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127. ごめんなさい

「――!」


 ん……?

 なんだろ……なんだか周りが騒がしい……?

 てか、僕なんで寝て……ッ!


「――ったぁ……」


 直前のことを思いだした僕は、倒れていた身体を一気に起こした。

 その結果、僕の上にあった何かに頭が直撃。

 ゴッと鈍い音がして、思わず両手で頭を押さえた。


「一体何……」

「……いたい」


 聞き覚えのあるその声に顔を横に向ければ、今日一日で何度も見た青い髪。

 痛いって言いながらも、まったく変わらない表情は、間違いなくラミナさんだった。


「……なんで」

「ん?」

「なんでいるの? 逃げてって言ったよね?」

「遅かったから。……待ってたのに」

「っ……、それはその……」

「別にいい。……ごめんなさい」


 言葉に詰まった僕から見えないように顔をそらして、彼女は小さく呟いた。

 その言葉と雰囲気に、僕は余計何も言えなくて、体を彼女の方に向けて頭の上に手を伸ばした。


「その……」

「ふん、ようやく起きおったか」

「あらあら。アキちゃん、大丈夫?」


 俯いたラミナさんを撫でつつ、声を掛けようとした直後、僕の後ろから不機嫌そうな声が聞こえた。

 そして、それに続くようにもう1人……聞き覚えのある声がして……。


「な、なんでここにいるんですか……?」

「はん。ずいぶんな言いぐさじゃのう、助けてやったと言うのに」


 僕が振り返ると、そこには……なぜかリュンさんがいた。

 彼女は街で見かけた時と同じ着物を着ていて、可憐ではあるのだけど……、森に似合わない……。

 そして、その後ろには、やっぱりフェンさんの姿も見える。


「……え?」

「じゃから、助けてやっ「リュン。ありがとう」……ふん、お主が言うてどうする」

「お願いしたの、ラミナ達だから」


 ラミナさんは顔を上げて、リュンさんの方へ目を向けながら、言葉と一緒に少しだけ頭を下げる。

 その言葉に僕は、なぜ2人がここにいるのかが、理解でき……そうでやっぱりできなかった。

 いや、ラミナさん達が2人に助けを求めた、のはわかるんだけど……。


「って、考えてる場合じゃなくて、あの4人は!?」

「殺ったわ」

「そうね。ミーが1人。リュンが2人。あと……」

「姉さん」

「……え?」

「姉さんが1人。でも……」


 そこで言葉を切ると、ラミナさんはまた下を向く。

 そういえば、あの元気な女の子の声がしない。

 彼女の性格なら、僕が起きたのを見て落ち着かないくらいに騒ぎそうなのに……。


「……ラミナさん。ハスタさんは?」


 僕の問いかけに、彼女はゆっくりと顔を上げて……口を開いた。


「姉さん……」


 まっすぐ僕の方を見て、少しずつ言葉を紡ぐ。

 言いづらそうなその様子に、みんな無言で彼女を見つめる。

 雰囲気が……重い……。


「姉さん、は……」

「おっ! アキちゃん起きたー? あっちに大きい熊がいたよー! くま、熊! リュンちゃん、やりにいかない!?」


 重くなった雰囲気を粉々に砕くほどの軽い声が、僕の耳に届く。

 その声の方へ振り返れば、槍を片手に走ってくるハスタさん……。


「……大成功」

「……ラミナさん?」

「ラミナ、何もしてない。悪くない」


 小さく聞こえた声に反応すれば、彼女は顔の前で両手を振りはじめた。

 おかしいなぁ……僕、特に怒ってないんだけどなぁ……。


「……ごめんなさい。許してください……」


 怒ってないよ、と笑った僕の顔を見た瞬間、ラミナさんは地面に頭を付ける勢いで、土下座と謝罪を始めた。

 まさかの逆効果だったらしい……。


「……そろそろミーの話をしてもいいかしら?」

「あ、はい」

「ふん。フェン、説明は任す。儂はこやつと、熊をやってくるわ」

「おー! リュンちゃんとなら負けないね! ドスッとやっちゃうよー!」

「2人とも気をつけてね。……フェンさんお願いします」

「えぇ……。それじゃ、話すわねぇ」


 槍を持って突撃していくハスタさんの後ろを、無骨な大斧を2つ持ったリュンさんが、ゆったりと追っていく。

 そんな2人を目だけで見送った後、僕はフェンさんへと目を合わせた。


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