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220. 恐ろしい子

 ガサガサと草木をかき分けて、道なき道を進む。

 森と言うよりも雑木林のような、そんな場所をただひたすらにまっすぐに。


「ハスタさん。これどこに向かってるの?」

「わかんない!」

「ええ……」

「出発したときに槍を倒したでしょー? あの方向にひたすら進んでるだけ!」

「ああ、なるほど……」


 だから、さっきから獣道とか人が歩いた後とかあっても、完全に無視してまっすぐに進んでるのか。

 にしても、雑草の背が高くなってきたなぁ……。


「んー、先頭を交代しようか。ハスタさん、そろそろ先頭キツくなってきたでしょ?」

「そうだねー。アキちゃん先頭で、刈りながら進んでくれるー?」

「大丈夫。って言いたいところだけど、気配察知とか僕出来ないよ?」

「その辺はこっちで確認するよー」


 そう言って、ハスタさんは列の最後尾に付く。

 殿(しんがり)を務めるというよりも、ラミナさんと僕が近い方が、いざという時に都合が良いってことだろう。

 仕方ないことだとはいえ、僕自身そのままでいるわけにもいかないし、少しずつでも戦えるようになっていかないと!


「アキ」

「ん? 何かいた?」

「ん。前方から何か近づいてきてる」

「了解。接敵時間は?」

「15秒くらい」

「それだけあれば充分! 戦いやすいように、ここらを一気に刈り取るから!」


 言いつつ、腰を下げて片手で鎌を一閃。

 スパンッと小気味良い音が響き、前方の雑草が地面に落ちる。

 それを軽くステップしながら繰り返し、ほどよく視界が確保できる程度のエリアを作り上げた。


「こんなもんかな」

「すごい」

「アキちゃんさすが! 採取のプロ!」

「プロじゃないんだけど……ありがと」

「姉さん、アキ。構えて」


 僕らに指示を出しながら、ラミナさんが盾と剣を構えた。

 直後飛び出してくる茶色い物体。

 あれは――イノシシ?


 僕がこの島に来て最初に出会った大猪ほどではないけれど、そこそこに大きい猪が茂みをかき分けて僕らの目の前に現れた。


「数は2。ラミナが1匹引きつけておく間に、2人で1匹倒して」

「りょーかい! アキちゃん、行くよ!」

「うん!」


 まっすぐ突っ込んで来た2匹のうち、1匹をラミナさんが盾と剣で軌道をずらす。

 正面から受けず、少し角度を付けて受け流してる……。


「よいしょー!」


 ハスタさんの声で我に返り、僕が相手すべきもう1匹に視線を戻す。

 そこには、まっすぐにぶつかり合う1人と1匹がいた。


「もういっちょー! まだまだぁー! なんのー!」


 猪の太く鋭い牙と、ハスタさんの槍が何度もぶつかり合い、火花を散らす。

 これ、僕の入る隙間……ないよね?


 シルフに猪の速度を落として貰うのも手なんだけど、それはなんだかちょっと違う気がするし……。


「あ、そうだ」


 長く伸びた雑草を束ねて……こうして、これで……ここもこうして……。


「できたっ! ハスタさん! こっちに猪を」

「ん? はーい!」


 まるで2匹の猪がぶつかり合うように、何度も正面から突き合っていたハスタさんが、向きとタイミングを見計らい、スルリと避ける。

 何度も何度も繰り返したからだろうか。

 勢いを増していた猪は、すぐに止まることが出来ず――


「あ」


 ハスタさんの気の抜けた声と共に、ひっくり返った。

 その猪の喉元にノミを深く突き刺し、木槌を落とす。


 ……やってることは結構エグいことなんだけど、血が出ないからか、そんなに気にならないな。


「上手いこといったね」

「アキちゃん……恐ろしい子……」

「えぇ……?」


 僕がやったのって、ただ何カ所かに雑草を結んで猪の足を取ったくらいなんだけど……。

 というか、あんなスピードで突っ込んでくる猪に、真正面からぶつかれるハスタさんの方が怖いよ!


「それじゃ、ラミナも呼ぶ?」

「そうだね。同じ方法で倒しちゃおうか」

「りょうかーい! ラーミナー!」

「……。そう」


 チラリと僕らの方を向いたラミナさんは、何かを悟ったみたいに頷く。

 そして、向きを微調整すると同時に、僕らの近くまで下がり……

 まるで跳び箱を飛ぶように、突っ込んで来た猪の背中をタッチして、避けた。

 

 ブモ、とかそんな感じの鳴き声が聞こえて、さっきと同じくひっくり返る。

 

「えい」


 ラミナさんが、気合いの入らない声と共に剣を刺す。

 ……なんだか、この戦い方で勝利すると……空しい気持ちになるね。

 次からは封印しようかな……。

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