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95. 露店街

 おばちゃんが教えてくれたのは、種のような黒っぽい小さな実。

 ルコという名前の花が付ける実で、僕がやりたいことに使える実らしい。

 なんでも、潰してから水に浸すと、水の中に成分が出るみたい。


「普段から露店には並んでるって、おばちゃんは言ってたけど……」


 どうも、こっちの世界の人はよく使うみたいで、大体のお家には常備してるほどらしい。

 もちろんおばちゃんの雑貨屋にも置いてはいたんだけど、在庫が心許なくて……。


「んー、でも見当たらないなぁ……」

「おや、アキさん。おはようございます」

「ぁ、オリオンさん。おはようございます!」


 流すように露店を見ていると、僕の進行方向からオリオンさんが歩いてくる。

 その姿は、黒いスーツに白いシャツ、荒めにオールバックにされた鈍い銀髪と、お店で見た時とまったく変わっていない。

 ……もしかすると、基本的に服はその服しかないのかもしれない……?


「アキさんも何かお探しですか?」

「あ、はい。ルコの花の実なんですが……」

「あぁ、なるほど……。そちらでしたら、いくつか置いているお店がありましたので大丈夫かと」

「そうなんですね! ありがとうございます!」

「いえいえ。お礼を言われるほどのことはしてませんよ」

「そうですが……」

「っとと……。人が多いので、申し訳ございませんがお先に失礼しますね」

「はい。またお店に行かせてもらいますね!」

「えぇ、お待ちしております。それでは」


 軽く会釈を交わしながら、すれ違うように歩き出す。

 ふと後ろを振り向けば、行き交う人の中にオリオンさんは紛れてしまっていて、すでに見えなくなっていた。

 あの服装と髪型なら、結構目立ちそうな気がしたんだけど……。

 まぁ、いいか、と気持ちを切り替えて、再度立ち並ぶ露店へと目を運ぶ。

 けれど、やっぱりというべきか、ルコの実はまったく見つからない……。

 知らないモノはいっぱいあるんだけど……、目的のモノが見つからない……。


「んー……。オリオンさんはあるって言ってたし、もっと先にあるのかなぁ……」


 先にあるなら、シルフが見つけてくれるだろうし……。

 僕は僕で、しっかり見ておかないと……。


「あれ、お嬢ちゃん。今日も買い物?」


 聞き覚えのある声に頭を上げて、お店の向こうを見れば、見覚えのある顔。

 というか、アルペを売ってくれたお店のお姉さんがそこにいた。


「えっと、その……。探し物というか……」

「そうなの? なにを探してるの?」

「ルコの花の実なんですけど……」

「あー、それならうちじゃ扱ってないけど、出してるお店いっぱいあるから大丈夫だよ」

「さっき、知り合いの人にも、同じこと言われました」


 扱ってないのは見てたからわかるんだけど、オリオンさんとほとんど同じことを言ってて、少し笑ってしまう。


「そっかー……。そういえば、この間買ってくれたやつ、どうだった?」

「美味しかったです! 搾って果汁を飲み物みたいにしましたけど、甘くて美味しかったです」

「そっかそっか。また入り用な時は、是非ごひいきに……ね?」

「はい! その時はよろしくおねがいします!」


 笑いながら話すお姉さんに頭を下げて、露店から離れる。

 すると、さすがと言うべきか、少し離れてからお姉さんの方を見れば、忙しそうに次のお客さんの相手をしていた。

 ただ、お姉さんと話をした人がみんな笑顔になっていくのは、なんだか魔法みたい……。


(アキ様、見つけました!)


 お姉さんを見ながらそんなことを考えていると、突然、脳内に声が響く。

 驚いて思わず出てしまいそうになる声を抑えつつ、シルフに返事を返した。


(露店の列の、真ん中より先ですね。今も他のところを確認してますが、数か所あるみたいです)

(値段はどこも変わらない?)

(大きくは変わらないのですが、少しずつの差はありそうです。品質とかはわからないのですが……)

(なるほど……)


 多分どこで買っても、違いはあんまりないと思うけど……。

 でも、変に悪いのとか混ざってるのも嫌だしなぁ……。


(値段が平均的なところで買おっか。どこかわかる?)

(あ、はい! もう少しで全て見終わりますので、分かるかと)

(ん、ありがとう。僕もそっちの方に向かうから、終わったら合流しよっか)

(わかりました!)


 すれ違う人にぶつからないように気を付けつつ、少しだけ歩幅を大きくして、先へ急ぐ。

 シルフと合流したのは、それから数分後のことだった。


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