女は化ける
<<巧サイド>>
「世界の矯正?」
俺は神田を見た。神田は身じろぎせずに俺の目を見ていた。
「うん。世界を正すんだ。それは僕たちにしかできないし、僕たちにはその力がある」
「過信だな。能力なんてものは身体的特徴のひとつに過ぎない。それで差別される筋合いはないが、それでえばってどうする」
「僕たちの能力は特異だよ。僕がその気になれば今から1時間以内にこの国の重要人物を殺してくることも出来るし、それは君にも可能だろ? それに、もし美異がその気になれば地球の地軸を狂わすことも、月を落とすことも可能だろうね。これは、自分たちの都合に合わせて世界を狂わせている連中には脅威だろうね」
「そういえば新橋は白金にいたことがあったらしいな。知り合いか?」
神田は噴き出す。
「知り合いも何も……、彼女のことを君は知らないようだね。彼女の称号は『世界』。僕と同じ、大アルカナの称号を持つ白金最高幹部のひとりだよ」
「新橋、が?」
あの新橋が?
俺は新橋のことを考える。なぜかひつまぶしをうまそうに食べているところを思い出してしまった。
自然に笑みが浮かぶ。
「ああ、そうだったのか」
「ショックだったかな?彼女が僕たちの味方で」
「まさか。女の過去にこだわってどうするんだ? 俺だって思い出したくない、嫌な奴だったときの過去はあるしな」
神田は口に微笑を浮かべた。
「うん、それは真理だね。それに、女ってのは化けるからねえ」
「ああ、そうだな。怖いなあ」
俺と神田は逸れた話で笑いあった。
「それじゃあそろそろ返事を聞こうかな。君も、この世界の歪みは理解できるだろう?」
「その前に、お前たち白金はなにがしたいんだ?」
神田は、聞かれるのを待っていたように、それを言った。
「12番戦争の再開」