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330. そんなギルドがあっても良い

 ギルド設立の理由と一口に言っても、各ギルドによって様々なものがある。

 トーマ君たちのように、情報をより多く集め、そのやり取りを行うためだとか、同好の士が集まったギルドだってあるだろう。

 そんななか、僕らがギルドを組もうと……メンバーを集めようとした理由はなんだった?


「……精霊?」

「ん」


 記憶を遡り、ラミナさんに現実での僕のことをバラした日のことを思い出す。

 彼女の家に行き、お義父さん(仮)と話をしたあの日のことを。

 そうやって考えるうちに、僕はギルドを組もうとした理由を一つ思い出したのだった。


「なんや、よう聞こえんかったが、見つかったみたいやな」

「ああ、これなら大丈夫だろう。……さて、随分と長居してしまったな。リア、俺らはそろそろ行こうか」

「ええ、そうね。後はアキちゃん達に任せておいて大丈夫そみたいだし」

「んじゃ、俺らも行くか」


 かすかに耳に届いてきていた声も、僕が反応するより先に、扉の音と共に消えていった。

 だから僕は、すぐさまフレンドリストを開き、アルさんとトーマ君にお礼を伝えたのだった。


「さて、それじゃギルドの名前の候補くらいは……決めておこうか」

「ん、手伝う」

「ありがとう。といっても何となくのイメージは浮かんできたんだけどね」

「……?」


 首を傾げたラミナさんに苦笑しつつ、シルフに半実体化してもらうようにお願いする。

 他のお客さんや店員さんに見えないよう、小さい状態で、だけども。


「どうかされましたか? アキ様」

「うん、ギルドの名前なんだけどね。シルフとあともう一人、ドライアドを名前にいれたいなって思ってて」

「私をですか!? えっと……良いのですか?」

「僕は良いと思ってるけど、ラミナさんはどうかな?」


 僕らの話を聞いていたラミナさんは、僕の問いかけに「ん、問題ない」と小さく頷いてくれる。

 その言葉に、心の中でホッと胸をなで下ろしつつ、僕は「それじゃその方向で……」と口を開いた。


「シルフは風の精霊で、ドライアドは樹の精霊で良いのかな?」

「はい。正確には、ドライアドは世界樹の精霊になりますが……」

「ふむふむ……」


 となるとそんな感じの言葉で、ギルドっぽく纏める……纏める……?


 考えながら唸っていた僕の耳に、「待たせたのう」という声が扉を開く音と共に飛び込んできた。

 ああ、もうそんな時間?


「はぁい、アキちゃん。さっきぶりねぇ」

「あ、はい。二人とも来てくれてありがとうございます」

「はっ。面倒じゃったが、ギルドのことを話すのなら仕方あるまい」

「そうねぇ。あとはハスタちゃんだけかしらぁ」


 なんて、フェンさんが席につきながら口にすれば、タイミング良く扉が開かれ、「おっまたせー!」と元気な声が飛び込んできた。

 これで全員揃ったかな。


「それじゃ、ギルドのことについて話していこうか。まず一番は名前なんだけど……誰か思いついてたりする?」

「考えてすら無いのう。そういったことは、儂の役目ではないしの」

「ミーも考えてないわねぇ。今日一日、いろいろやってたから、落ち着けなかったの」

「はい! アキちゃん親衛隊!」

「却下。姉さん、真面目にやって」


 唯一出た案は即座に却下されてしまった。

 まあ、うん……さすがに僕もその名前は嫌かな。


「一応僕とラミナさんで考えてたのは、シルフとドライアドを名前に使えたらなって思ってて、みんなは何か思いついたりしない?」

「シルフとドライアドねぇ……」

「ドライアドのイメージって、トレントしかないよ! 堅いからあんまり好きじゃないなー」

「はっ。あの程度、たたき割ればよかろう」


 なんとなく予想がついてはいたけど、やっぱりこの二人からすると、そんなイメージしかないかー……。

 そうなると頼みの綱は、ラミナさんとフェンさんなんだけど……。


「そうねぇ……樹は古来から神聖なものとして扱われてきたことが多いわぁ。神様であったり、神様の通り道や、世界そのものという見方もされたことがあるの。大地に根を生やし、巨大な幹を持ち、枝には恵みをもたらす。多数の生物の基盤となっている存在なのよねぇ」

「なるほど……」

「反面、風は善悪両方の扱いをされるわねぇ。人間にはどうすることもできない自然災害の代表として扱われることも多いわぁ。止むこと無く絶えず吹き続ける風は、ある意味樹と真逆の存在なのかもしれないわねぇ」


 その言葉に、僕はそっとシルフの方へと顔を向ける。

 シルフはそんな僕に苦笑しつつも、嫌な気持ちにはなっていないみたいだった。

 でも、もしシルフもそうなのだとしたら。


「止まない風が止まって休めるような……そんなところにしたいですね」

「……ふふ、そうねぇ。ミーもそう思うわぁ」

「アキ様……」


 嬉しそうに笑うシルフに微笑んでから、僕はみんなへと視線を向ける。

 そうだ、だったらそういった名前にすれば良いだけだ。


「ギルドの名前は……“風のとまり木”にしようかなって思う」


 シルフだけじゃない、僕やラミナさん。

 ハスタさんやリュンさん、フェンさんといった、みんなバラバラに動くことの多い僕らが……揃って休めるような場所にしたいって思うから。

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