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162. お前の居場所はない

「さっきアルが仕留めたやつで、とりあえず仕舞いや」

「そうか。まさかこんなに湧いてくるとはな……」


 トーマ君の報告で、みんなが構えを解き、ホッと息を吐いた。

 僕が倒したのは、最初の1匹に加えて、アルさんが弱らせていた魔物のトドメを3匹程度。

 全部で20匹近くいたみたいだけど、大半はアルさんやカナエさんが倒してくれたようだ。


「そいでまぁ暇やったさかい、穴の中に入ってみたわけやけど、ありゃダンジョンやな。間違いないわ」

「そうか……。奥は?」

「チラッと見ただけやから詳細は分からんが、とりあえず光源は必須やな。だいぶ浸食が進んどるが、遺跡系ダンジョンってやつやろ」

「なるほど……。なら、今日のところは一旦拠点に戻ろう。準備を整えてからの方が良いだろうからな」


 話が軽くまとまったところで、休憩も終えて、拠点へと足を向けた。

 そんなに長くは探索も戦闘もしてなかったのに、帰れる安心からかドッと疲れが襲いかかってきた気がする……。

 やっぱり、僕はこっちの方は向いてないみたいだ……。




「それで、アキさんは薬を……」

「うん。と言っても、すぐに準備出来るから、その後また森に伐採に行こうと思ってます」

「了解っす。トーマ、俺らも昨日の続きと行こうぜ!」

「せやな。キャロさんも行けるか?」

「えぇ、大丈夫です。今日中には設計図と必要材料などを確定してしまいましょう」


 拠点に帰ってくると、みんなが待っていてくれたみたいで、すぐに合流することが出来た。

 今日はもう探索に出ないアルさん達にも伐採を手伝って貰うことになり、僕とトーマ君チームの3人以外はみんな拠点の外に向かうことに。

 みんなを見送りつつ、僕も駆け足気味に作業場に向かった。


「おじゃましまーす……」


 すこし気が立っていたとはいえ、あんな言葉を言って作業場を出て行っただけに……ちょっと気が引けるというかなんというか……。

 ゆっくり、ゆーっくり、音を立てないように、作業場の端を……。


「あ、アキさん!」

「え! あ、アキさん!」


 しかし、そんな想いも関係なく、普通に後ろから名前を叫ばれる。

 その声に、思わず身を震わせてる間に、僕がいるって情報がどんどん広まって……。


「アキさん!」

「来てたんですね!」


 歩こうにも、前からも後ろからもどんどん人が集まってきて、身動きが!

 も、もしかして「お前の居場所はない!」みたいな感じ……!?


「あ、あの、その……」

「アキさん、待ってましたよ! 良かったー! 来てくれて!」

「少しだけ作業を……って、ん?」


 なんだか予想外の言葉が聞こえた気がして、顔を上に上げる。

 すると、みんななんだか……笑ってる……?

 あ、今待ってたって言ってたの、調薬のやり方を聞いてきた女性だ。


「ま、待ってた? なんで?」

「アキさんに見せたいものがあるんですよ!」

「僕に? 何を?」

「まーまー、こっちに来てください!」

「え? え?」


 彼女は、思考が追いついてない僕の手を掴んで、ずるずると来た道を戻っていく。

 あの、調薬用の作業エリア、遠ざかってるんですけど!?

 これはやっぱりアレ?

 僕はこの作業場使用禁止! みたいな!?


「あ、あの! 僕、調薬を……!」

「見てください! これです!」

「調薬……ん?」


 ずいっと僕の目の前に、何やら板状のモノが近づけられる。

 その板をよくよく見てみると……えーと、役割分担表?

 そう大きく書いてある下に、何やらA-1とかB-2とか、そんなのが書いてあった。

 ……なんだろう、これ。


「これ、何?」

「役割分担表です!」

「うん、それは書いてあるから分かるけど……」


 僕が聞きたいのは、そこじゃなくて、それを僕に見せてどうしろと……?

 このアルファベットとか、数字とかの意味なんだけど……。


「昨日、アキさんが出て行かれた後に、男性……いや、女性……? まぁ、その人に色々と諭されまして」

「ふむふむ」

「それで、調理とか調薬のメンバーを中心に、他リーダーへご相談した結果が、これです!」

「いや、その……大事なところが全く分からないんだけど……」

「簡単に言えば、人手を分けて両方やっちゃおう! ってことです」


 説明が全然足りて無くてわかんないけど……多分、生産プレイヤーの担当を分けて、設備を充実させる班、拠点に建物を作る班、探索や調査のプレイヤーとやりとりをする班、みたいに分けるってことかな?

 まぁ、確かに人は多いし、出来るだろうけど……。


「よくまとめれたね……。人数多いから、こんな風にまとめるのは難しいと思ってた」

「そこはほら、アキさんの人徳ってやつですよ」

「いやいや……」


 彼女は胸を張りながら、そんなことを言い出す。

 さすがにそれは無い、と思って周りを見てみれば、みんなもなぜか頷いていた。

 ……いや、おかしいよね?

 僕、何もしてないよ?


「でもこれで私たちも、大手を振ってアキさんのお手伝い出来ますから! いくぞみんな、生産プレイヤーの底力、見せてやるぞー!」


 謎なくらいノリノリな彼女の言葉に、なぜか周りのプレイヤーが気合いの雄叫びを上げる。

 唯一テンションについて行けない僕を置いて、盛り上がってるけど……。

 でもまぁ……いいこと、なのかな?

 

 なんて、騒がしく盛り上がる作業場の中で、1人笑った。


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