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347. 行き当たりばったりのやる気

「お、また発見」


 言うが早いかタタッと寄ってツルハシを叩き込む。

 ガキンゴキンと続けてやれば、目的のブツはポロリと壁から剥がれ落ちた。

 うん、二桁近く取ってれば取り方も手慣れてくるよね。


「あと少し取っておきたいところだけど……結構来たよね?」

「はい。さすがに、これ以上はやめておいた方が良いかと思います」

「まあ、だよね」


 言いながら落ちた[水硬石]をインベントリにしまう。

 [水硬石]は全部で9個。

 一つ一つが結構離れた位置にあったこともあって、この古水路に来てから、すでに3時間近く経過していたり。

 ……完全に長居しすぎた。


「と言っても、街の中にあるから遅くなっても街に入れないって訳じゃないし」

「視界も、元々あまり光も入ってない場所でしたからね……変化は無さそうです」

「まあ、問題があるとすれば」


 話の途中で、フッとランタンから火が消える。


「って感じだよね」

「ですね……」

「まあ、こんなこともあろうかと、予備は準備しといたんだけど」


 すぐさまインベントリから予備のランタンを取り出して、火を付ける。

 ちなみに持ってきているランタンは、作業場のコンロや携帯コンロなんかにも使われている、魔力を込めることで火が付く仕掛けのランタンで、暗闇の中でも手に持つだけで灯りが取れるスグレモノだよっ!

 って、クリエイター総合ギルド内の雑貨屋でレニーさんが売りつけてきただけあって、かなり使いやすい。


 軽いし、明るいし、傾けても問題が無いし。

 その上、使用する魔力がかなり少なく済むから、普段ほとんど魔力を使わない戦闘職の人達から大絶賛されてるとか。

 僕としては、その辺があんまりピンとこないんだけどね。


「あと1個でキリが良いんだけど……さすがにこれ以上の無茶は止めといた方がいいかな」

「そうですね。途中で灯りが切れる可能性もありますので」

「まあ、採掘しなきゃそこまで時間は掛からないと思うけどね」


 言ってチラッと先へと視線を向けるものの、見えるのは暗がりばかり。

 まだまだ続く地下古水道に興味をそそられつつも……心配そうに見てくるシルフの視線は無視できない、よね?


「……アキ様」

「大丈夫、戻るから。……そんな顔しないで」

「じー……」

「あははは……」


 "本当に~?"と言わんばかりのジト目で見てくるシルフに、僕はとりあえず笑ってごまかし、帰途へと足を進める。

 そんな僕を見て分かってくれたのか、シルフも僕の横に並び、歩き出したのだった。


 なお、歩き出す直前に、小さく溜息を吐いたのは気付かなかったことにしておこう。


◇◇◇


 戻る道では特に採掘をしなかったこともあって、行きよりも大分早く出口へと僕らは戻っていた。

 古水道に入った時はまだ外が明るい時間だったけど、出てきた今となってはもう、空は真っ暗になっていた。

 ……うん、完全に長居しすぎた。


「でも結構な時間入ってたわりには、そんなに収穫が無いんだよね」

「掘り出すのが、なかなか大変そうでしたから……」

「だね。もうちょっとツルハシを使えるようになっておけば良かったかも」


 実際思い返してみれば、ツルハシを使った事なんて片手で数えられるくらいしかない。

 イベント中にカエルの舌を固定するために使ったのと……あとはー……特に使ってないかもしれない。


「うん。もうちょっと使おうかな……」

「ですね」

「でも、いざ使おうって思っても使えるところが、こういうことくらいしかないんだよねぇ」

「そう、ですね……」


 掘り出すのに時間がかかるからツルハシを練習しようと思ってるのに、その練習が掘り出すことっていう。

 ものすごく本末転倒な感じだ。


「まあ、戦闘で使う場合って、相手が硬いとか特殊な相手とかって感じだろうし、急がなくてもいいとは思うけど」

「アキ様……」

「べ、べつに面倒くさいとか思ってないよ!? ほら、それよりも別の道具を使えるようにした方がとか、ほら……」

「……」


 何も言わない彼女だけど、その間から"そんなことを言ってるから使えないんですよ"と、言っているような気がした。

 いや、僕だってやろうとは思ってるんだよ?

 ……本当だよ?

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