写真の中の笑顔
夜の九時、碧華は病院に到着し、付き添っていた優から医者の診断結果と、彩奈の今の様子を詳細に聞き、優を家に帰し一人で付き添っていた。この病院はレヴァント家が利用する完全看護で警備も行き届いた病院なので、碧華は病院のスタッフに、さっき会ったばかりの二人の親の顔を見せると、この二人が来ても絶対とりつがないようにお願いをした。彩奈が眠る部屋は病院の最上階のビップルームで部屋が二部屋あった。
彩奈のベッドの横には、彩奈がきていた服と身に着けていた物が丁寧に整理されて置かれていた。
ボロボロの小さな巾着袋の中には碧華の本が入っていた。何度も読み返されたようにボロボロだったが敗れた箇所はテープで補修されていて大切にされていたことがわかった。そしてもう一つ、手作りのお守りが一番上に置かれていた。
「後ろにはとうじょうあやなと詩集されていた。碧華はそのお守りを開いて中を確認するとそこには古い写真と、最近のものらしい小さな紙に二つが入っていた。紙には日本語で「おばあちゃんのところにいつか帰れますように」と書かれていた。
その写真には神社の鳥居の前でおばあちゃんらしい人とランドセルを背負った小さな女の子の写真が写ってあった。碧華はその写真を眺めていると、突然彩奈が何やら声を出した。
碧華は慌てて近づいたが意識は戻っていない様子だった、涙を流しながら
「おばあちゃんのところへ帰りたい」
そう寝言を囁く彩奈を見て碧華はある行動に出た。碧華はそのお守り袋と写真をスマホで撮影すると、碧華は彩奈がまだ眠っていることを確認すると、隣の部屋に入り、少しドアのすき間を開けて電話を入れることにした。
「もしもし、朝早くにごめんね。元気?」
碧華が電話越しにいうと、電話の相手も朝の六時だというのに爽快な声が返ってきた。
〈大丈夫ですよ、毎朝五時起きですから。何か御用ですか?それとも母に用ですか?〉
「あなたに緊急の仕事の依頼をお願いしたいのよ」
〈緊急ですか?今休暇中と言いたい所ですけど、碧華先生の頼みとあれば仕方ありませんね。どのような案件でしょうか?〉
「実は人を探してほしいのよ。写真を送ったんだけど、そこに写っているのあなたの住んでいる近くの神社でしょ。そこに写っている写真は多分10年以上も前のものだと思うんだけど、隣の女の子の名前が東条彩奈ていう子なんだけど、探して欲しいのはそれに写っていそのおばあさんの方なんだけど」
〈僕は弁護士ですよ、探偵ではないのですが〉
「あら分かってるわよ、でもあなたの住んでいる所から結構近いと思うから探しやすいかなと思って、それにおばあ様とかを探すのなら、弁護士だって言った方が探すのに探しやすいかなって思って」
<まっ一応神社から聞き込み行ってきますよ>
「よろしくね、わかったらこっちの時間は気にせず知らせてね」
<了解しました。新作楽しみにしてますから>
「情報が早いわね」
<こう見えても僕は今でも碧華先生の熱狂的なファンなんですよ、今回の限定本は抽選に外れてしまいましたが当たっていたら代わりにエンリーに行かすつもりにつもりで貸しを作っていたんですよ〉
「あらそうだったの、増刷してもらって送るわね。成功報酬としてね」
〈おやでは気合を入れて探すとしますか〉
「なる早でよろしくね」
碧華は電話を切ると、一人ブツブツとつぶやいた。
「今回の新作の予備って何冊もらえるんだったかしら」
碧華はスマホを切ると隣の部屋から出た。碧華が彩奈が眠っている部屋に戻り、椅子に座ってスマホのメールやラインやブログなどしばらくの間確認していると、病院の警備スタッフの一人が部屋をノックしてきた。碧華はそっと扉を開くと、スタッフの一人が頭をさげて小さい声で言った。
「すみません今、ここに入院中のご両親だという方が見えられて、連れて帰るとか言って下で暴れているのですがどういたしましょう」
「まだ意識が戻っていない以上面会謝絶で動かすなんてもっての他だと伝えてちょうだい、もしそれでも騒ぐようなら警察を呼ぶと伝えてちょうだい」
「かしこまりました」
スタッフは慌てた様子で下におりて行ったが、その後大人しく家に帰ったようで静まり返っていた。