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30. お薬は、苦手ですか?

 アルさんから念話で連絡が入ったのは、おばちゃんから本を貰ってから2日が経過したお昼。

 僕とシルフが2人で街を散歩していた時のことだった。


 ちなみに昨日は1日街の外で下がってしまったスキルのレベル上げと、<鑑定>スキル習得のための散策に費やした。

 鹿の時に上手く使えなかったツルハシを使ってみたものの、やはり重さに負けて上手く振れず、一旦封印したのは苦い思い出。

 さらに、レベルが大きく下がったからか疲れやすくなってしまったのも予想外に痛手だった。


 とと、念話に返事しないと――


『アキさん、今大丈夫だろうか?』

「あ、はい。お久しぶりです」

『ああ、久しぶり。と言ってもまだそんなに経ってはいないんだが』


 そう言われて前回を思い出してみたら、まだ1週間くらいだったかな?

 確かに久しぶり、というには短かったかもしれない。


「っと、それで今日はどうされました?」

『今日はパーティーのメンバーが揃わなくてな。もしアキさんが大丈夫なら、この間の件で会えればと』

「僕の方は大丈夫ですよ。今街を散策してますが、おばちゃんのお店に30分後くらいでアルさんはどうでしょう?」

『ああ、それで構わない。では頼む』


 「わかりました」と僕が返事をすれば、頭から念話特有のノイズが消えた。

 森でトーマ君と話した時に彼が「一瞬ノイズが走る」って言ってたのはこのこと何だと思う。

 もっとも、シルフとの念話の時はノイズがないんだけど、これは契約しているからかもしれない。


(アル様からですか?)

「うん、こないだの件で会いたいってさ」


 シルフに念話の内容は聞こえない。

 これもトーマ君と念話したときに判明したことだ。


「おじさんに訓練の時のお礼を言いに行こうかと思ってたけど、また今度だね。行ってたら間に合わなくなりそうだし」


 頷くシルフと一緒にくるりと身を翻して、僕はおばちゃんのお店へと目的地を変えた。



「これが先日お話しした[最下級ポーション(良)]になります」


 言いながら、机越しのアルさんの前へ瓶を置く。

 彼はその瓶を手に持って、アイテムの詳細を確認する動きを見せ――


「確かに。この間飲んだものと同じものだな」

「おばちゃんが言うには、最下級よりも下級ポーション。それも良品の方が飲みやすいとのことでしたが……まだ下級の良品ができてなくて」

「ふむ……」


 喉ごしのことなんかを説明しつつ、インベントリから[下級ポーション]を取り出し、先に置いた瓶の横に置く。

 苦み自体は[最下級ポーション(良)]よりも柔らかいし、味だけで見れば飲みやすいんだけど……喉ごしが悪すぎて飲みにくいのが……。


「飲んでみても良いか?」

「どうぞ」


 アルさんは許可を貰うやいなや、瓶の蓋を取り、中身をあおる。

 そして――「ごふっ」とむせた。


「これ、は……ちょっと、」

「そうですよね。喉の引っかかりが強すぎて、飲みにくいですよね」


 苦笑交じりにフォローを入れつつ水を差し出せば、彼は一気に飲み干した。

 よっぽど苦しかったらしい……。

 うん、これはダメだな。


「……死ぬかと思った」

「すみません……」


 憔悴しきったようにうな垂れるアルさんに、深々と頭を下げる。

 ただ、そんなになるほど飲みにくかったっけ……?

 僕が飲んだときも気にはなるけど……死にそうになるほどではなかったと思うんだけど。

 あ、もしかして――


「アルさんって、お薬、苦手ですか?」

「……」

「もしかして、錠剤とか飲むのにコップ1杯は水が必要とか」

「……そうだ」


 うん、そういうことらしい。

 本気で落ち込んだのか頭を上げないアルさんに、僕は乾いた笑いをあげることしかできない。

 なんにせよ、このゲーム……本当にPSが必要らしい。

 というかこんな細かいところにまで必要とか、何を考えてるんだろう……。


「えっと、その、アルさん」

「……なんだ」

「ひとまず今回の納品は[最下級ポーション(良)]だけでお願いします。もっと飲みやすいものがないか、色々試してみますので」

「すまない……。よろしく頼む」


 声の調子は戻ってきたけど、相変わらず顔はあげないアルさん。

 よっぽど疲れたみたいだ。

 なら……よし!


「……アキさん?」

「はい。なんですか?」


 じりじりと近づく僕に気付いたのか、アルさんは顔をあげた。


「何をする気だ?」

「落ち込んでいるみたいだったので……撫でてあげようかと」


 そう、僕が落ち込んだりしたときは、おばちゃんが撫でてくれたから!

 僕の返しが予想外だったのか、彼はきょとんと表情を固めたまま「は?」と声を漏らした。


「――いや、ちょっと待て!」

「いやでーす」

「いや、ああ……くそ……」


 僕の姿が一応(・・)女の子なのに気付いたからか、彼は止めようと伸ばした腕を力なく垂らす。

 その動きが面白くて、僕は自然と笑いながら、右手を彼の頭へと乗せた。

 そうして触れた髪は、風のように柔らかなシルフの髪と違い、ゴワゴワとした堅さを感じる髪だった。




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名前:アキ

性別:女

称号:ユニーク<風の加護>


武器:なし

防具:ホワイトリボン

   カギ編みカーディガン(薄茶)

   白いワンピース

   冒険者の靴


スキル:<採取Lv.2→3><調薬Lv.6><戦闘採取術Lv.1→3>


精霊:シルフ

2019/02/22 改稿

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