べ、別にうっかりときめいてなんか無いんだったら!
舌を出してあかんべえ。
フンだ、あんたなんか嫌いなんだから!
「お前、舌にカビ生えてるぞ」
残念なものを見る目をされた。カッと頬に血が上る。馬鹿にしたつもりが逆に哀れまれるとか。
「カビなんて生えるわけ無いでしょ!?」
「健康な人間の口の中にもカビが居る。風邪やストレスで免疫が一時落ちると増殖して真っ白になるんだ」
嘘でしょ、嘘よね!?
ショックを受けながら手鏡で見てみると、成る程、舌が白い。何これ。
「大丈夫だ、カビだから歯ブラシとかで取れる」
涙目のあたしの肩が掴まれた。
「え、ちょ、何?」
背が高い奴に覗き込まれるのが怖いから。だから肩が竦むし目をそらしちゃうのよ。べ、別に肩を掴まれたくらいでときめいてなんかない。だから静まれ心臓!
「悩みがあるなら力になるぞ」
「哀れみの目を向けるなあ!」
パグッと振り上げた拳がアゴを捕らえた。コイツのこういうとこがヤダ!
気になってる相手にこんな仕打ち受ける方がストレス溜まるに決まってるだろう!?
本当、何であたしこんな奴好きなのかな!!
違うんだからね!? 優しい声にうっかりときめいてなんか無いんだったら!