恵比寿家~宴会!~
夕飯はなにか盛大な宴会といった感じだった。
100人以上の来客は当然母屋に入りきらず、境内まで使ってのちょっとした祭りになっていた。
料理は漁村らしく新鮮な刺身や寿司が並び、新橋は俺の横でおいしそうにヒラメを食べている。恵比寿はというと忙しそうに動き回っている。
まあ、ここにいる連中全員が恵比寿目当てだからなあ。
「洋子!実は昔からずっと好きだったんだ!付き合ってくれ!」
「はあ?とりあえず3回くらい死ねば?そうね、4回目に美男子で金持ちに生まれていたら考えてあげる」
同級生だったのだろう振られた男は泣きながら走っていった。境内が笑い声に包まれる。ご愁傷さま。
「それで、巧さんとおねえの馴れ初めってどんな感じだったんですか?」
「馴れ初めって、変な言葉使うね」
新橋の隣にいる由紀ちゃんが聞いてくる。
由紀ちゃんと新橋はいつの間にか打ち解けていた。人懐こい由紀ちゃんが新橋にじゃれているって感じだが。
「まあ、俺も今の学校に転入した口だからね。そんであいつも転校組で同じクラスだったから世話になったってのが最初かな」
「それで、どっちから告白したんですか?」
なぜかここの連中は俺をそういう目で見ている。と、いうよりは俺と恵比寿をくっつけたがっているように見える。
「そりゃもちろん恵比寿からだよ。いきなり校舎裏に呼び出されてね、おっと」
いきなり飛んできたビール瓶を受け止める。
「あ~きばー!」
「恵比寿、ビール瓶はさすがに危ないだろ?」
「あんたねえ!そういうことは言うんじゃないわよ!」
「なんだよ。冗談だろ?」
「ここでは冗談では済まないのよ!ちょっとでも口走ったらいつの間にか3人目の子供はいつ生まれるんだってなことになるんだからね!」
「……結婚飛ばしていきなり出産かよ。しかも3人目!」
ローカルネットワークか。怖いな、確かに。
「ねえねえみことちゃん」
ふと見ると由紀ちゃんは俺から離れ、新橋にまとわり付いていた。妹ができた感じなのだろうか、新橋は嬉しそうにしている。恵比寿はというと俺の隣に腰を下ろして刺身を小皿に取っていた。客の対応はいいのか?
「東京の学校って楽しい?」
新橋は、俺と恵比寿を見て、気持ちのいい笑顔で言った。
「ええ。とっても楽しいですよ。私は今が、今の生活が大好きなんです♪」
俺は恵比寿を見た。恵比寿も俺を見ている。
たぶん、俺も同じ顔をしているだろう、恵比寿は、気持ちのいい微笑を浮かべていた。
今話が短いのと相まって、今日は21時にもう一話投稿いたします。