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336. 内緒話はもう少し離れたところで

「到着っす。ココが俺の師匠がやってる鍛冶場、"ヘイゼル"っすよ」

「……なんていうか、結構騒がしいところなんだね」


 あのあと、「もし良かったら、アキさんもついてこないっすか?」とスミスさんに誘われた僕は、特に予定もなかったので、その誘いに乗ることにした。

 そうして歩くこと10分ほどで、あれだけ静かだった周りの景色はどこへやら……。

 僕の目の前には、沢山の人が行き交い、怒号混じりの声が響く、ちょっと男臭い光景が広がっていた。

 ……てか、周囲100%男性しかいないのって結構凄いね。


「ヘイゼルっていうのは、スミスさんの師匠さんの名前がヘイゼルさんってこと?」

「そうっすね。この辺は他の職人も集まってるっすけど、大体が自分の名前を屋号にしてるっす」


 なるほど……。

 というか、おばちゃんのお店の名前も"アルジェ"だったし、この世界の人達は自分の名前をお店の名前にするのが当たり前なのかも。

 実際その方が僕らのような一見さんにも分かりやすいし、誰かに紹介を受けた場合も困らないかな?

 あと、周りに男性が多いのは、この辺りは鍛冶や大型木工のような力仕事系のお店が集まってるからなんだろう。

 数件離れた場所からも金属を叩くような甲高い音がしてるし、道行く人の中には、大きな木の柱を担いで歩いて行く人も見える。

 どうやら、見た目以上にしっかりと区画分けされてるみたいな感じだ。


「おお、スミス。来たのか」


 ……等々、屋号や周りの景色なんかに思いを馳せていたら、僕らの後ろから男性の声が届く。

 結構低い声だなぁと思いつつ振り蹴れば、声のイメージにぴったりな、ずんぐりむっくりとした男性が立っていた。

 うん、すごく鍛冶が上手そう。


「師匠! おはようございます!」

「おお、おはよう。今日も調子は良いみたいだな」

「当たり前っす。万全の状態じゃないと、良い物は作れないっすから」

「その通りだな。……それでスミス、こっちの方は……?」


 スミスさんと師匠のヘイゼルさん? が、挨拶をしていたかとおもいきや、いきなり僕に背を向けてスミスさんと小声で話始めた。

 こそこそ内緒話って感じなんだろうけど、すぐ近くでやられてるから僕にも筒抜け……。

 まあ、うん、別に良いけど。


「ほら、アキさんっすよ。俺とか木山さんが前から言ってる薬師の」

「お、おお。あの人がそうなのか。予想より若くないか?」

「師匠の予想とか知らないっすよ。まあ、たぶん俺と同い年くらいだと思うっす」

「お、俺が話しかけて大丈夫か? 犯罪とか言われないか?」

「言われないっすよ。何の心配っすか」

「ほら、俺ってこんなんだし、年齢的にももうおじさんだろ……?」

「ほんと何の心配してるんすか……」


 ……待ってても終わりそうにないので、僕は僕で店内を見させてもらっておこうかな。


 ヘイゼルさんのお店は綺麗に整頓されていて、ある意味オシャレな感じにも見える。

 奥にあるカウンターのさらに奥にドアがあって、そのドアの向こうに鍛冶場は併設してあるんだろうけど、防音とかも意識してるのか……店内にいると全然音が響いてこない。

 鍛冶場の音が響いて、活気があるガラッドさんのお店とは真逆な感じで、ちょっと面白いかも。

 どっちが好きって言われたら困るけど。


(でもアキ様。壁に掛かっている剣、どれも素晴らしいですね……)

「だね。ガラッドさんみたいな無骨なデザインとは違って、装飾なんかも施されてるみたいだけど、刃の反射光がもう“これは切れる”って感じ」

(はい。ですが不思議と……怖さは感じられませんね。むしろどこか優しく感じる気がします)


 不思議なことだけど、僕もそれには同感だ。

 普通、よく切れる剣なんて見たら、どこか怖さとか恐れみたいなものを感じるのが普通で、ガラッドさんが鍛えた武器は、どれもそう言った面を持っていた。

 しかしヘイゼルさんのお店にかかっている武器は、どれもどこか優しい。

 なにがどうして、そんなことを思うのかは全く分からないんだけど。


「……なんにせよ、NPC(住民)の職人って、みんな腕が良いってことだよね」


 以前、兵士のおじさんが言ってたけど、“プレイヤーはスキルの取得や練度上昇が、NPCよりも早い”らしい。

 けど、こうやって完成品を見ると……僕らとは圧倒的なほどの差があるように感じる。

 知識や経験……特に失敗や思い悩んだ時間が多い分、その積み重ねがこうして実力として表れてて……。


「だから、みんなこうして弟子入りとかするようになったんだろうなぁ……。うん、やっぱり僕らは関係ないよ」

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