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152. 離れて

「あのー、こちらに貸し出し用の斧があるって聞いたんですがー」


 布で出来た五角形の天幕へ入りながら、僕は用件を口にする。

 トーマ君が「ここならあると思うで」って言ってたし……。


「おや、いらっしゃい。木斧かい?」

「あ、はい。ちょっと周辺の森に木を伐りに行こうかと」

「うんうん。今は材料もないからね、そうして取ってきてくれると助かるよ」


 僕の声に反応してか、天幕の奥からおじさんが姿を現した。

 少し太めの体に、簡素な布の服を着たその人は、煩雑に置かれた木箱の中から小さめの斧を取り出す。

 僕より大きい体をしてるから余計に小さく見えるだけで、僕が持ったら結構大きいかもしれない……。


「これを貸してあげるよ。一応、この島にいる間は持っていてもいいけど、帰るときには回収させてもらうからね」

「あ、はい。わかりました」

「あと、近くに大きく森が広がってるけど、伐採なら東側の森で行ってね。そこなら、比較的魔物も少ないみたいだから」

「なるほど……。わかりました、ありがとうございます!」

「それじゃあ、よろしくね」


 そう言って、おじさんは天幕の奥に消えていく。

 運良く場所の情報も得れたし、おじさんの言う通り、東側の森に向かおうかな!

 あ、そのまえにハスタさん拾わないと……。

 元気になってれば良いんだけど……。


「アキさん、いかがでしたか?」

「あ、大丈夫です。借りれました」


 天幕を出たところで、待っていてくれたらしいオリオンさんが声をかけてくれる。

 そんな彼に、木斧を掲げるように見せつつ、返事を返した。


「さすが、トーマ様の情報ですね」

「ホント……トーマ君はいったいどれだけ情報を持ってるんでしょうね」


 このイベントの前情報もそうだし、蜘蛛の弱点や茶毛狼(ブラウンウォルフ)の情報も彼からだ。

 それでいて、交友関係も広そうだし……。


「まぁ、トーマ君のことは考えてもよく分かんないので……とりあえず、ラミナさん達を迎えに行きましょうか!」

「かしこまりました」


 オリオンさんは右手をお腹の前へ構え、言葉と共に……まるで執事のように頭を下げる。

 ブレない姿勢に驚きつつも、見た目のせいか違和感が無い……。

 オリオンさんって、本当に執事だったり……しないよね?


「えーっと、ラミナさんは……っと」

「アーキーちゃーあああぁぁぁん!」

「ごふぅっ!?」


 キョロキョロと拠点を見回しながら歩いてた僕の腰に、後ろからスゴい衝撃が走る。

 咄嗟に足を前に出したことで、なんとか倒れずに済んだけど……なにごと……?


「姉さん、離れて」

「やーだー!」

「……姉さん?」

「ジョ、ジョウダンデス、ヨ?」


 ラミナさんの声が聞こえたかと思うと、妙なカタコトと共に、ゆっくりと腰から腕が離れていく。

 振り返らなくてもわかってたけど……やっぱりハスタさんか。

 さすが猪突猛進の槍使い……突進力は伊達じゃないね……。


「姉さん、謝って」

「ごめんなさい、アキちゃん……」

「別にいいよ。ちょっとおど「違う、ラミナに」……え?」

「アキはラミナの」


 そう言って、彼女は僕の右腕をぎゅっと抱く。

 いつもと変わらない無表情ながらも、なんだか少し誇らしそう……に見える?

 って、そうじゃなくて!?

 なんで、ラミナさんはこんなに僕に懐いてるの!?

 あと、その……位置が悪い!


「ら、ラミナさん!?」

「なに?」

「その……、そのですね……!」

「……そろそろよろしいですか?」


 ぎゅっと腕を抱かれて慌てる僕の耳に、落ち着いた男性の声が入ってくる。

 そ、そういえばもう1人いたんだった……!


「あ、あのオリオンさん……その……」

「ご心配なく、分かっておりますので。それよりも、早くパーティーを組んで向かいましょう。あまり遅くなると、日が暮れてしまいますから」

「……はい」


 淡々と話すオリオンさんに、僕は頷くことしかできず、とりあえず動かせる左手でシステムを開いた。

 そうこうしていると、ラミナさんが腕から離れ……手を握ってくる。

 握ったり放したりと、遊ばれている右手を無視して、僕はみんなにパーティーの申請をした。


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スタプリ!―舞台の上のスタァライトプリンセス
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