インタールード3
フォートフィフスに向かう峠道の途中、憶良市には運動公園がある。野球場がひとつとサッカー場がひとつ、それに1週400メートルのトラックがあるだけの広場だ。
ハイキングコースの入り口でもあるそこは休日には多少なりとも賑わうが平日の夜間には人気はなかった。
その日、たまたまそこに集まった3人が半裸の飯田恵を見つけたのは不運だった。
目的もなくただ彷徨い歩いている恵に3人は下卑た笑いを見せながら近づいた。
「ねえ、そんな格好でどうしたの?」
恵は、長い髪で覆われた顔を上げて3人を見、笑った。3人は恵の焼け爛れた顔を見て絶句した。
「ば、ばけもの!」
そう口走った1人は口に針を打ち込まれて絶命した。
逃げる2人目は針に足を絡めとられ空中に放り投げられ、首から落ちて頚椎を折る。
仲間を見捨てて逃げ出した3人目は、しかし、異様な格好の集団に阻まれる。戸惑いは一瞬、3人目は状況を理解できないまま、異様な手段の一人に首を切られて殺された。
異様な集団、マニゴルドの騎士たちは遠巻きに恵を囲む。
「……蛆虫!」
恵は針を伸ばした。騎士たちはそれを小型の銃で迎え撃った。
引き金を引くと銃は炎を撒き散らした。火炎放射器だ。
黒い針は焼け落ち、炎は恵を襲った。
恵は転げ回り、動かなくなった。
騎士たちは恵の死を確認するために、ゆっくりと包囲の輪を縮めた。
そして、全滅した。
8方に伸びた針が全ての騎士を一瞬で貫いていた。
しゅるしゅると黒い針は倒れている恵に巻き取られていく。
恵は、死体の山の中、ゆっくりと立ち上がった。