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199. 触りたいの?

「そ、そろそろ行こうか」

「ん」


 時間にして数十秒。

 しかし、抱きつかれたまま、両腕の行き場がなく、彷徨(さまよ)わせていた僕からすれば、数分以上の時間が経っているように感じられた。


「もう暗くなっちゃったね」

「好都合」

「紛れやすくなるから?」

「そう」


 普段は夜の時間に町の外を歩くことは少ない。

 僕もたしか……大蜘蛛と戦った時、あの1日だけのはずだ。

 理由は大きく2つあって、1つは魔物の動きが活性化すること。

 そして、もう1つは、視界が悪くなることだ。


 魔物の活性化に関しては、今回はそんなに関係がない。

 むしろ関係しているのは視界が悪くなる方で、これが結構厄介なんだ。

 僕らみたいに、()()()()()()()()()()()のなら、足下だけ見えてれば特に問題はなかったりする。

 けれど、僕らを探す相手からすると、視界が悪くなるのは、中々に難しい。

 視界を良くしようと、灯りを持つのも手なんだけど……そのために片手が塞がれたり……。

 とにかく、結構厄介。


「止まって」


 そんなことを考えてるうちに、拠点近くまで戻ってきていたらしい。

 そのまま進もうとしていた僕を、ラミナさんが腕で止めてくれる。

 僕の目には、まだ人影も見えないけど、ラミナさんには何か感じるモノがあったんだろうか……?


「ここから、走って5分くらい」

「拠点まで?」

「そう。だから、もう少し待つ」

「……なるほど。了解」


 風向きも、幸いなことに拠点の方が風上だ。

 だから、ここで隠れていても、臭いで気付かれる心配はそんなに無い。

 空にはもう星が煌々と輝いていて、太陽の光はほとんどない。

 けれど、あと10分もすれば……もっと暗くなるはず。

 ラミナさんは、多分そのためにここで待つことにしたんだろう……。


「……」


 チラリと、横に座るラミナさんへ視線を向ける。

 青色の髪に青色の瞳、ツリ目でも、タレ目でもない、大きい目……だと思う。

 断言出来ないのは、いつも無表情で、ぱっちりと言うよりも、ジトッとした感じに見えるからだ。

 それでも、時折見せてくれる笑顔や、驚いた時の顔なんかは、ハスタさんとよく似ていて、やっぱり双子なんだなぁ……って感じがする。


 そのまま視線を下ろしていけば、白くて細い首と、そこから繋がる鎖骨……そして、胸……。

 胸のサイズは感触的に、ハスタさんの方が大きいみたいだ。

 背中に当たる感じだけでも結構わかるのが、なんとも言えないけど……。

 大きさ的には、ハスタさん、ラミナさん、僕の順に大きい……かな……?


「いや、別に僕はいらないけど」

「……?」

「なんでもないよ」

「そう。……アキ、触りたいの?」

「……いえ、別に」

「……そう」


 僕の視線に、何を見ていたのか分かったのか、ラミナさんが僕の方へと向き直り、手を取る。

 そして、その手を自らの手の中で弄りながら、笑った。


「……ッ、ら、ラミナさん! け、結構暗くなってきたよ!」


 なんだかいつもと違う彼女に、少し緊張しながら、僕は慌てて話題を逸らす。

 実際、隠れ始めた時よりは、だいぶ暗くなっていて、数歩先も見えにくくなってきていた。


「行く」

「う、うん。……ここからまっすぐ走ったらいいんだよね?」

「そう。でも気を付けて」

「ラミナさんもね」

「……ん」


 彼女が頷いたのを見てから、僕らは音を立てないようにゆっくり立ち上がった。

 そして、緊張をほぐすように、息を一度大きく吸って……駆け出した。



 駆け始めてからすぐに、人の声が聞こえ始めた。

 最初は微かに耳に入る程度だった声が、次第に大きくなり……今となっては、前からも後ろからも聞こえるほど、僕らは集団の中に入って行っていた。


「おい! 走り抜けてくやつがいるぞ!」

「あっぶねぇなぁ!」

「拠点のやつらの仲間か? 誰か捕まえろよ!」

「暗くて見えねぇよ! あと、なんか臭ぇ!」


 近くを走り抜けていく僕たちに気付いたのか、攻めあぐねている状況に愚痴っていた周囲の声は、だんだんと僕らを捕まえる方向に変わっていく。

 しかし、夜闇で見えない状況に加え、僕らは走って抜けている。

 気付いた時には、すでに離れて行っているという状態だ。


「……このまま行けば」

「……ん」


 すでに数分は走った。

 単純距離であれば5分ほどだったけど、人の間を抜けていくためか、少し時間がかかってる。

 だけど、もう少し……もう少しで拠点に帰れる!


 そう思った瞬間……急に視界が明るくなった。


「……は?」


 自分の前に伸びる影。

 何かで、後ろから照らされてる……?


「一体、なんで……?」


 松明や、魔法程度の光じゃない……。

 もっと……まるで太陽みたいな光……。

 そう思って、後ろを振り返った僕の目に――


「なんだ、アレ……」


 天に昇る、赤い光の柱が見えた。


いつもお読みいただきありがとうございます!

長いような、早いような……次のお話で200話に到達です!

まさか200話も更新を続けられるとは……自分でも驚きです。

これも、応援していただいた皆様のおかげだと思います!

ありがとうございます!


またこれからも、がんばりますので、よろしくお願い致します!

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