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262. まずは普段通り

 結論から言えば――両方法共に優れている面と、劣っている面があることを確認出来た。

 もっと詳しく言えば、ポーションを飲むとHPが、かけると毒が……それぞれ早く回復することがわかった。

 というか、気付いてなかっただけで、毒で多少のダメージを受けていたらしい。

 集中してたから仕方ないとはいえ、気を付けよう……。


「さて、それじゃあ次に……の前に」


 粘液を空き瓶に入れてから器具を洗い、僕はそーっと仕切りの向こうに耳を傾ける。

 ……よく聞こえないな。


(シルフ、もし良かったらちょっと見てきてもらえないかな?)

(はい)


 お任せください! と言わんばかりに何度も頷き、彼女はふわりと身体を浮かせる。

 そして漂うように仕切りを超え――調薬プレイヤー達の作業場の、その頭上へと移動した。


(どうやらすでに、カンネリの葉を使うことは気付かれているご様子ですが……)

(ポーションを使うところまでは気付けてないってことかな?)

(いえ、そちらも気付かれているみたいなんですが)


 ならもう完成するかな?

 んー、ヒントが簡単すぎたかなぁ?

 そう思考に耽る僕の脳内に、シルフの声が響く。


(あ、失敗……? しました)

(え?)

(なんだか真っ黒になってますね)

(真っ黒? そんな風になる要素あったっけ……)


 カンネリの葉を刻んでから、火にかけたポーションと一緒に煮込むだけなんだけど。

 何も特殊なこともしてないし……ふむ。


(シルフ、もう大丈夫。戻ってきて)

(あ、はい)


 シルフを呼び戻しつつ、僕は意識を切り替える。

 ……失敗してみるか、と。



 そうと決まればまずは作り方のおさらいから始めよう。

 といっても、僕が取った手順はそんなに多くない。

 でも、僕は成功して、みんなは失敗した。

 もしかすると、使ったポーションが良品かどうかで変わるのかもしれないけれど、それも踏まえてやりなおしてみよう。


「えーっと、今回はみんなに合わせて良品は使わないとして、まずは普段通りに――」


 僕のやった手順は

 まずはじめに、鍋へポーションを5個ほど入れて火にかける。

 鍋のポーションがある程度熱くなるのを待つ間に、ポーションと同じ数のカンネリの葉を4等分ほどに切り分けておく。

 切ることで多少山葵(わさび)みたいな匂いが漂ってくるから、苦手な場合は換気をしておくとかの方がいいかもしれない。

 そしてある程度――ここでいうある程度とは、沸騰はしていないけれど指は入れれないぐらい――の熱さになったタイミングで、準備しておいたカンネリの葉を入れる。

 あとは時おりかき混ぜながら、色の変化を確認して……変化しなくなったら火を止めてっと.


「……できたね」

(ですね)


 なにひとつ手間取ることもなく、さっきよりも少し濁った青色の液体が完成した。

 詳細を確認してみれば[解毒ポーション(微)]としっかり書いてあるし……。


「さて、どこを変更していくか……」


 下級ポーションの良品の時のように鍋内温度の違いだろうか?

 それとも、混ぜる時間とか?


「でも、なんとなくその辺りじゃない気がするんだよね」


 うーんと唸りながらカンネリの葉を手の中で曲げたり伸ばしたり……。

 そうこう遊んでいると、ペキッと音がしてカンネリの葉が割れてしま――


「ん? 臭いが違う……?」


 葉の割れた先から漂ってくる臭いが、さっきまで嗅いでいた山葵のようなツーンとした匂いじゃない。

 どちらかというと、茎の時の臭いに似てる?

 つまり、それって……。


 頭に出てきた思いつきを確かめるために、割れた方向と同じ方向――つまり、葉の付け根から先に向けて、縦方向に包丁を入れる。

 そして、その状態で<鑑定>をかければ


[汚染されたカンネリの葉:軽い解毒作用を持つ葉。

しかし、カンネリの茎が持つ毒素が葉全体に広がっており、解毒作用をなくしている。]


 ――やっぱり。


「切り方で素材が変化するのか……」


 どういう理屈で変化しているのかはわからないけれど、この状態でポーションと混ぜれば、黒い液体になるということか。

 ただ液体自体も[解毒ポーション(微)]の青色、茎の粘液の透明色、そのどちらとも違う黒色なのがどうにもひっかかる。


「仕方ない。やっぱり作るしかないか」


 まだ時間はあるし……このままにしておくのもどうにも気持ちが悪いし。

 僕はその不思議な感覚に導かれるように、再度調合への準備を始めた。

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