表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/350

7. もう一度

2017年12月13日 7話として割込投稿。

『ではそのままゲームを続けられる、ということでよろしいでしょうか?』


 ウィンドウの向こうから、アインスさんの声が聞こえた。


「はい、それで大丈夫です」


 その声に頷きながら、僕はしっかりと言葉を返す。

 昨日は眠ってしまっていたけれど……、起きてから考えたら、僕の答えは酷くシンプルだった。

 シルフにまた会いたい。

 シルフと友達になって、あの世界を一緒に生きたい。

 ただ、それだけしか出てこなかった。


『かしこまりました。……アキ様、ありがとうございます』

「え?」

『あの子を……シルフを大事に考えてくださり、本当にありがとうございます』

「そんな! 友達ですから、当然ですよ」

『ふふ、そう言っていただけると、私共も嬉しい限りです。アキ様、もし続ける上で、現実の方でも何か不具合が起きた場合は、私……アインスか、GMのツェンにすぐにお知らせ下さい。できる限りのサポートをさせていただきます』

「え? サポートは受けれないんじゃ……?」

『えぇ、弊社のサポートは受けれません。ですからこれは……、私たちの個人的なサポートのお約束です』

「アインスさん……。ありがとうございます!」


 まさかの言葉に、胸がぐっと熱くなる。

 だから、見えないとわかっていても、深く頭を下げた。


『では、アキ様のこれからの<Life() Game()>がより良いものになるよう、祈っております。ご連絡、ありがとうございました、行ってらっしゃい』

「はい、行ってきます!」


 明るい声で送り出してくれたアインスさんに返しつつ、少し笑う。

 数秒たって消えたウィンドウに、小さくお礼を返して、僕は<Life Game>へとログインした。




 ログインしてすぐに、僕はとある場所に向かって走りだす。

 いるかどうかはわからない。

 けど、彼女なら……、シルフなら、あそこにいるんじゃないかって、そんな気がしたんだ。


「けど……、いきなり……全力で走るのは……、間違えた……かな……っ」


 壁に手をついて、ぜぇはぁと息を吐く。

 そのたびに顔の横に流れてくる薄紅の髪を後ろに流し、息を整えてまた少し歩く。

 正直、さっきまでの僕は、今の見た目でやっちゃいけない顔と動きだった気がするけど……。

 まぁ、そこは過ぎたことだし、気にしないようにしよう、うん。

 そんな風に考えながら歩いていれば、ようやく目的の場所に出れた。

 頭上から光の差し込む、少し開けた路地の広場だ。


「……シルフ! いたら返事して!」


 大きく息を吸って叫ぶように彼女を呼ぶ。

 周りを建物に囲まれた路地だからだろうか、僕の声が反響して……、思ったよりも可愛らしい声に少し恥ずかしさが増してくる。

 いや、今は忘れよう、うん。


「またシルフと……、ちゃんとした友達になりたいんだ……。だから……」


 俯いたまま呟いた僕の髪が、ふわりと、顔の横から後ろへと動かされるように流れていく。

 それと同時に、右手を中心に温かい風が舞ったように感じた。


「……シル、フ……?」


 見えないけれど、確かに彼女の気配を感じる。

 感じ取りにくいのは、きっと……スキルを2つ、習得しているからだろう。

 滲みそうになる視界を拭い取り、しっかりと彼女の気配を視る。


「聞こえるなら聞いてほしい。シルフ、僕は――僕は君と、また友達になりたいんだ」


 そう虚空へと宣言しながら、僕は右手を前に差し出す。


「だからお願い。僕と……、契約してほしい」


 僕がその言葉を口にした瞬間、身体が吹き飛ぶほどの激しい風が吹き荒れ、僕は思わず目を閉じる。

 そして、その風が止むと同時に、僕の身体に軽い衝撃が走った。


 おそるおそる目を開けば、目の前に緑色の髪。

 薄緑色した半透明の女の子が、僕の右手を胸に抱いていた。


「……アキ様」

「ん、なに?」

「今度は、お試し……じゃないですよね?」

「お試しって……。大丈夫、ちゃんと明日も明後日も、一緒だよ」

「そう、ですか……」


 シルフの言葉に、少し苦笑いをしながら言葉を返す。

 その言葉が嬉しかったのか、自分の言葉が恥ずかしかったのか……、シルフが少し赤くした顔を隠すように俯いてしまう。

 そんなシルフに少し笑いながら、僕は息を吸って、口を開いた。


「だから、シルフ。ちゃんとした契約をしよう。……今度はお試しじゃないやつを」

「……もう! アキ様は意地悪です!」

「ごめんごめん」


 恥ずかしくて、つい一言付け足してしまったけれど、ちゃんと伝わったみたいだ。

 その証拠に、怒ったみたいに喋りながらもシルフの顔は笑っていた。


「……それでは、アキ様。少し、失礼します」

「うん」


 そう言って、胸に抱いたままだった僕の右手に、シルフはゆっくりと口を近づけて……。

 軽く触れる程度のキスをした。


挿絵(By みてみん)


--------------------------------------


名前:アキ

性別:女

称号:ユニーク<風の加護> ←NEW!!


武器:なし

防具:ホワイトリボン

   冒険者の服

   冒険者のパンツ

   冒険者の靴


スキル:<採取Lv.1><調薬Lv.1>


精霊:シルフ ←NEW!!

2018/09/23 挿絵追加

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読みいただき、ありがとうございます!
スタプリ!―舞台の上のスタァライトプリンセス
新作連載中です!
気に入ってくれた方はブックマーク評価感想をいただけると嬉しいです
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ