表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/72

恵比寿家~宴会後~

 宴会は9時には終わった。明日が月次祭なこともあり、早々に切り上げたのだ。

 俺は風呂をご馳走になり、10時にはあてがわれた客間に入った。

 持ってきた文庫本を読み、眠気を覚えた頃に恵比寿は来た。

「秋葉、起きてる?」

「ああ。入れよ」

 恵比寿は障子を開け、客間に入ってきた。

 微かに甘い香りが漂う。恵比寿はどうやらお香をまとっているようだ。

「お疲れさん。なんか大変だったな」

「まあね。私もここまで人が集まるなんて思わなかったわ。私が小学6年生のときに一緒に登校した1年生のことなんて覚えてるわけないわよ」

「確か、5年ぶりの帰郷だったっけ?」

「ええ。あんたに会ったのはここを出た翌年だから、付き合いもけっこう長くなってきたわねえ」

 恵比寿との付き合いは俺が七草学園に転入してからだからもう4年になる。

「それなりに色々あったわね。命を助けられたのも1度や2度じゃないし……」

 同じかそれ以上に俺も助けられているが、恥ずかしいから口には出さない。恵比寿は、俺にとっては背中を任せられる奴だ。

「そうだぞ、感謝しておけ。おまえの欠点は俺を尊敬していないところだな」

「あんたはまずその悪言を直しなさい!」

 それを最後に恵比寿は黙る。俺は恵比寿が話すのを待った。

「その……、ありがとうね。強引にでも私をここに連れてきてくれなかったら、多分私は家族と和解できなかったから」

「礼を言われることでもないよ。俺には俺の目的があったわけだしな」

「目的?なによ」

「巫女さんを見ること。それと……」

「それと?」

「おまえを困らせること」

「馬鹿!」

「明日もう一泊したらどうだ?ご家族も喜ぶだろう?」

「自分だけ逃げようったってそうはいかないわよ。明日はあんたの実家に行くんだから」

「うちはそんな楽しいもんじゃないんだけどなあ」

 俺と恵比寿は笑った。

「しかし、正志も来ればよかったのにな」

「原?なんで原が急に出てくるのよ?」

「……恵比寿、正志のことどう思う?」

「??同じ寮生でしょ?」

 完全に脈なし、か。がんばれよ、正志。

 そのまま恵比寿としばらく歓談した後、俺はあくびをした。久しぶりの長旅で疲れていたのかもしれない。

「さて、俺はそろそろ寝るぞ」

「あ、もうこんな時間ね」

「一緒に寝てくか?」

 恵比寿はなぜか黙り、心なしか身体を寄せてきた。恵比寿の甘い体臭が香る。俺は2度目のあくびをした後、言った。

「まさか夜這いに来たわけでもないんだろ。おまえも明日に備えて早く寝ろよ」

 恵比寿は一瞬驚いた顔をして、下を向いて表情を隠した。

「……そうね。デリカシーのない」

?女ってのはよくわからない思考をする。恵比寿は障子を開けた。

「じゃあね、秋葉。また明日」

「ああ、おやすみ」

 俺は恵比寿が障子を閉めると同時に眠りに落ちた。


申し訳ありませんが、明日(1月31日)はお休みです。というのは、次回投稿は、カタルシスのない人死にがありますので・・・。なるべく月曜日は鬱にならないものを掲載したいという、どぶねずみの勝手な思惑からですが、どうかご了承ください。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ