され、街灯が立ち並ぶ様は、もはや街と呼んで差し支えない。

 なぜ村と呼ばれているのかと言えば、それは━━街としての誇りを抱かせないためだ。

 本当にこの世界の人々は徹底している。このようにしっかりした街も、捨てるときはあっさりと捨てていくのだ。


「でも、間に合ってよかった」


 門の上、防壁に腰かけた鶴人のネネが手を振っていた。黒くすらりと伸びた鳥型の足を組み、前後に揺らしている。表情を見る限り、まだ村への襲撃はなさそうだ。

 しかし空には灰色の雨雲が迫ってきており、嫌な気配の接近を予想させた。






「━━ありがとう、ネネ。助かったわ」

「気にすんなって」


 防壁の上から軽やかに降りてくる。相変わらず、純白の髪と大きな羽根が美しい。

 野営地を出立して間もなく、ネネが荷馬車を訪れた。事情を説明すると、一も二もなく村への先行を引き受けてくれた。


「とりあえず、危険が迫っていることは伝えたよ。

 駐留軍に厳戒態勢をとってもらってる」


 このように協力的に接してくれるネネにも、僕が記憶を取り戻しつつあることを秘密にしている。

 理由は女王へ抱いている不信感もあり、ネネから情報が漏れることを危惧していること、そして━━


「今日も可愛いなー、ヒロ。勇者たちにちゃんと付いていけてるか?」

「ありがとう、ネネ。エラが、ちゃんと守ってくれてるよ」

「小っちゃいのに、偉いなー」


 頭をわしわしと撫でられる。

 二回目に会った時から、違和感を感じていた。ネネは僕のことを勇者として認識していない節がある。最初に会った時点で、僕が転生者であることを伝えているはずなのにだ。

 もちろん僕が、“癒”という戦闘向きでない能力であるのも理由として考えられる。でも明らかに、ただの少年扱いなんだ。


 かといって違和感を問いただす訳にも行かず、中途半端な状態になっている。


 もし、認識の違いがネネ自身の意志ではなく、誰かの魔法によるものだとしたら……。

 僕たちが違和感に気づいていると術者に感づかれたら、ネネ自身に危険が及ぶ可能性がある。


 そういったルーイの助言もあったからだ。

 僕も、優しいネネに危険が及ぶのは避けたい。


「ん、どした? また、あたいに見惚れてたのか?」


 そんなことを思い出していたら、ボーッと彼女の瞳を見つめてしまっていた。

 急に恥ずかしくなって、話をそらす。


「ところで、少し“穢れ”が濃くなってきてない?」


 このサカにある村へ近づくにつれ、少し空気が肌にまとわりつくような、重怠い感じがしていた。

 まるで修行の時に、魔力を制限された時のようだ。


「わかんねぇ」


 ロロが指先に炎を灯してみせるけれど、不都合はないようだ。他のみんなも、変わった所はないようだった。


「ヒロの方が感覚が鋭敏なのかもしれない。また教えてほしい、濃い所が分かったら」

「分かった」


 少しでも役に立てるのであれば嬉しい。


「さて、ちょうど村長と軍団長が今後の方針を話し合っているはずだ。ここから反対の防壁なんだけど、案内するよ」


 門兵に扉を開けてもらい、村の中へ入っていく。やはり今までの村とは発展具合が明らかに異なっていた。

 道は整備され、歩きやすくなっている。さらに中央には大きめの川が流れており、石橋がかけられていた。また、これまでは見かけなかった役所や鍛冶屋、ポーションを扱う店のような施設も見てとれた。

 整備された川には船がいくつか浮かび、慌ただしく搬入作業が行われていた。


「あたいの報告を受けてから、夜通し作業を続けているんだ」

「夜通し、ね……」

「あたいは鳥目だから、よく見えないんだけどな!」


 ケラケラと明るく笑う。

 他の村と変わらないのは、やはり老人や子供を全く見かけないことだった。


「さ、着いたぜ」


 防壁に程近い場所に、聖王国軍の軍旗がはためく施設を認めた。

 入り口で待機していた兵士たちが、近づく僕たちを認めると、脇へ避ける。


「ご苦労様、こちらはエラ=クリフィス王女殿下と勇者御一行様だ。団長殿に繋いでもらいたい」

「はっ、お話は伺っております! どうぞ、中へお進みください!」

「ありがとう」


 ヒラヒラと手を振るネネに続く。

 中へ入ると、筋肉質な大柄の男性と、やや小柄な男性が口論を交わしていた。

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