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185. 心配したぜ

今回の話は、トーマ視点となります。

 ふっと、眠りから覚めるように、頭から手足へと感覚が戻る。

 少しだけ光が差し込む、半ば崩壊した家屋の中で、俺は布団代わりの土塊を剥いだ。


「こ、こは……?」


 声に出すことで、ようやく完全に意識が戻ったのか……痛みと共に、自意識的には数分前のことを思い出す。

 確か……PK共に対抗するべく、指示を出していた時、生産職(ヤカタ)のやつに殴られ……その後どうにか逃げた先で身を潜め、アキの念話に気づいた瞬間……逃げ場を塞ぐように、ここが崩壊したんだ。

 俺としたことが……失態の繰り返し、だな。


「はっ……」


 声が乗るように、自然と息が漏れる。

 HPはそこまで残ってないが……死んでないだけマシだ。

 あいにく、回復はアキが持たせてくれた分、まるまる残ってる。

 ひとまず、身を起こして……。


「ッ!? 誰だ!」


 身を起こそうと腕に力を入れた直後、死角になっている暗闇の方から音が聞こえた。

 木片が動くような軽くて、乾いた音。

 風じゃない……少し意識を傾ければわかる。

 あそこには、誰かがいる、ことが。


「その声……! トーマ! 無事だったか!」

「――ッ!? ウォン!? どうしてここに!?」

「俺の仕事が早くに終わったからさ。急いで戻ってきたんだ。そうしたら、トーマ……お前が襲撃されたって聞いてさ。心配したぜ」

「……」


 俺に話しかけながら、崩れた家屋がまるで関係無いみたいに、軽々とウォンが近づいてくる。

 ……それにしても、心配した、か。


「ウォン。外はどうなってる」

「あぁ、酷いもんだぜ? ほとんどの建物が壊れて、ものによっちゃ燃えてさえもいる。こりゃ負けたかもな」

「……そうか」

「それよりトーマ、とりあえずお前のことだ。ひとまずコレでも飲んで回復しようぜ」


 そう言われながら差し出された瓶を口に咥え……飲もうと息を吸い込んだ瞬間。

 鋭い痛みと共に、俺の脳裏になぜかウォンが見えた。


「グ……!?」

「お、おい大丈夫か!」

「わ、悪い……」


 脳裏に浮かんだウォンが、笑っているような気がして……一瞬力が抜けてしまう。

 その結果、口に咥えていた瓶が落ち、俺から少し離れた所へと転がっていった。


「ったく、取ってくるからちょっと待ってろ」

「すまん」


 困ったような顔でウォンが離れていく。

 すまんな……心配かけて……。


「……? 心配……?」


 なんだ、なにか引っかかる……。

 ……心配した?

 ウォンが……俺を……?


「違うだろ……確か……あいつは……」


 ――トーマ、お前だから任せれるんだぜ。

 そう、俺に言ったはずだ。


「任せる……か」

「おーい、トーマ。中身は大丈夫そうだ。すぐ持って行く」

「いや、その必要は無い(ねぇ)。それより、ひとつだけ聞きたいことがある」

「あん? なんだよ」


 ――こっちは任せたぜ。

 ――分かってる。あっちは俺らに任せろ。


「なぁ、お前……誰だ?」


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