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225. キャッチコピー

「無駄……? 無駄ってどういうことですか?」


 正直、たった数回顔を会わせただけの人に、こんなことを言われるのは勘に触る。

 けどそのたった数回、いや……武器を合わせた一瞬で分かるくらい実力差があるのも明確で、僕はカチンと来そうなその気持ちをなんとか飲み込んだ。


「そもそもの話だ。強くなりたいなら、武器を変えてキチンとした武器ってもんを持てば良い」

「でも、それじゃ」

「ダメなんだろうぜ? お前の中じゃな? だとすれば、そのままの武器でそのまま強くなりたいってことなんだろうが、そりゃ無理があるだろ」

「そ、そんなことは……」

「わかってるんだろ? でも、使う道具は変えたくない。そんな感じだ」


 わかってはいた。

 この間、兎と戦った時にだって感じていた問題点。

 僕の武器――もとい、採取道具はそれぞれの癖が強すぎて、持ち替えながら戦わないと、マトモに戦いにならないってこと。

 でもそれも突き詰めれば、僕の使う道具が……本来武器じゃないというのが原因になってくる。


「実は、何度か戦いを見させてもらっている。もちろんお前も、周りにいたプレイヤーも気づいてないと思うが」

「トーマ君も?」

「トーマなら気づけたかもしれないが、あいつにだって見ることができない時がある。……穴のなかに降りてる時とかな」


 穴の中……水の神殿のことかな?

 あの時はたしか……つるはしとノミと木槌だった気がする。

 つるはしで舌を地面に固定して、ノミを刺して上から木槌を叩き込んだんだ。


「今日の兎狩りも見させてもらった。もっとも勝手に見たがな」

「え、今日も?」

「ああ、トーマと一緒だったからな」

「へぇー……」


 確かにあの後、トーマ君が僕らの前に姿を見せたけど、その時に出なかっただけでウォンさんも一緒にいたってことかな?

 なるほど、なるほ……ん?


「あれ? トーマ君と知り合いなの?」


 普通に流しちゃってたけど、ウォンさんとトーマ君って知り合い?

 でも、トーマ君からそんなこと一度も聞いてないんだけど……。


「ああ、知らなかったのか。トーマとは長い付き合い……でもないな。こっちで会ったのは数日前だが、他のゲームでな。一時期組んでた事もあるぞ」

「そうなんだ……」

「俺もあいつも、動きが特殊だからな」

「まぁ、ちょっと普通とは違うよね。トーマ君なんて、冒険とかそっちのけで観光とか情報収集とかしてるし」


 僕の言葉に「昔から変わらねぇなぁ」と、ウォンさんが笑う。

 トーマ君とはサービス初期からの付き合いなだけに、僕の知らないトーマ君を知ってるっていうのが、なんだか凄く不思議な感じ。

 っと、それはまた今度にしておいて……。


「話を戻すけど……僕が強くなるには、どうしたらいいの?」

「武器を変える気は無いんだろ?」

「うん」

「真っ当に強くなるって言うなら、武器を変える方が確実に真っ当だ。だが、それをしたくないって言うなら……残ってるのは真っ当なやり方じゃない」

「真っ当じゃ……ない?」


 真っ当――努力をして着実に強くなる、そういう方向じゃ無いってことだろうか……?

 もしくは、罠や策のように純粋な強さじゃなくて、戦略とかそういった方向を伸ばすってことだろうか?

 なんにしても、僕が僕のまま強くなれる方法があるのなら。


「……このゲームのキャッチコピーってのを覚えてるか?」

「キャッチコピー? あー、たしか、このゲームは努力を決して裏切らない、だよね?」


 僕がこのゲームに惹かれた、一番最初のきっかけ。

 テレビCMで見た、この言葉。


「そうだな。そしてその通りの事をするだけだ」

「それって、真っ当ってことなんじゃ、」

「違う違う。お前がするのは<戦闘採取術>を鍛えることじゃない」


 言ってることがよく分からなくて、僕の頭が混乱してきた。

 えっと、このゲームが努力を裏切らないから努力して強くなるけど、<戦闘採取術>のレベルとかを上げるんじゃなくて、別の事をして強くなろう?

 でも、武器とかは変えないから……やっぱり<戦闘採取術>を上げるってことになるんじゃ……?


「むむむ……?」

「まぁ、そうなるだろうな。でも、お前はすでに何回も見てきたと思うぞ」

「見てきた? 何回も?」

「……複合スキルってやつをさ」


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