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70. 経験の差

「んで、どうするよ。街に戻るにしても、ギリギリやで?」

「しかし、今から蜘蛛のエリアを抜けるとなると……それも厳しいだろう」

「せやなぁ……」


 蛇と戦い終わり、木の穴へと戻ってきた僕を待っていたのは、すでに戦い終わっていた2人。

 聞いたところ猪と蛇数匹が相手だったらしく、アルさんが猪を、トーマ君が蛇を倒したらしい。

 それも、5分足らずで倒したみたいで、早々に戻ってきたってさ。

 やっぱり僕と2人とじゃ、強さが段違いだなぁ。

 っと、それよりも今は――


「トーマ君。夜の森って昼に比べるとどうなるの?」

「せやな……夜は昼に比べて蛇が出やすくなるで」

「蛇……」

「ま、蛇は突っこんでくる勢いを利用して、口元から切り裂いてやりゃ楽よ」

「そ、そうなんだ……。先に知っておきたかったよ……」


 実際、蛇が硬かったのは鱗だけだったし、鱗さえ避ければ攻撃は通ったんだよね。

 そう考えてみれば……トーマ君の倒し方が一番理に適ってるのかもしれない。


 なんにしても、森から帰ったら、武器の使い方をまた練習しよう……。

 今のままじゃ、まだまだ足りないことだらけだ。


「それで、どうする。門への時間も厳しいならば、再度蜘蛛のエリアに行ってみるか?」

「せやなぁ……。あんまし時間掛けすぎてもアカンやろうし、一気に抜けるしかないな」

「で、でもさっきみたいな事があったら……」

「なら俺が先行するわ。んで、確認次第連絡ってのはどないや」

「そうだな。トーマには負担を掛けるが……その方法が一番か」


 トーマ君の案にアルさんも頷いて、向かう方向や、連絡のタイミングなんかを話し合っていく。

 そんな中、僕は傍で浮くシルフと目を合わせ……無言で頷きあった。

 ……そうだね。


「トーマ君。シルフを連れていって」

「あん? なんでや」

「シルフなら僕と即座に念話が出来るし、戦えないにしてもサポートは可能だから」

「トーマ様。私からもお願いします」


 深く頭を下げたシルフに、トーマ君は一瞬驚きつつも、気を取り直し少し意地悪げに笑う。

 そして「ついてこれたら来てみ!」なんて言葉を口にして、穴の外へと駆け出していった。

 そんな彼の後をシルフが慌てつつも追いかけていき……一瞬で僕の視界から2人の姿が消えた。


「相変わらず、だな」

「そうですね……」


 シルフには透明化があるからわかるけど……トーマ君は生身の人間なんだよね?

 精霊と同じレベルで視界から消えるって、あながちさっきの言葉も本気だったのかも知れない。


「さて、遅くなる前に俺たちも出よう。奥に向かいながら、情報次第で向かう場所を変えていくぞ」

「はい!」


 HPが最大まで回復してることを確認しつつ、いざという時のためにウエストポーチのポーションを補充しておいた。

 ひとまず、蜘蛛のエリアを抜ければ湖に辿りつける。

 そのために必要なことなら、僕もやっておかないとね。


 「行くぞ」と短く言葉を切ったアルさんが、穴から外へ出て森の中へと入っていく。

 その後ろを追う僕が歩きやすいように、飛び出した枝を払ったり、木の根なんかは大袈裟に避けて見せてくれる。

 こういった技術も……経験から来るものなんだろうな。

 僕も頑張らないと!



(アキ様。先ほどの道はやはり通れないようです。今、トーマ様が別の道を探されていますので、合流は少しお待ち頂ければ)

(うん、わかった。アルさんにも伝えておくね)


 進んでいく僕の頭の中に、突如シルフの声が響き、今の状況を伝えてくれた。

 さっきの道が通れない、か……ある意味予想通りの状態ってことかな。


「っと、アルさん。シルフから連絡ありましたよ」

「ほう?」

「やっぱりさっきの道は使えないみたいです。だから、トーマ君が別ルートを探してるって」

「なるほど。予想はしていたが……その通りだったか。なら合流は少し遅らせよう」

「了解です」


 そう言ってアルさんは、木に背を当て、息を吐く。

 歩いていると言っても、雨の中……それに、視界が悪い夜の時間だ。

 僕以上に警戒して歩いてるだろうし、疲れるのも仕方ないか。


「む、少しすまない」


 手を額に当て、アルさんが頷くように何度か首を振る。

 もしかするとトーマ君から定期連絡の念話が来たのかもしれない。

 なら今は下手に話しかけない方が良いだろうと、警戒するように周囲を見まわした僕の目が、ある植物を見つける。


「あれって、確か……」


 その植物の前に移動して、膝を折りつつ手を伸ばす。

 細い蔓を伸ばしつつ、所々にある葉は、端がギザギザとしたノコギリのような形をしていて……。


「そうか……雨だから開くのか」


 お皿のように開かれた葉……それはジェルビンさんが教えてくれた、解毒薬のための素材。

 つまり、カンネリの葉がそこにあった。

2019/04/22 改稿

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