留美の期待、惣一の期待
作戦室に入ってきたゲルトルートを見て、惣一は指差して笑った。
「あっはは、ゲルトルート!その腕、『アーペレジーナ』にやられたんだね!」
「ええ、見事にやられたわね」
ゲルトルートは、不愉快そうに髪を掴んで引き摺ってきた久菜を、気絶している芳樹の隣に転がした。
ゲルトルートは変色した腕を惣一に伸ばした。
惣一は真蛇を一閃した。
ゲルトルートはわずかに眉を寄せ、変色した腕は床に落ちる。
ゲルトルートは、自身の腕だったものを掴み上げるとゴミ箱に捨てた。
騒がしい足音が近づいてくる。留美と明彦だ。
「くーちゃん!」
留美は苦しそうに寝ている久菜に寄った。
明彦はすぐに治療にかかる。
留美は、挑むように惣一とゲルトルートを見上げた。
惣一は思わず苦笑した。
この少女は白金最高幹部である『愚者』と『正義』を2人まとめて相手にするつもりらしい。
「くーちゃんをいじめたのは誰?」
「ああ、ごめんごめん。そんなつもりじゃなかったんだ。ま、こっちも『ブレード』をやられているわけだけどね」
「君?」
「おっと、いや、僕じゃないよ」
それを聞くと留美はゲルトルートの作り物めいた銀色の瞳を睨んだ。
それを惣一は遮る。
「まあまあ、仲良くしようよ。目的が達成できたら大人しく帰るから、さ」
「目的?」
留美は惣一を見上げた。
惣一は微笑みを持って留美に答える。
「僕の目的は秋葉巧くんだよ。彼に興味があってね」
「たくみ、くん?」
留美は一瞬きょとんとした後、八重歯を見せて笑った。
「言っておくけど、巧くんははやいよ~!」
惣一はたまらず笑い出した。
この少女は自分が白金最高幹部のひとり、『愚者』を相手にでそう言ったのだ。
惣一は、胸に期待を膨らませて答えた。
「ああ、知っているよ。うん、すごく楽しみだ!」
最近短いのが続いて申し訳ありません。