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神見習い

私の名はシューラ、この世界でいう天界人である。


だけどまだ神として星を任されてはいない、いわば見習いの立場だ。


私が今神見習いとして修行しているのは聖球星という星だ。


この星には私の姉であるマティリアが神をしている星だ。神として見守るこの星の人間という生き物は実に面白い生き物だ。


長くて100年という短い一生をそれぞれ生きている。ここで神の修行をしろと言われている。修行に行って何をすればいいのか、皆目見当もつかない。だから時折、お姉様のお気に入りの国に降りていって人間観察をするのが日課になっていた。


しかし、この人間という生き物、とても厄介な生き物だ。


私がのぞいている彩奈あやなという20歳の子がいるのだが、この母親がまあ絵にかいたような毒親だった。


彼女は生まれは日本だが、誕生してすぐに父親の転勤でアメリカで6歳まで両親と生活していたが、小学校入学と同時に両親と共に父親の母である彼女の祖母と同居する為に祖母の住む日本に移り住んで10歳になるまで住んでいたが、彼女が9歳の年、両親が離婚し、母親が元々不倫相手だった相手の母国であるアトラスへ移住する際に父親が海外出張中に誘拐まがいに娘と父親に会いに行くからと祖母から彼女のパスポートをだまし受け、父に会いに行く旅行と称して彼女を連れ出し、そのままアトラスに連れてきてたのだ。


その後この母親は彩奈からパスポートを取り上げ、家政婦が代わりに幼い10歳の子どもを既に妊娠中だった第二子の面倒を見させるために、家に閉じ込め、もちろん学校にも行かせず、もう十年も虐待しながら毎日彩奈をこき使っていた。


(もう、彩奈、警察に行きなさいよ)


シューラは何度も彩奈に囁くのだが神見習いの言葉など少女には届かない。


今日も朝から毒親の母親である待代まちよが彩奈に向かって汚れた服を投げつけて叫んでいる。


「全く役に立たない子だね、何度言えばわかるんだよ。洗濯は私が起きる前に洗って干しておきなって言ってるだろ!ぐずなんだから」


そういって待代は朝から彩奈の腕や頭を殴るのである。そのくせ10歳になる現在の結婚相手のランとの間に生まれた娘のシャランは溺愛していた。


「まったく、この子はこんなに可愛いってのに、お前はますますあの憎たらしいあいつに似てくるね。このくず!」


(もうどうして言い返さないの!)


私が何度も足蹴にしてやろうとするのだが、神でもない見習いが人間に何かをするのは禁止されている為、何もできないのだ。だけど、彩奈は私の存在が見えているのか、時折私にほほ笑みかけてくると気がある。気のせいだろうけど


まるで天使のような笑顔だ。体はやせ細り、とても20歳の女性には見えなかった。


一日中こき使われている彩奈だったが、一つだけ楽しみにしている瞬間があった。


それは妹が大好きな作家さんの本を読んであげる瞬間だった。


その本はアトラスで発売されているのだが、英語版と日本語版の両方が発売されているのだ。というのもその作家さんは実は元日本人ということもあって、日本語で書かれていたりするのだが、妹は日本語はしゃべれるのだが、読むことができず、よく、英語版ではなく日本語版の詩集や物語を読み聞かせで聞くのが好きなのだ。


母親はめんどくさがり、妹に本を読んであげている間だけは何も言ってこないのだ。


家事が終わり寝るまでの一時間ぐらいは朗読の時間となっていて毎日日本語で読んであげている。


夜、物置部屋の物置の片隅に古くなった毛布にくるまりながら寝る瞬間にAOKA・SKY先生の詩集の一番最後に描かれていたマティリア様の絵に向かって祈りを捧げるのが日課になっていた。


「神様、いつか日本に帰れますように」


(彩奈、お姉様は今忙しいのよ、あなたの声は届いていないのよ、私に力があったら、今すぐに日本に戻してあげるのに、この世界は不公平だわ。あんな悪魔みたいな母親が好き勝手でているなんて許せない。お姉様は一人の人間に深入りしちゃいけないって言うけれど、お姉様だってお気に入りがいる癖に・・・手助けしちゃいけないっていうけれど、少しぐらいなら問題ないわよね)


シューラは眠りについた彩奈の頬にキスをした。

(せめて眠りの中だけはいい夢を見れますように)











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