AOKA・SKY新作制作現場披露パーティー①
「碧華、どうするつもりなの?」
車に乗り込んだ碧華とテマソンはコルドリアムドームに向かいながら小声で話しかけた。
「どうって?」
「新作に決まってるでしょ。急に10作も作れるの?それもさらし者みたいに七万人も見ている前でなんて、小心者のあなたにできるの?」
「あら、テマソン、あなた私の弟何年してるのよ、私はね、やると決めたらやる女なのよ」
「知ってるわよ、それでいつも時間に追われてるんでしょ」
「そうよ、だからきっと大丈夫よ。それに明日から新作の構想ねろうかと思っていたのよね。10作ぐらいだったらすぐにでもかけそうよ」
「あら、奇遇ね、私もね描きたい絵があったのよ」
二人は顔を見合わせてニヤリとさせた。
「あらすごいじゃない、なあにまた私をのけ者にして二人で何かしてたの?」
シャリーが碧華の隣から顔を出して二人を睨んだ。
「失礼ね、私達は睡眠を削ってずっと仕事をしてたわよねえ」
「そうね、サイン会の事後処理に手間どっていたものね。まさかあんなことが起きるなんて思いもしなかったけどね、最近は何も事件が起きなかったから油断していたわ」
「そうね、わたくしも迂闊でしたわ。今回の騒動を引き起こした犯人の依頼者は、アトラス人で碧華様のファンの一人でしたのよ、いつも自己中心的な行動ばかりなさる方でもめごとを起こしてばかりいた人だったみたいで、最近ファンクラブから除名処分を受けていたんですって。そうしたら、今回のパーティー企画を知って、参加できなくなったってあんな事件を引き起こしたみたいですわ」
カリーナの説明に碧華はため息をついた。
「なんだか複雑な心境ね。今回の事件がなければ、彩奈ちゃんの苦悩はまだ続いていたはずだもの。だけど、一歩間違っていたら多くの人が傷ついていたかもしれなかったんだものね。サイン会もそろそろおしまいにしないといけないのかしらね」
「そうね・・・年々厳しくなってくるわね。私達も歳をとってくるし」
「そうね・・・これからはのんびり余生を過ごしましょうよ。そうだ、今度旅行に行こうよ、お姉さまやビルさんや、栄治さんも誘って、もちろんシャリーやジャンニさんもみんなで世界一周の船旅なんかどう?私一度豪華客船に乗ってみたかったのよね」
「あら船は危険じゃない、時々海難事故があるじゃない」
「死ぬときはどんな方法でも死ぬわよ。仕事も楽しいけどたまには遊ばなきゃ」
「あら素敵ですわね、ねえ、ソフィア、今度ファンクラブ限定で豪華客船の旅を企画しましょうよ。碧ちゃんといく世界一周旅行なんて素敵じゃない。旅先で一作ずつ詩を作って帰りに一冊を完成しているのって素敵じゃない」
「いいわねえ・・・ぜひ計画いたしましょう。船の手配なら任せて」
カリーナとソフィアは楽しそうに計画を話しあっているので碧華とテマソンは同時に叫んだ。
「そんなことをしたら休暇にならないでしょ!」
「あらお二人ともお忘れになりましたの?」
カリーナの言葉に二人とも首を傾げた。
「生涯現役を貫くのではありませんでしたの?」
「カリーナ、人間は常に進化しているのよ、考え方も常に変化するのよ」
「あら、こんなにファンがたくさんいるのよ、碧ちゃんにはまだまだ頑張っていただかないと、そうそう、これ疲労回復効果抜群の栄養ドリンクですわ、飲んでおいてくださいな。健康に配慮した最新薬ですわ」
「ありがとう。でもこれいくらするの?」
「あら、まだ試作段階ですけれど、すごい効能ですもの、千マルドルぐらいかしら」
「はあ?そんなに高いの?」
「あら当然よ、それだけの効果はありますもの」
それを聞いた碧華は素直にその栄養ドリンクを受け取ると飲み干した。
「あらすごくおいしいわね、なんだか今日半日は持ちそうよ。でも明日は一日起きてこないわよ。人間睡眠とダラダラも必要不可欠なんだから」
「そうね、さすがの私もそれいただこうかしら。若いつもりでも歳には勝てないわね、年々体力の衰えを感じるわ」
テマソンは肩をまわしながら言った。
「そうですわね。わかる気がしますわ」
五人はその後会話もなくうとうと短い眠りに入った。




