眠りの中のささやき声①
「碧華あなたは大丈夫だったの?」
「ええ、尻餅をついただけよ。幸いすぐに警備員さんが駆けつけてくれたし、非常ベルの音が思ったより大きくて心臓が止まるかと思っちゃったわ。鳴り響いたのがこのフロアだけでよかったわ。たくさんの人達が下の階で眠っているんですものね」
碧華はもう一度彩奈の寝顔を確認して言った。
「そうね、でもあの人達がここまでくるとはね、うかつだったわ。警察の方でもすぐに動いてくれるそうよ」
「よかった」
「でも、非常ベルの音でも意識が戻らないなんて、よほど疲れているのね、気持ちよく寝ているじゃない」
「ええ、脳はには異常がないみたいだから多分もうすぐおきるんじゃないかって先生も言っていたみたいだし。よほど今まで大変だったのかも知れないわね」
「テマソンもお疲れ様、どう何かわかった?」
「ええ色々とね、あの後会場の後始末も無事完了したってライフから連絡が入ったわ。残りの200名に関しては、お詫びの品とあなたのサイン入り本を追加で配送することで了承してもらったらしいわ。明日にでもサインをしに会社に行ってちょうだい」
「そうわかった、でっ犯人はどう?」
「ああ、薬物中毒者みたいね、どうやら抽選に外れたあなたの熱狂的なファンにさわぎを起こすように依頼されたらしいわね。依頼者は不明らしいけれど」
「ええ~私が悪いの?」
「まったく、良くも悪くもサイン会があるたびに何か起こるわねえ」
「そうねえ・・・もう私も年だしそろそろサイン会は辞めにしようかしらね。こんなおばあちゃんに会っても仕方ないでしょうにね」
「あら、作者に会えるなんてすごい機会じゃない。だいたいあなたがやりたいって言ったんでしょ」
「だって、ブログみてたらサイン会してほしいって要望が多いんだもん。さすがに頻繁に海外に行くのはもうしんどいけどアトラスでなら大丈夫かなって思ったのよ」
「私も迂闊だったわ。70歳近いおばあちゃんのサイン会なんかあまり集まらないと思っていたら、すごい数の申込者があったんだものね。恐れ入りました。AOKA先生」
「フフ、SKY先生の挿絵が素敵だからよ」
「あら褒め言葉として頂いておくわ」
二人は顔を見あいながら微笑み合った。




