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AOKA・SKY新作制作現場披露パーティー④

それは巨大スクリーンに映し出された。


″桜の木の記憶達‶


「ねえ、碧ちゃん、桜っていうと日本のイメージが強いけれどテーマが日本なの?」


シャリーが瞬時に隣の席のパソコンを操作し、タイトルの表紙に桜の写真を挿入し、文字が日本語で打ち出され、その下には英語訳が付け加えられた。

そしてその隣ではパソコンを使ってテマソンが瞬時にランドセルを背負った少女の絵を書き足した。


その完成度の高さとスピードに会場中のみんなが感動の声上げていた。


「正確には日本人の女の子が見知らぬ異国で生き抜いた作品にしようかなと思っているの?」


「日本の女の子?」


「ええ、今日、大好きなおばあちゃんのいる日本に旅だった少女の物語よ」


碧華の言葉で語られる少女の物語を会場中の人々が聞き入った。

碧華は少女の生い立ちや十年の長い間どのように生き抜いたのかを語りながら、次々と彼女の詩を画面上に打ち込んで行った。


その話に相づちを入れながら、テマソンはその少女の絵や祖母、母親や半分血の繋がった妹の絵など、碧華と相談もしていない状況でありながら、的確に碧華のイメージ通りの挿絵をすごいスピードで描き続けた。


シャリーもその背景などの写真を差し込みながら、あっという間に10作を完成させたのだ。

碧華はこの物語の最後にこう締めくくった。


人の心とはもろいものです。


彼女の母も最初は彼女をいとおしく愛していたにちがいありません。だけど、彼女の父親とのほんの少しの心のすれ違いによって彼女の心が壊れてしまったのです。


母親だけが悪いのでしょうか?そう問いかけた。


彼女は罪を償わなくてはならないだけど、傷ついた彼女の心は誰が癒してあげられるのでしょうか?永遠に笑うことも許されないのでしょうか?


言葉とはナイフが無くても人の心に傷を負わせることができる凶器になるのです。

その逆もしかり、言葉で救えることもあるはずです。

それは言葉には魂が宿っているからです。


人の心は愛を求めているのです。愛には愛で答えるしか方法はありません。

少女は愛をあきらめなかったのです。

希望を捨てなかったからこそ。絶望の中で見つけた小さな命を育てることで彼女は自分の未来を光につなげたのです。


人は愛を求めている、だけど弱い生き物なのです。

求めも求めても得られない愛もある。だけど、手を伸ばせばつかめた愛もあるはずです。


笑いながら誰かを傷つけながらも、反面自分も傷を付けているのに気付かない人も多くいます。

どうか皆様の手にある愛を大切にしてください。


そしてあなたが欲しいと願う優しさを、誰かにまずわけてあげてください。

愛の輪が広がり世界中の子どもたちが笑顔で未来を語れる世界になりますように


そうつづり詩集は完成した。

開始から一時間しかかかっていなかったが、会場中の人々からは感動の拍手が巻き起こり続けた。

そして新作制作披露は幕を閉じた。


その後、二時間の間、ファンとの交流が開かれ、さまざまなトークや質問コーナーが行われた。


そして予定通りの時刻に全てが終了し、会場を出る際には、ファンへのサプライズとして出来立てほやほやの新作本が全員に配布されたのだ。


七万人分もの本の製本を二時間で完成させた裏には多くのスタッフと最新の印刷機材の投入があった。


かなりの資金が投入されたが、それを上回るほどにグッズの売り上げがあり、それと同時に、会場の一部には親の虐待や貧困の為に学校へ行けずにいる子どもたちを支援する団体への寄付もかなりの額が寄せられた。


今回のファンの集いは大成功のうちに幕を閉じた。

碧華はのちにこの本を彩奈とシャラン宛に贈った。すると、彩奈からは丁寧な令状と共に、祖母と妹と三人で並んで満開の神社の桜の木の下で仲良く三人で並んで笑顔で写る写真が送られてきた。



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