動き出した運命
夜中の1時、日本とニューヨークそれぞれと連絡が取れたこともあり、碧華とテマソンは念の為スタッフを一人監視の為に雇い、いったん自宅に戻ることにした。
そして翌日、10時になるのを待ってディオレス・ルイのスタッフがアトラスにある日本大使館に行き、パスポートの新な申請と、不法滞在の経緯の説明に訪れ、医師の証言から長期間による虐待と監禁容疑で逮捕状が出されることとなった。
そして、以前から極秘に捜査していた義理の父親の麻薬密売容疑でも緊急家宅捜査がその日の昼に行われることとなり夕方には緊急逮捕されることになった。
妹のシャランは警察に一時保護されることになったと報告が来た。
その一方で翌日のお昼12時、早朝早くから碧華とテマソンは彩奈の病室に訪れていた。テマソンは次々と入る情報の整理に追われていた。
一方の碧華は朝になって様々な検査を終えた彩奈に話かけて気を紛らわそうとしていた。彩奈の方は憧れの碧華が目の前にいるという現実に朝になりより一層緊張していたがお昼が近づく頃には次第にうち解けて話しをするようになっていた。碧華は再び、祖母のパソコンにテレビ電話で会話をしたりして過ごした。
テレビ電話を切った後、碧華は彩奈に話かけた。
「彩奈ちゃんのお父さんすごいわね、アメリカでバリバリ働いているなんて、じゃあ、彩奈ちゃんは英語も完璧だったんだすごいわね」
彩奈は物心つく前から英語と日本語両方を話していたと聞いた碧華は感心したように言った。
「はい、六歳まで父と母と私の三人でアメリカに住んでいたんです。でも小学校入学と同時におばあちゃんのいる日本で生活するようになったんです。でも日本のおばあちゃんとの同居が母には苦痛だったみたいで、離婚したんです。それで私は父と三人で暮らしてました。でも10歳の時、突然母が学校の帰り路に待っていて、お父さんの出張先のアメリカに一緒に行こうって言われたんです。パスポートはまだキレていなかったのを母も知っていたんでしょうね。おばあちゃんとは話してあるからっていわれて、私のパスポートも既に持っていたから私嬉しくて、一緒に家に戻らないままついて行ってしまったんです。でも・・・」
そこまで話して言葉に詰まってしまった。
「でもついた場所はアトラスだったのね」
「はい・・・でもなれない料理や洗濯は大変だったけど、シャランがいたから」
「そうあなたにとってシャランは大切な妹なのね」
碧華の言葉に大きく頷いた。
「そう・・・じゃあシャランちゃんも助けてあげないといけないわね」
「あの・・・母は逮捕されるんですよね。あの人も・・・」
「ええ、たぶんそうなるでしょうね」
「じゃあ、シャランはどうなるんでしょうか?」
「まだわからないわ今は警察が保護してくれると思うけれど」
「私が引き取ります。あの人の祖父母には一度会ったことがありますけど、あんな人達にシャランをあずけたらシャランが可哀そうですから、私は半分だけどシャランと血のつながった姉ですから、一緒に日本に来ることはできないでしょうか?」
「そうね、すぐにとはいかないでしょうし、あなたのお父様と相談したらどうかしら、私達もできる限り協力してあげるわ」
「ありがとうございます。これは夢じゃないですよね。いつも覚めてしまう夢じゃないですよね」
「大丈夫よ夢じゃないわ。悪夢は終わるのよ」
碧華は涙を流している彩奈をそっと抱きしめた。




