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BBQ始まる

投稿遅れて申し訳ありませぬ! 単純な、作者の予約投稿ミスです。・・・寝る前に確認してよかった。

「今世紀初頭、アメリカ発の経済危機、今にまで続くエネルギー問題や自然破壊に経済格差問題。そういった山積みの問題を抱えて行き詰まりを見せはじめたときに、この疫病、ゴールドのパンデミックは起こったわけだけど……」


 七草学園の土曜日は午前中で終わりになる。

 うちのクラスの最後は御茶ノ水先生の世界史なので、まじめに授業を聞いている俺としては浮き足立ったような周りの空気は正直うざい。

「ここで一種のパラダイムシフトが起こるわけだな。ゴールドの前では資本主義社会における正義、お金は無力だったわけで、そこで宗教への回帰運動が起こるんだ。化学でもお金でも自らを守ることはできない。形而上の救いは同じく形而上の神によってもたらされると当時の人々は考えたわけだ。それが宗教の持つ穢れとしての悪魔狩りに繋がって来るんだけど……と、そろそろ時間だ」

 御茶ノ水先生がそう言うと同時に授業終了のチャイムが鳴る。

 恵比寿の号令で授業は終わり、御茶ノ水先生は教室から出て行った。

「秋葉、どうする? すぐに河辺公園に行く?」

「いや、俺は正志とちょっと寄っていくところがあるから先に行ってろよ」

 俺は恵比寿と別れて正志と一緒に学校を出た。

「そういえば来週は3連休だな。正志はどうするんだ?」

「俺は実家に帰るよ」

 正志はストゥレーガにしては珍しく良好な家族関係を維持している。


 黒金に所属するストゥレーガは全世界で約10000人だ。

 その内、日本では98人ほどだが、ここ、憶良市には14人がいる。

 内訳は高校に俺たち7人に中等部と初等部に合わせて3人。大学に3人と社会人に1人だ。

 1地域に14人も集まって、しかも飯田恵がこの地域から出たことを不審に思うかもしれない。

 だが、タネを明かせば不思議でもなんでもなく、憶良市に若いストゥレーガとその可能性がある人間を集めている。よく言えば守られている、悪く言うなら隔離しているのだ。

 狙撃などをする際には、狙撃するポイントと、タイミングがいる。ここ、憶良市では絶好のポイントは全てチェックされており、マニゴルドがそこを使うことはできないようになっている。そういう意味では守られているが、マニゴルドの襲撃時に一般人の被害を最低限に抑えるためや、ストゥレーガを一所に集めて、管理しやすくしているという意味では隔離されているってこと。

 少なくとも隔離の必要があると政府に決められているストゥレーガは、言うまでもなくマイノリティであり、異端だ。

 家族内からも異端者を出したとして排斥される場合は、実はけっこう多いのだ。そんな中で正志の良好な家族関係は稀有だった。

「俺はどうするかなあ。寝て過ごすのも芸がないよな」

「おまえも実家に帰ったらどうだ?」

「冗談! 俺にはそれは罰ゲームだよ」

 俺たちはコンビニで飲み物を買って河辺公園に向かう。

「そうだなあ。また神社巡りでもするかなあ」

「爺臭い趣味だな」

「うるせえよ。この広い地球の上に巫女さんが嫌いな奴がひとりでもいるか?」

「俺はどうでもいい」

 そんなことを話していると河辺公園に着いた。

 駐車場には見慣れたバンが止まっている。運転席からは芳樹さんが降りてきた。格好は当然メイド服だ。

「ああ、巧、正志。いいところに来た。悪いが荷物運びを手伝ってくれ」

「これは、また大量に用意しましたね」

俺たちは両手にクーラーボックスを2つずつ持って川辺に向かった。川辺にはすでに全員が揃っていて、用意もできていた。

「遅いよ~。待っていたんだからね」

「すいません。遅れたみたいですね」

俺はクーラーボックスを置いた。

「よし、それじゃあ私は帰る。終わったら荷物の回収に来るから連絡をくれ」

「あれ、芳樹さん、帰っちゃうんですか?」

「ああ。これでも仕事中でね」

「そんなあ。芳樹も一緒にやろうよお」

 岡地先輩が芳樹さんの右手にぶら下がる。芳樹さんの右肩が下がった。岡地先輩は見た目以上に重い。まあ、あんだけ食うからなあ。

「いや、しかし、私がいたら邪魔だろう?」

「そんなことないよう」

「芳樹さん。俺も飯食べたら部活に行くから。昼飯食う時間くらいは取れるだろ?」

 渋谷先輩にそう言われ、芳樹さんは困った顔をして馬場先輩を見た。

 全員の視線が馬場先輩に向く。

 馬場先輩は軽くため息を吐いた。

「……芳樹、一緒に食べていきなさい」

 芳樹さんの顔がにんまりした笑顔に変わった。案外わかりやすい人だ。

「そうか、それじゃあ邪魔をしようかな。あ、しまった。それなら酒がないじゃないか」

「芳樹、私たちは未成年の学生よ。お酒を飲めるわけないでしょう!」

「いやいや。私が学生のときは隠れてやったもんだぞ。それにこういう席で酒がないのはいかにも寂しいじゃないか」

 この人、俺たちの前ではよく年上ぶるが、確かまだ20代前半だ。

「あはは。芳樹さん。さすがに生徒会が昼間から川辺でお酒を飲んで騒いでいたら問題になりますよ。ね、先輩♪」

同意を求めて新橋は俺を見る。

「あ、ああ。そうだな」

俺は新橋から目を逸らした。俺と正志は買ってきた泡の出るジュースをそっとカバンの奥にしまった。


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