(登場人物・世界観紹介)
【注意】このページは物語に登場する人物、世界観をわかり易くまとめたものです。こちらを飛ばしてお読み頂いても、登場人物・ストーリーの理解に何ら支障はございません。この注意文を理解できた方のみ以降の本文をお読み下さい。
《この物語はフィクションであり、登場する人物名、団体名等は実在のものとは関係ありません。》
◆登場人物
【糸川 実】
屋久島大学附属志戸子学園高等部の一年生。
ある理由から登校拒否をしていたところ、扉を破って押し入ってきたDOLL桜に無理やり学園に連れて来られ、探偵部員にさせられる。
5年前に自分の命を救ってくれたDOLL、XP-N-001の行方を探している。
【糸川 遙】
実の姉。研究者である両親の仕事の都合で、幼い頃から実とともに各地を転々とし、帰りが遅い親の代わりに実の世話をしてきた。
趣味はラクロス。料理の好みがどこか年寄り臭い。鍋奉行。
【ND-623 桜】
志戸子学園高等部一年生。中島技研製第3世代型DOLL。名探偵を自称し、誰もが就職や進学に役立つ部活動しかしない志戸子学園において、活動内容のよくわからない探偵部を立ち上げようとするが、部員数が足りないため公認されず、登校拒否をしていた実に目を付けた。DOLLとしては規格外の傍若無人な性格で、実を振り回す。残念ながら自身には名探偵の素質は全く無いが、アガサ・クリスティ作品のファンで、教育テレビで放送されているアニメ『名探偵ポアロ』を名作だと絶賛し、どんな時でも視聴を欠かさない。
【ND-121-2 朝菜】
志戸子学園高等部二年生。中島技研製第2世代型DOLL。学園創立時からの歴史を持つ園芸部の部長を務めるが、頑固で融通がきかない性格が災いして活動内容がより先進的な生物部に部員を奪われ、顧問の教諭も病気で休職中のため、廃部寸前の危機にある。挙句、桜に部室の一角を占拠された上、部を乗っ取られそうになるなど、不幸続き。
学園の生徒が環境技術の研究成果を発表する志戸子エコプロダクツに、二酸化炭素蓄積効率を高めた遺伝子組み換え植物“ユグドラシル”を出展して起死回生をはかろうとするが・・・・・・。
【ND-122-2 夕菜】
志戸子学園高等部二年生。中島技研製第2世代型DOLL。朝菜をサポートする姉妹機として製造された、姉思いのしっかり者。
真面目な性格が災いして、人知れず思いつめてしまうことも。かつては園芸部の一員だった瑠璃が朝菜と対立していることに心を痛めている。
【MD-188 瑠璃】
志戸子学園高等部二年生。DOLLメーカー国内最大手のミサキドール社が、グループ総帥の令嬢として金に糸目をつけずに製作した最高級DOLL。量産型のDOLLとは桁外れの演算能力を持ち、将来の指導者に相応しいカリスマ性を備えたクールなビジネスウーマン。その聡明さから学内の信望は厚く、生徒会長を務めており、卒業後はミサキグループ傘下企業の経営を任されることが決まっている。
かつて園芸部で朝菜・夕菜と共に活動していたが、朝菜との路線対立から園芸部を離れ、生物部に移った。在来植物に寄生して細胞レベルで変性を促し、繁殖力と二酸化炭素の吸収効率を格段にアップさせる夢の細菌“ミスティルテイン”の開発チームを率いており、日本政府が進めるタクラマカン砂漠緑化支援プロジェクトへの参入を目指している。効率と実益を重んじ既成概念の打破を目指す科学技術の信奉者で、緑化実験都市に代表される従来の環境保護の取り組みを“パッシブ・エコロジー”と呼んで軽蔑し、自分の専門分野であるバイオテクノロジーによって自然界のシステムそのものに踏み込んだ“アクティブ・エコロジー”が世界を救うと提唱している。
【MD-233 黒曜石】
ミサキドール社製DOLLで、生物部の副部長。生徒会でも風紀担当役員を務め、学園内で瑠璃の腹心とされている。
【ND-113-2 蓮華】
志戸子学園高等部三年生。中島技研製第2世代型DOLL。学園において部活動の許認可を司る管理委員会の委員長で、管弦楽部の部長でもある。
世界的に有名な楽器会社の発注で、過去の著名なヴァイオリニスト多数のデータがプログラムされ、天才的なヴァイオリンの演奏能力を誇る。卒業後は海外の交響楽団から招聘されることが確実だといわれている。
自身の能力を中島技研製最優秀と鼻にかけている。生徒会長選挙でミサキドール製の瑠璃に敗北しており、生徒会の運営を巡って瑠璃と水面下で対立している。
【諏訪之瀬 小鳥】
志戸子学園の音楽教諭。管弦楽部の顧問を務めている。
蓮華に心酔しており、教え子と教師を越えた関係になっている。
【ND-831-4 琥珀】
志戸子学園高等部一年生。中島技研製第4世代型DOLL。農学部に所属し、プラントセラーという屋内菜園で野菜や果物を柏葉巴と一緒に育てている。
第4世代型DOLLから実装されたバイオ燃料電池と食物カロリー変換システムによって、ヒトと変わらない食生活が可能。
子どもっぽくて甘えん坊な性格。
【御所浦 深月】
志戸子学園高等部一年生、クラス委員。実とは中等部からの知り合いで、登校拒否になった実を心配して電話をかけたりノートのコピーを持って家まで行こうとするが、本人からは迷惑がられていた。
中等部時代は剣道部に入っていたが、高等部では卒業後の進学・就職を考え、農学部で活動している。琥珀と仲が良い。
【MD-131 蛍】
ミサキグループから屋久島大学に派遣され、助教授を務めるDOLL。
旧式だが未だに高い性能を誇るDOLLで、ミサキグループの傘下企業ミサキバイオニクス社が出資した屋久島生命工学研究所の主任を任されており、屋久島大に附属する志戸子学園高等部にも生物の講師で招かれて、生物部の顧問として瑠璃をサポートしている。
DOLLとして教鞭を執るのは世界で彼女が初めてであり、学園のDOLL生徒達の憧れの的で学園内にはファンクラブもある。
冗談か本気かわからない奇妙な仮説を披露するなど変人っぽいところもあるが、年長者らしい優しさと茶目っ気をあわせもった皆の頼れるお姉さんで、教え子達の人生相談に付き合うなど面倒見も良い。
◆キーワード
【緑化実験都市】
九州南部、大隅半島沖の屋久島に、自然との共生をテーマに建設された計画都市。
2040年に予定されている国際排出権取引市場の始動を見据えた環境技術の研究開発及び技術・人材の集積を目的として、様々な法規制が緩和された総合特区に指定され、多くの国際機関や企業、研究機関が拠点を構えており、約12万人の人口の8割以上を研究者と学生が占める。
都市で使用される電力は再生可能エネルギーによって賄われており、建物も環境に配慮した構造で屋上・壁面が緑化されるなど都市全体で徹底した低炭素化がはかられ、市民が使用する水が循環利用されるなど環境負荷も低減されている。生活空間での実証実験を兼ねて世界最先端のエコテクノロジーが随所に運用されており、都市の中と外とでは10年の技術格差があるとさえ言われている。
【DOLL】
正式にはDiversified Optimal Learning Labor(多角的高度学習作業機械)。個性や感情を発現させる演算素子イザナミウムによって駆動する人型機械。
高度な自己学習能力によって、従来の日本のロボット技術でも越えられない壁だった自律駆動に要するプログラミングの課題を解決し、日本など少子高齢化に歯止めがかからない先進国で、社会の新たな担い手になっている。
感情を発現させるのが何故か女性型人格に限られるため、最近ではDiversified Optimal Learning Ladyと表記されることが増えている。
【イザナミウム】
西暦2020年に日本の探査機“はやぶさⅡ”が小惑星から持ち帰った砂に含まれていた未知の元素で、半導体素子の原料。DOLLの電子頭脳に使用されることで疑似人格を獲得する。
【DOLL条約】
正式には「自律人型機械の人格に関する条約」。日本やEUなど先進国が批准している。
DOLLへの人権付与を義務付けており、日本では人工知性特例法によって参政権など一部を除く広範な権利をDOLLに与えている。
条約参加国には特許や情報の共有が緩和される恩恵があり、アメリカも参加を目指しているが、国内の宗教的反発に阻まれ実現していない。
【西南事変】
西暦2022年、当時日本領だった西南諸島の領有を巡る対立から、ユーラシア最大の軍事大国である蒙古連邦が日本に武力進攻した事件。
日本の同盟国であるアメリカは当時中東情勢に忙殺され、また財政難による軍縮で既に二正面作戦能力を失っており、蒙古連邦はその隙をついた。
戦闘は蒙古連邦軍の奇襲による離島上陸と自衛隊の指揮拠点への空爆によって始まり、専守防衛に徹したため対応が後手に回った日本に対して終始蒙古連邦の優勢で、一方的な攻撃が行われた。
日本の南西部全域が壊滅的な被害を受け、事実上の無差別爆撃で膨大な数の民間人が死傷した。
戦後、勝利した蒙古連邦は西太平洋の海上優勢を掌握し、アメリカの影響力は後退、日本は領土を割譲するなど蒙古連邦への屈従を強いられた。
世界遺産だった屋久島も、種子島宇宙センターを攻略しようとする蒙古連邦軍が橋頭保確保のため空襲、気化爆弾を投下したため島の大半が焼失し、戦後の復興計画として緑化実験都市構想が生まれた。
また、蒙古連邦軍の侵攻に対して、当時ロボット開発・実証実験特区に指定されていた福岡や北九州で試作機の運用が始まっていたDOLLの一部が、人間を守るため自分達の意思で立ち上がり、各地で市民の救助や蒙古連邦軍への抵抗を繰り広げた。
【志戸子学園】
屋久島大学附属志戸子学園。屋久島大学とミサキドール社の産学合同で緑化実験都市に設立され、ミサキグループの総帥が理事に名を連ねている。
中等部と高等部に分かれているが、このうち実や桜が在籍している高等部は世界で初めてヒトとDOLLの共学制が取り入れられ、独自の教育プログラムが設けられている。
学生の高度な自治が認められており、特に部活動は大学のゼミや研究室に匹敵する位置付けで、卒業に必要な単位となる他、部活動での成果が進学・就職を左右する。