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102. ひとりより、ふたり

 少し息を吐けば、消えたと思ったえぐみが戻ってくるような気がして、追加で水をもう一杯。

 ごくごくと喉を鳴らして飲み干せば、冷たい水の味がさっきよりも美味しく感じられた。

 そんな、苦みに翻弄される僕を癒すように、横からシルフがゆっくりと風を当ててくれる。


「ありがと……」

「アキ様……、大丈夫ですか……?」

「少し残ってる気がするけど、まぁ……」


 心配そうなシルフにそう答えつつ、インベントリからルコの抽出液を取り出す。

 薬草をそのまま入れて、置いておくだけじゃ効果がない……。

 それなら、薬草を刻んで?

 でも、なんとなく、刻んだところで薬草とルコの抽出液っていう2つに、変化が起きる気がしない。

 つまり、それ以外のなにか別の手段が必要な気が……。


「んー」

「アキ様?」

「んー……」

「アキ様……?」


 そういえば、おばちゃんはたしか……『僕のしたいことに使える』実って教えてくれたっけ?

 水に漬ければ実の成分が出る、までしか教えてはくれなかったはず……。

 ということは、もしかして……。

 ここからの使い方は、あえて教えてくれなかったってことなら……。


「この抽出液は……、何の代わり、なんだろう……?」

「え?」


 たしか、カナエさんは『沸かしたお湯に、塩と少量のサラダ油』って言っていた気がする。

 けど、沸かしたお湯に薬草を入れたら、ポーションになって……いや、なるのかな……?

 いつもは、刻んだ状態でいれるけど……、刻んでなかったら……?


「ということは、やっぱり抽出液に入れて火にかける……?」

「……」

「でも、それもなんだか違う気が」

「……ッ、アキ様!」

「うひゃ!?」


 意識の外から大きな音が聞こえて、思わず変な声がでる。

 慌てて口を押さえつつ、音のした方を見れば……、そこには、頬を膨らませたシルフがいた。


「し、シルフさん?」

「もう! 1人で考えないでください!」

「え、え?」

「私にも相談してください。一緒にいるんですから」

「うん……ごめん……」


 謝る僕に、シルフは少し笑う

 そして、椅子を少し近づけて、僕の手を取った。


「それで、なにを悩んでいたのですか?」

「えっとね……。ルコの実から抽出したこれなんだけど……、これってなんのために使うのかなって」

「何のため、ですか? たしか薬草の苦みを消すため、でしたよね?」

「うん、そうなんだけど……。おばちゃんは『これで消える』とは言ってなかったんだよね。これが『使える』とは言ってたけど」

「使える、ですか……」


 むむむ、と悩んでいるような音が聞こえるくらい、シルフは真剣に悩んでくれる。

 そんな彼女を見ていると、自然と頬が緩み、さっきまでより多少頭がすっきりしてくる気がした。


「で、もしかするとこの抽出液って、まだ材料としては途中の状態なのかも、って思ってね。それで、カナエさんの言葉を思い出してみたら……。確か、『沸かしたお湯に、塩と少量のサラダ油』って言ってたんだよね」

「サラダ油はよくわからないですが……、油ということはわかりますけど……」

「まぁ、それはあっちの世界の言葉だから気にしないで」


 そう言って、少し苦笑が漏れる。

 こっちの世界って塩はあるのにサラダ油は無いんだね……。


「それで、アキ様はどうお考えになったのです?」

「んー、最初はお湯の代わりかなって思って。沸かした抽出液の中に、刻まない薬草を入れて火にかけるとか」

「それは私も思いましたけど……。そうじゃない気がするんですか?」

「うん。……根拠はないんだけど」


 ただ漠然と、そうじゃない気がするだけ。

 だから僕としても困っているわけで……。

 けれどシルフは、そんな姿を見せる僕の手を握ったまま大きく頷き、口を開いた。


「それでは、アキ様。アキ様が思いつくこと、全部やってみましょう」

「え?」

「その抽出液がまだ途中だとして……。例えばカナエ様の言われたお話の、『お湯』ではなくて……、『塩』や『油』に相当するものであるとしたら、この抽出液でそれを作れますか?」

「これから、『塩』や『油』……」


 塩は……、そういえば海水って、水分を飛ばせば塩が出来るんだっけ?

 油は、豆とかからも取れるみたいだけど、詳しくはわからないなぁ……。

 となると、まずは……。

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