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151. やれんことはない

「アキさん! こっちっす!」


 手を挙げるようにして、僕を呼ぶスミスさんの方へと走っていく。

 そこにいるのは彼だけじゃない。

 アルさん達を除いた、拠点にいるメンバー全員と、トーマ君だ。


「いきなり念話あって、なんかと思ったわ」

「いやー、アキさんが大変そうだったし、トーマ呼んどいたら良い案くれそうだったからさ」

「トーマ君はスミスさんに呼ばれたんだ。僕はキャロさんから念話があって来たんだけど」


 あの説明の最中、僕の頭に唐突にノイズが響いた。

 そうして飛んできたのは、キャロさんからの念話。

 内容としては、みんなで一度集まろうってことで、僕はこうして指定場所まで走ってきたんだ。


「ま、なんでもええわ。それで大体の状況は分かっとるけど、実際どうするつもりや?」

「んー……どうしよっか?」

「考えてないんかい!」

「いやーだって……僕もどうすればいいか……。ひとまず、調査とか探索から帰ってきた人が休める場所を作らないと、とは思うんだけど」


 ただ、そのための人手も、材料も足りない。

 ヤカタさんとかみたいな、木工をメインにやってる人が1人でもいれば、話が早いんだけどなぁ。


「なら、まずは整理しようや。休めるところを作るっても、とりあえず何ヵ所作るんや?」

「ん? んー……3ヶ所くらい?」

「他に作りたいんは?」

「取引所みたいな……。素材やアイテムの受け渡し所みたいなところかなぁ……」

「せやったら合計4つか。凝る必要はないんやろ?」

「それは、うん」


 なるほど……と言いながら、トーマ君は少し考えるような素振りを見せる。

 家っぽくしようと思うとやっぱり時間はかかるよね……。

 でも、出店のテントみたいに(ほろ)をかけただけじゃ雨とか心もとないし。


「ひとまず必要なんは図面か。あとは材料と技術者もやな」

「そうだよね……。でも、それが全く当てがないんだよ」

「確かに、俺らん中じゃ木工系のスキル取っとるやつはおらんしなぁ……」

「うんうん」

「やけど……。こんなん考え方変えるしかないやろ」

「え?」


 悩んだような顔付きから一転して、ちょっと意地悪気な顔でトーマ君は僕を見る。

 そして、隣に立っていたスミスさんの肩を抱いて――


「木で作れへんのなら、その部分だけ……鉄と紐で作ろうやないか!」

「は!?」

「幸い、こっちには布と鉄の職人がおるんや。使わん手はないやろ」

「いや待てトーマ! お前、なに言ってるかわかってんのか!?」

「なんやスミス。できんのか?」

「いや、出来る出来ないの話じゃなくてだな! どうやってやれってんだよ!」


 んー、つまり木で作るときに難しいのは、組み合わせる部分、だよね。

 図面に関しては、今建ってる建物を確認しながら描き上げて……。

 材料の木の長さは……紐で調べれるかな?

 キャロさんにお願いすれば、その辺りはちゃんと調整してくれそうだし。


「基本的に組み上げを紐で行って、紐を固定するのに鉄を使えば……」

「あ、アキさん!?」

「案外良い案かもしれない!」

「いやいや、そもそも材料はどうするんですか!? まさか採ってくるとかって……」

「もちろん採ってくるよ。採取は僕の得意分野だからね!」

「それはもう採取じゃなくて、伐採……」


 僕の言葉に、スミスさんがなんだか諦めたような顔を見せて、顔を落とす。

 まぁ、結構厳しいとは思うけど、何もしないっていうよりは良いよね。

 でもそうするなら、早めに行動しなきゃ!


「で、アキさん。実際そうされるとするなら、どのように役割を分けましょうか?」

「オリオンさんは僕と一緒に来てください。木を運ばないといけないので」

「承知しました」

「キャロさんとトーマくん。あと、スミスさんはまず一緒に行動してもらって、図面を作成してください。トーマ君……たぶん、描けるよね?」

「さぁ? 知らんけど……まぁ、やれんことはないやろ」

「お前のその自信、どっから来んの?」

「そんなん、俺やからやで」


 やったこともないことを振られてるのに、普段と変わらない表情でトーマ君は引き受けてくれる。

 ホントにすごいなぁ……。

 失敗したら、とか考えないんだろうか……。


「キャロさんもそれでいいですか?」

「あ、はい。大丈夫です」

「アキ。手伝う」

「ラミナさん……」


 作業場からずっと一緒にいたラミナさんが、僕の後ろからゆっくり顔を出しつつ小さく呟く。

 きっと、みんな知らない人だから、ちょっと引いてたんだろうなぁ……。


「じゃあラミナさんは、僕と一緒に来てくれる?」

「姉さん、は?」

「ハスタさんも来てくれるなら嬉しいけど、大丈夫かなぁ……」


 会議前に見たときは、結構死んでたけど……。

 この作業も結構疲れるだろうし、厳しいなら休んでもらいたいところだけど。


「たぶん大丈夫。あとで呼ぶ」

「まぁ、その辺は任せるよ」


 さてと、これで一応準備は……っと、ひとつ重要なことを忘れてた。

 これがないと僕、役立たずになっちゃうよ。


「あの、スミスさん。……伐採用の斧って持ってないですか……?」

「……さすがにないっすよ」

「だよねぇ……」


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