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190. 強くなったから

 森から拠点へと続く平原を、少し駆けるくらいの速度で抜けていく。

 少しゆっくりな速度がもどかしいけど、ラミナさん曰く「即対応できる速さ」というものらしい。

 その意味は、すぐに僕にも理解ができた。

 ……拠点に近づくほどに聞こえてくる、音の大きさで。


「……なに、これ」

「鉄同士の音もしてるから、まだ拮抗してる」

「金髪の人が指揮してるのかなー? すごいね!」

「金髪……トーマ君、無事かな」


 あの念話では、かなりギリギリの状態だった。

 でも、その後にアルさんに連絡をしてたみたいだから、多少は持ち直してるのかな……。

 でも、それでも……


「早く、行かないと……!」

「……待って」

「え?」

「姉さん」

「わかってるよー! やっぱりって感じだね!」


 速度を上げようとした僕を止めて、ラミナさんはハスタさんを呼んだ。

 けど、ハスタさんも呼ばれるのが分かってたみたいに、ラミナさんの横……つまり、僕よりも前に出てきていた。


「やっぱりって、何が?」

「数人、向かってくる」

「数人……。もしかして、敵ってこと!?」

「多分そう」


 前方に意識を集中したまま、ラミナさんは僕の質問に答えてくれる。

 後になって知ったことだけど、2人はこのときすでに<気配察知>のスキルを持ってたみたい。

 あの4人のPKと出会った後、イベントまでの間、森で訓練して。

 ……あの時の出来事は、2人にとっても、心を動かす出来事になっていたみたいだ。

 けれど、今の僕はそんなことも知らず、身構えた2人に倣って、草刈鎌を片手に心を落ち着ける事に必死だった。


「……近い」

「音が近づいてる……なんだろ、不思議な音がしてる?」

「多分、靴。他にも複数ある」

「戦闘がもし始まったとしても、アキちゃんは拠点を目指して走ってね。アキちゃんはここで足を止めてる訳にはいかないから」


 手に持った槍の穂先を、ぐるりと上下に回しながら、ハスタさんはそんなことを言う。

 そういえば、ラミナさんも……そんなことを言ってたような……。


「でも……」

「大丈夫。私とラミナは強いよー! ……強くなったから」

「そう。ラミナ達は大丈夫」

「2人とも……」


 そんな話をしている間にも、足音は近づいてくる。

 なんだろう……?

 妙に軽くて不思議な足音が1つ……なんだかリュンさんの下駄みたいな音……?


「下駄……?」

「ん? アキちゃん、どうかした?」

「いや、この音って……リュンさんの下駄の音に似てるなーって」

「……確かに」


 でも、リュンさんは、まだ僕らより後ろの森にいるはず。

 だから前から来るのはおかしいけど……。


「そういえばもう1人……下駄の人がいたっけ」


 僕が会ったのは数回だけ。

 けど、初めて会った日にも、リュンさんの音に似てるって思ったんだ。


「……ヤカタさん」

「あぁ、こんなところで何をしてるんだ? お嬢」


 視界に現れたヤカタさんは、軽い口調でそんなことを聞きながらも、僕たちの方へゆっくり近づいてくる。

 近づくほどに鮮明に見えてきた作務衣は少し汚れていて、まるで作業場から抜け出してきたみたいに見えた。

 

「もう暗いですから、拠点に戻るところなんです。……ヤカタさんの方は?」

「俺はもう少し作業が残っててな。今、材料を集めてるところだ」

「そうですか。では、僕らは拠点に戻りますね」


 激しくなる鼓動を隠しながら、焦りを見せないよう……すれ違うようにゆっくり進む。

 ……このまま手を出さないで欲しい……!

 けれどそんな僕の願いは、真横で響いた音で、軽々と壊された。


「材料は動くなよ。……俺は大雑把だからな。よく手元が狂って、壊すんだ」

「ッ姉さん!」

「任せてっ!」


 僕の真横に放たれた大槌を、ラミナさんが盾で防ぎ、それに呼応するように、横からハスタさんが一撃を放つ。

 時間差なく繰り出された一撃は、まさしく双子らしく……まるでお互いの思考がわかってるみたいだった。


「ほぅ……速い、が甘い」


 ヤカタさんは一歩退()がりながら、手に持った大槌の柄尻でハスタさんの槍を防ぐ。

 そして、流れるように退()げた一歩を踏み込み……


「速いだけで芯がブレている」

「なっ!?」

「一撃ってのは、こういうのを言うんだ!」

「姉さん!」


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