狭間の領域での戦闘
狭間の領域『ロスガルディア帝国』の前線基地。
「将軍! 魔の領域から軍勢が向かっているとの報告です」
「数は!?」
「おおよそ500との事です!」
「ふ、ふはははは! その程度か! 兵には数で押し込めと言っておけ。......魔族、恐れるに足らず! 5千の兵で踏み潰してくれるわ!」
かつては禁忌とされていた狭間の領域への侵攻も、時とともにその意識は薄れ、時の皇帝は狭間の領域を光の領域へと変えるべく侵攻の命令を下した。
各地で激しい戦いが繰り広げられる中、マイアの治める領地に隣接する狭間の領域にも帝国は兵を進めていた。
「しょっ! 将軍! 大変です!」
突然の轟音と衝撃が前線基地に響き、士官が将軍の居るテントに駆け込んできた。
「何事だ! もう敵が押し寄せてきたか!?」
「て、敵ですが、空からです!」
「数は!」
「それが、たったの3人ですが......、すでに兵の半数が倒されています」
「何だと!」
将軍は慌てて兜を被りテントから飛び出した。
目の前には漆黒の鎧に身を包み、右手と左手それぞれに巨大な剣を携えた者が背中の翼を羽ばたかせ宙に浮いている。
「悪魔め! 弓兵! 弓兵はどこだ!」
将軍は辺りを見回すが、前線基地はすでに炎と煙、そして自軍の兵の断末魔の叫びに埋め尽くされていた。
目の前に降りたった漆黒の鎧から少女の声が放たれる。
「良い鎧だな、背格好も丁度良い、みやげに貰っていこう」
「なっ! 女か!?」
その声に驚いた将軍がそう言ったが先か、彼の頭は鎧を傷付けぬよう丁寧に胴体から切り離された。
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「マイア様、粗方片づきました。逃亡する兵はいかがいたしますか?」
「放っておけ、オーク兵にこの人間の鎧を剥ぎ取って持ち帰るように言っておけ」
「わかりました」
「私は先に城に戻る」
マイアはそうミレーユに言うと、一足早く空へと飛び立っていった。
「......いつも、このぐらい頑張っていただけると嬉しいんですけど」
誰に言うわけでも無くミレーユは呟いた。
「なんだ、もうマイア様は戻ったのか」
「ええ、早く会いたいんでしょう。......また、絞め殺し掛けるかも知れませんから私も戻ります。その人間の着ている鎧をハヤトさんのお土産にするそうなんで丁寧に持ち帰るようにオーク兵に伝えて下さい」
「わかった、後始末の指示を出したら俺も戻るよ」
「お願いします」
ミレーユもそう言うと空へと舞い上がり城へと飛んでいった。
「よ~し、来たな。今回は姫様が張り切ったから戦闘は無しだ!」
ライオスはオークやゴブリンに指示を出しながら、城の方角に目を向ける。
(......あいつもハヤトを? ......まさかな)
「急いで帰るぞ、戻ったら宴会だ!」