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123. 解除は未定

「ま、まぁ……刻んで煮るだけだし……」

「そ、それなら出来る!」

「と、言ってますけど……?」

「姉さん。この間、お味噌汁作ろうとし「だ、ダメーッ!」」


 かぶせるように大声を出して、ハスタさんはラミナさんの口を両手で塞ぐ。

 待って……、お味噌汁を作ろうとして……。

 まさか爆発したの……?

 お味噌汁が……!?


「べ、べべ別に普通に作っただけよ? その、ちょーっと間違えたっていうかその……」

「姉ふぁん(さん)ひょっと(ちょっと)間違えふぁらけら(ただけじゃ)ばくはふ(爆発)はしない」

「し、してない! 少し周りに飛び散っただけ!」


 ぁ、吹きこぼれたとかそんな感じかな?

 それだったらまぁ、火を見てなかったのはダメだけど、まぁあり得るかなぁ……。


「アキ、たぶん違う」

「ん?」


 聞こえた声に思考をやめれば、顔だけ僕の方を向いたラミナさんが視界に入る。

 どうやら、口を塞いでいたハスタさんの両手を、手首を掴むようにして両手で引き剥がしたみたいだ。

 そんな彼女は、変わらない無表情のまま口を開いた。


「豆腐が破裂して、キッチンが黄色くなった」

「……え?」

「豆腐が破裂して、キッチンが黄色くなった」


 横で、わーぎゃー叫んでるハスタさんの声が少し気になったけど、ラミナさんは同じ内容で2回言ってくれた。

 けど……、豆腐が破裂して、キッチンが黄色くなった……?

 お味噌汁って豆腐がはじける要素、あったっけ……?


「あの……ハスタさん?」

「うぅ……。聞かないでぇ……」

「姉さん。今、料理禁止」

「そ、そうなんだ」

「解除は未定」


 おおう……、それはなんというか……。

 言葉に詰まった僕は、うなだれてるハスタさんから、目をそらすことしか出来ない。


「え、えーと……そうだ。2人は今週末のイベントどうするの?」


 とりあえず、この話題を変えよう……と思って口を開けば、出てくるのはイベントの事。

 正直、出会ったばかりだし、共通の話題も無いしね……。


「やる」

「あ、そうなんだ。どんなイベントなんだろうね」

「わからない。けど、やれるだけやる」

「でも、ゲームを始めてすぐイベントって、結構大変だよね。慣れてもないだろうし」


 戦闘に関してもだけど、アイテムや装備だって、始めてすぐじゃ知らないことばかりだろうし……。

 そう思いながらラミナさんの方を見れば、特に気にした感じもなく……。


「……姉さんがいるから。大丈夫」


 そう言って、口元を少しだけ持ち上げた。


「そっか……」

「らみなぁ……っ! お姉ちゃ……んぶびっ!?」

「姉さん。落ち着いて」


 姉妹の信頼関係に、ちょっとほっこりした僕の目の前で、ハスタさんが感動したようにラミナさんに抱きついた。

 いや、抱きつこうとして、ラミナさんの腕にある盾でガードされていた。

 さっきの戦闘も、攻撃を捌くのが上手いなぁ……と思ってたけど、今回も綺麗に顔に盾を当ててる……。

 ……ハスタさん、大丈夫かな?


「うぅ……、妹がお姉ちゃんに優しくない……」

「姉さん。自業自得」

「まぁ、そうだね……」


 こればっかりはフォローのしようがない……。

 でも、ラミナさんが手慣れてる感じだし、普段からこうなのかもしれない?


「……アキ。ポーション」

「ん? ポーションがどうかした?」

「さっきのポーション、売ってほしい」

「さっきのって……、アルペ味のポーション?」

「そう」


 相変わらずの無表情だけど、売ってほしいって言ったときに、一瞬ハスタさんの方を見た気がする。

 見間違えじゃなければ、たぶんハスタさんのために欲しいってことなんだろうなぁ……。


「売るのは別に良いんだけど……。アレって本来のポーションに色々手を加えて作ってるから……。結構高いよ?」

「う……」

「材料だけでも、薬草以外に2種類使ってるし、作業も増えるから……、安くしても普通のポーションの倍かな」

「……そう」


 あ、明らかにしょんぼりしちゃってる……。

 無表情でも、声のトーンとかで結構わかるもんだね……。

 んー、でもどうしようかなぁ……、売りたくないわけじゃないんだけど……。


(アキ様)

(ん? なに?)

(その、材料をおふたりに集めてもらうとかはどうでしょうか……?)

(んー……、まぁお金にはならないけど……。別に今、困ってるわけじゃないしね。そうしよっか)


 そんな風に結論を付け、僕はわざとらしく咳払いして口を開いた。


「ごほん。あー、えっと……作らないってことはないよ?」

「え?」

「その……材料を教えるから、露店で買ったり、採取したりして集めてくれれば作るよ」


 その言葉に、しょんぼりしていたラミナさんが、顔を少しだけ僕の方に向ける。

 それを見て、僕はもう一言付け足すことにした。


「それなら今回に限り、お金は取らない。で、どう?」


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