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208. 絶望的な差

「お互いの情報屋……? フェンさんと……誰?」

「確かトーマ……でしたか? 姫の参謀を務めている方ですね」

「トーマ君? 確かに情報収集とかが趣味だったとは思うけど……」


 耳聡いって言うんだっけ?

 情報収集の範囲や速度が、僕らとは全然違うレベルだとは思うけど……あ、それが情報屋ってことか。


「でも、トーマ君は今回あんまり……」

「そうです。あなたの拠点防衛に時間を掛けていたため、拠点外の事に関しては情報量が不足しているのですよ。……まぁもっとも、今回に関してはそれ以前の問題ではあったみたいですが」

「……?」


 僕に聞こえない大きさの声で、何かを呟いたみたいだけど……。

 言い直さないってことは、僕には関係ないってことなのかな?


 そんなことを思っていた僕の前で、シンシさんは腰から武器を取り出し、僕へと向ける。

 大きめの針のような武器。

 なんだっけこういうの……レイピアって言うんだっけ?


「さて、姫。お覚悟はよろしいですか?」

「……はい」

「この際ですからハッキリとお伝え致しますと……私とあなたでは、実力に差があります。象と蟻……とまでは言いませんが、そうですね。大人と子供、くらいの差はあるでしょう」


 確かに、今日……森の中で見たシンシさんは、生産メインのプレイヤーとは思えないくらい、強かった。

 糸や針を使う、裁縫系の技術を……そのまま戦闘に使って見せていた。


「例え、今が先ほどの森の中ほど、私に有利な状況で無くとも、私には姫ひとり倒すことなど、容易なことなのです。……それでも、戦いますか?」

「……やるよ。きっかけは代表に選ばれたから。でも、それだけでここに立ってるわけじゃないんだ。だからやるよ。例えそれが、絶望的な差だとしても」

「まったく、その気高さには、例え敵となった我が身でも、心が震えずにはいられません。……では姫」

「はい。……始めましょうか」


 応えると同時に、腰裏から草刈鎌を取り出す。

 そして、まるで横を向くように、右肩と右足を前に向けて立った。


「ほう……。誰かに教わりましたか?」

「リュンさんに」

「なるほど。赤鬼でしたら、おかしくはないですね」


 あのトーマ君とリュンさんの攻防戦の後、リュンさんは一瞬だけ僕の指導をしてくれた。

 指導っていっても、この一言だけ。

 「シンシの前では、面を減らせ」って言葉だけだった。


「しかし、構えに対策を取ろうとも、子供が急に成長することは無いのですよ!」

「――ッ!」


 シンシさんが言い切るのと同時に、僕は体を後ろへ退げる。

 むしろ、退がるしかなかった。

 ……僕の顔を狙って突かれた武器の、その先端の距離が、全然わからなかったから。

 だから、ひとまず退がるしかなかった。


「不思議な感じでしょう? まるで時間が止まったみたいに感じませんか?」

「……」

「こういった武器は、合わせ方がとても重要なのです。極小のポイントに、まっすぐ針を刺す。私にとっては、当たり前のことではあるのですが」


 合わせ方……?

 なにと、なにを?

 タイミング?

 いや……僕のタイミングと、シンシさんのタイミングは、全然違ったからそれじゃないはず。


「距離が分からなければ、攻めに転じることも難しい。これで実力差はわかったでしょう? ――棄権しては、いただけませんか?」

「それは絶対にしません。そんなことを言っている間に、僕を攻撃すればいいじゃないですか」

「……私としては、本来お護りすべき相手に、剣を向けているということだけでも、非常に心苦しいことなのですが……」

「なら、シンシさんが棄権するって手もありますよ」

「ふふ、ご冗談を」


 笑いながら足を動かし、シンシさんは僕の顔へと狙いを定める。

 まだこの時は、彼の剣の形は分かる……。

 でも――


「……ふッ!」


 踏み込みと同時に、腕が引かれ……視界の剣が点になる。

 ダメだ、分からない!


「くっ!」


 ひとまずタイミングをはかるよりも先に、彼の間合いから大きく逃げる。

 どこまで届くのか、どのタイミングで刺さるのか……それがまったく分からない。

 反面、避けるだけならそこまで大変じゃない。

 ただ、反撃を捨てるほど、大きく避ける事が前提で、だけど……。


「つまり……反撃するためには、あの突きのカラクリを暴かないとダメってことだよね」

「私としては、諦めて棄権していただけるのが最善なのですが……それは望めなさそうですね」

「なんども言いますが、それはしません。僕にだって、ここにいる理由がありますから」


 きっと、みんなからすれば本当に小さい理由だけど。

 それでも、僕には絶対捨てられない理由だから。


「さぁ、シンシさん。第2ラウンドと行きましょう!」


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