VSマービン
1人目と2人目を回し、地に叩きつける。3人目の腕を取り関節を決めて振り回し、向かってくる4人目にぶつけた。騎士の腕の折れる感触が伝わる。
「巧くん、君は相変わらず出し惜しむねえ。早く能力を使ったらどうだい?」
「この程度で? 必要ないな」
俺は斬り込んでくる騎士から剣を奪い、マービンに投げつけた。マービンは側にいた騎士を前に突き飛ばし、盾にする。騎士は胸に剣を突き立て、絶命した。
「ああ、可哀相に。君のせいで死んじゃったよ」
「盾にしたおまえが言うな」
「そうじゃないんだよ。そもそも君がいなければ私も、死んでいる彼らもここに来ることすらなかった。だから彼らが死んだのは君のせいだ。君のせいで彼らは死んだんだよ」
「おまえらマニゴルドと付き合うのは正直疲れるよ」
「まあ、そう言わないでよ、巧くん。ちょっと趣向を凝らしたからさ」
マービンの横から重厚な鎧をまとった騎士が3人現れる。
「彼らの階級はアンゲロイだけど、着ている鎧が特殊でね。君でも楽しめるんじゃないかな」
アンゲロイはマニゴルドの最下級、第9位。ちなみに有象無象の騎士たちは階位外となる。3人の騎士は足元に噴煙をあげ始める。俺は軽く腰を落とし、敵の攻撃に備えた。
それは、突然来た。
予兆は一瞬、重騎士の足がわずかに浮いた瞬間、俺は横っ飛びに飛んだ。俺の今まで居た場所を重騎士は一斉に通り過ぎる。
「どうだい、マニゴルドの最新ロボットスーツは? 君のふざけた能力に合わせて高速機動ユニットだよ」
重騎士は再び俺に突撃するために足元に噴煙を上げる。
ま、この程度ならなんとかなるか。
俺は腰を落として重騎士に構えをとる。重騎士の足が浮く。
俺は、ふっと息を吐いた。
重騎士は吹っ飛んだ。
ひとりは灯篭に激突し、ひとりは地面を跳ねる。最後のひとりは仲間の中に突っ込み、数人を下敷きにして動かなくなった。
「……なにをしたのかな?」
「別に、突っ込んでくる重騎士をいなしただけだよ。ただ速いだけの直線的な動きで武道経験者をなんとかできると思っているわけじゃないだろ? しかも、速く動けても中身の人間の反射神経なんてたかが知れてる。少しバランスを崩しただけでこれだからな」
マービンは舌打ちをして、手を上げた。俺を囲んでいる全ての騎士が殺気立った。
俺は落ちている剣を拾う。
「邪悪なるストゥレーガ。遊びは終わりだ。滅ぼさせてもらう!」
「口調が変わったな。ま、いいだろう。まとめて相手させてもらうよ」
俺は剣を担いだ。心音を数える。
「それじゃあ見せてやるよ。俺の能力、時伏せをな!」
マービンが手を振り下ろす。
秋葉邸内にいる100を超える騎士たちが一斉に俺ひとりに向かってくる。
俺は時伏せを発動した。