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111. ありえた可能性

「それでトーマ君、なんでスミスさんを僕に?」


 あの後、空気を感じ取ってくれたのか、トーマ君がとりなしてくれたおかげで、僕とスミスさんの関係は見た目上は普通になった。

 というか、普通になっていて欲しい……。

まぁ、そんなこんなで工房から場所を移し、今はあの兎肉を出してくれる食堂に来ている。


「ん? あぁ、まあ……ほら、今度のイベントにやな?」

「イベント? そういえば聞こうと思ってたんだけど、トーマ君は参加する予定なの?」


 問いかけつつ、こんがりと焼かれた兎の肉へかぶりいた。

 少し焦げ目がつく程度にパリッと焼けた表面を破れば、ジューシーな肉汁があふれ出てくる。

 それを少しでも堪能するように、大きく噛み千切り、咀嚼していく。


 ちょっと行儀は悪いけど……、いいよね?

 周りを見ても、みんな同じような食べ方してるし……。


「俺は一応参加する気やで。つーてもこいつと一緒に組む予定やけど」

「スミスさんと?」

「えぇ、俺だけじゃ戦闘になった時に心許ないんで、トーマに手伝って貰おうかと。アキさんも一緒にどうですか?」


 トーマ君の説明をスミスさんが引きつぎ、さらに僕を誘ってくれる。

 嬉しいんだけど、その……先約があるから……。


「えっと、僕はアルさんのパーティーメンバーの方に一緒にやろうって誘われてるんだけど……」

「あぁ、ジンから聞いたぞ。俺としては別に構わない」


 僕がアルさんに視線を送ると、それに気づいてくれたアルさんが言葉を引きついでくれる。

 ジンさん……、ちゃんと伝えておいてくれたんだ……。


「ただ、もしトーマ達が良ければなんだが……。同盟を組まないか?」

「あ、そういえばジンさんがそっちでも良いよって言ってましたね」

「あぁ。同盟なら合計で10人まで一緒にイベントに参加できるからな。俺のパーティーが俺含めて4人、アキさん、トーマ、それにスミスさんを含めても7人だ」


 アルさんがみんなにわかりやすく、指を折りながら数えてくれる。

 トーマ君もスミスさんも、数に含まれるのを特に気にしてないってことは、一緒で良いってことなんだろう。


「ほぅ……そんなら、あと3人までいけるってことやな? 他に誘いたいやつ、誰かおるか?」


 多分このメンバーで一番顔が広いのはトーマ君。

 けど、その彼がこうやって振ってくるってことは、彼は特にいないってことなんだろうな……。


「スミスさんは誰かいます?」

「いえ、俺は特に。基本的に工房に籠もってばっかりで、そんなに知り合いがいないんですよ」

「ま、やから今回は俺がサポートしたろうかと思ってな」

「なるほど……」


 確かに……。

 僕も、初めてログインした日にアルさんが話しかけてくれなかったら、ジンさんやリアさん、ティキさんとは出会ってなかっただろうし……。

 トーマ君に関しても、兎の時に話しかけてくれなかったら……。

 こうやって考えると、僕から話しかけた人っていないんじゃないかな?

 シルフだってシルフからアプローチがあったわけだし……。


「あれ? そういう事なら、トーマ君とスミスさんは何で知り合いになったの?」

「あー……、それは……何と言いますか……」

「また今度話すわ。それで、アキは誰かおらんのか? 誘いたいやつ」


 む、これは誤魔化されたぞ……。

 でもまぁ、今度教えてくれるって事だし、気にしなくていいかな。


「僕は何人か……。カナエさんとキャロさんと……、あとオリオンさんって人かな?」

「ふむ、それでちょうど10人だな……。キャロさんは、キャロラインさんか?」

「あ、ですです」

「なら、彼女はこっちで誘おう。リアにでも頼んでみるよ」


 そっか……、リアさんに教えてもらった人だし、アルさんが知っててもおかしくないよね。

 それなら、僕の方でカナエさんとオリオンさんかな?


「カナエさんと、オリオンさんはちょうどお伝えしたい事もあったので、僕が誘ってみてもいいですか?」

「あぁ、頼む。それで誘い終わったらまた連絡をくれ。そのときに同盟の設定をしようか」


 あれ?

 それって僕がもう一つのパーティーのリーダーをやるってこと?

 さすがにそれは……。


「えっと……、トーマ君……あの」

「アキなら大丈夫やろ。任せるわー」

「え、えぇ……」

「ということは、俺もアキさんのパーティーに入れば良いと言うことですね! アキさん、よろしくお願いします!」

「ちょ、スミスさんまで! まって、僕リーダーなんて!」


 うろたえる僕に、トーマ君は意地悪そうな笑みを見せ、フォークを置いて席を立つ。

 気付いてお皿を見てみれば、すでに食べ終わってたみたいだ。


「んじゃ、俺はこの後いくところあっから」

「ぇ、ちょっと! トーマ君!?」

「勘定は置いとるから。そんじゃ、またパーティー組む時はよろしゅう!」


 有無を言わさない流れでするりと、店の中を抜けていく。

 それから数秒もしないうちに、僕の視界から彼の姿は消えてしまっていた。


「あいつは相変わらずだな……」

「はぁ……。トーマ君らしいと言えばトーマ君らしいんですけどね……」

「あはは……」


 スミスさんの乾いた笑いを聞いていれば、彼も同意見なのがよく分かった。

 仕方ない……、半ばムリヤリだけど、リーダー……やってみるかなぁ……。


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スタプリ!―舞台の上のスタァライトプリンセス
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