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339. 高い壁が立ち塞がった!

 ちょっと待ってろと言われ、待つこと十と数分。

 男性が消えていった奥の部屋の方からずっと聞こえていた物音が少し止んで、ガサガサと鳴る音と一緒に、男性が姿を表した。

 手に持ってるのが、探してた紙かな?


「待たせたな。この辺がちょうど良い紙だと思うぞ」


 そう言って手渡してきた紙は、薄く茶色みがかかっている紙と、少し固いけど白色に近い紙。

 ……どうみても、白っぽい紙って……高そうなんだけど。


「えー、えっと……この白い紙は高そうなんですが」

「まあ、そうだな。茶色(こっち)の紙に比べると、倍以上かかるぞ」

「高っ!?」


 それって、近況報告のために使うってものじゃないよね!?

 例えば、偉い人とかが機密文書とかを送ったりするのに使ったりとか……って、まさか。


『アキ様、たぶんアキ様の予想通りの勘違いをされてるかと……』

「……だよねぇ」


 シルフの言葉に軽くため息をついて、僕は「えーっと」と男性にちゃんと説明をいれる。

 以前お世話になった人に、近況報告の連絡をするだけということや、シルフ(知り合い)にお願いして手紙を運んでもらうなど。

 ――順序だてて説明をしていくと、男性の表情はどんどん険しいものになっていき……終いには大きくため息をつく始末。

 ……なにか変なことでも言ったんだろうか?


「言いたいことは分かった。やりたいことも分かったが……正直、そんな用途のために紙を使うって奴は、ほとんどいないぞ」

「そうなんですか?」

「ああ。紙が高いってのもあるし、文書を書いたり読んだりできないってやつも多いからな。商売をやってたり、自分で本を買ったりして勉強してるやつなら、ある程度はできたりするが……それでも、長い文章ってなると読みきれないってやつが大半だ」

「なるほど……」


 つまり、モノを見て、これがいくらか、ということはできるけど、そのモノを文字で書いたり読んだり出来る人は少ないってこと?

 ジャッカルさんはおばちゃんからの紹介札を読めてたけど……一応商売をやってるから、なのかな?

 いや、一応っていうか、ちゃんと仕事してる人だけど。


「はあ、普段はどうやって別の街の人に連絡をいれてるんですか?」

「そりゃお前、行商人に言付けするんだよ」

「木札とかは使わないんですか? この間、この街の大工さんに紹介してもらう際、木札を預かったんですけど」

「そういうこともあるが……あんまり無いな。お互いに文字が読めるって分かってる時だけ、そういうことをするって感じだ」


 そういえば、ジャッカルさんはおばちゃんの字を知ってるみたいなことを言ってた気がするし、何度か文字でのやりとりをしたことがあるのかも。


 などと、僕が納得したように頷いていると、男性は「それはそうと」と、僕にずいっと顔を近づけて「お前は文字が書けるのか?」と訊いてきた。


「文字ですか? 書けると思いますけど……」

「それなら良いんだが。お前みたいな外からの住人は、書けないくせになぜか読めるってやつらばっかりでな……この間も、新しくできた店の看板作りを手伝わされたんだよ」

「……あっ、そういうことか」


 これは完全に盲点だった。

 僕が書けるのは“僕らが現実世界で読み書きしてる文字”であって、"このゲームの中で使われている文字"が使えてるわけじゃない。

 それでも文字が読めるのは、システムで翻訳してくれているものを僕らが見ているから読めるのであって、"書かれている文字そのものを読んでいるわけじゃない"んだ。


 つまり、僕が手紙を書いたとしても、おばちゃんには"知らない国の文字らしきもの"としてしか見えない。

 ……それって、出す意味が。


「……どうやら、お前もあいつらと同じタイプって感じだな」

「そうですね。多分そうだと思います」

「一応、代筆も受けつけるが、どうする?」


 にやりと笑いながら出された提案。

 でも、どう見てもそれって"頼まれないもの"って思って提案してるんだろう。

 だから、“一応”訊いたって感じで。


「いえ、大丈夫です。ちょっと違う方法を考えてみます」

「了解。まあ、それが良いだろうな。んじゃ、これ以上用がないなら、さっさと出て行ってくれ」


 言うが早いか、男性は僕に向けてしっしっと追い払うように手を振る。

 面倒なのは分かるけど、その態度はどうかと思う。

 ……言わないけどさ。


電子書籍“どこでもヤングチャンピオン”にて、当作品のコミカライズ連載中です。

アキもシルフもとても可愛らしく描いていただいてますので、是非読んでみてください!

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