ポイント
彼女有りと彼女無しはどう違うんだろう。俺は自分の席から見比べる事にした。
行正と佑樹は彼女有りだが、そう考えて見ると女子に優しいような?
綾部…余裕が無さそう。
うーん。
「見た感じは変わんねぇなぁ。」
「なーに書いてんだ?」
佑樹にノートを取り上げられた。
「ちょっ…見んな!」
「なになに?彼女有りと彼女無しの違いねぇ。」
「教えてやろうか?」
ニマニマ笑う佑樹と行正に腹がたってきた。
「いいし!自分で追求するから。」
「シュウにはムリムリ。」
「強いて言えばポイントの稼ぎ方の違いかな。」
俺は佑樹からノートを取り返し、行正の言葉を書き込んだ。
「…で?何のポイント?」
「だから印象良く見せるポイントだよ。」
「おいおい、必死だな。俺の場合インパクトかな。彼女に他の奴らより印象を与えたみたいな。」
「ふむふむ。」
カリカリと俺はノートに書く。てか、何必死で書いてんだ俺?
「ペンを止めなーい。」
「バカバカしい。やめだやーめ。」
らしくねぇな。
「俺ら便所行くから。」「ごゆーっくり。」
そそくさといなくなる二人を疑問に思っていると、誰かに肩を叩かれた。
「やーまだ。珍しく盛り上がってたね。」
「門脇サン。」
「えー?なぜにサン付け!?」
最近昼休みに門脇が来る。寝たフリしてもバレるし、図書室に逃げても門脇は俺を見つけるんだ。
「彼女有りと無しの違いねぇ。」
「見たな?どいつもこいつも勝手に見んなよ。」
「違いなんてないよ。」
最強女子の意見か。聞くのも悪くない。
「最強女子が教えてくれんの?」
「まぁ、山田に教えるのわ勿体無いけどね。知りたい?」
ズイッと顔を近付けられ、「おう。」と反射的に後ろに顔をそらす俺。
ショックを受けもせず門脇は話を続けた。
「両想いになって付き合うって簡単じゃないんだよ。恋の神様が叶えてくれなきゃ…って何笑ってんのよ!」
「ぷっくっく…。わりぃ、門脇が顔に似合わずメルヘンな事言うから…くくっ腹いてぇ!」
「さいってー!!」
しーん。教室が静まり返って。
「は?」
「あんたなんか、一生彼女できないわよ!」
また、教室のざわめきがもとにもどる。てか、教室にいる奴ら俺が彼女出来ねぇ事に納得したのかよ。
「余計なお世話だよ。お前からスもごっ。」
「今言う?」
口を塞がれ、息が苦しい。
「ごほっ…だから女は意味分かんねぇんだよ。」
「デリカシーのないあんたに分かるはずないわね!ふん!」
昼休みなのにイライラが溜まった。くそぉ、サボりてぇ。
「綾部、サボろうぜ?」
「門脇サン睨んでるぜー。怖いからパス。」
門脇を見ると、フンと顔をそらされた。
「知るか。」
が。教室を出た瞬間、行正と佑樹につかまれ強制連行される虚しい俺。
「シューウ。これ以上はサボらせないよ。」
「奥さんも見てるし、お勉強しましょうねー。」
「誰が奥さんだ?わっかんねー。」
ふざけた佑樹を睨んで、俺はしぶしぶ着席した。
カタカタカタカタ
「シュウうるさい。」
授業中、貧乏揺すりを行正に注意された。門脇が嫌でも視界に入る。なぜなら二個前の斜め前なのだ。
「…足よ静まれー。」
「ぷっ…ちょいウケる。」
行正をちょいウケさせ、ダラダラ長い黒板の数式をへろへろな文字でうつす。
「行正ー後で写させてくりぃ。」
「珍しく写すんだ?いい進歩だね。」
テスト前しか写さない俺。なんか、急に勉強したくなった。
そして休み時間。
「シュウ…シュウ!」
ビクッと俺は目を覚ました。
「俺寝てた?」
「あぁ。爆睡してた。」
「ノート…。」
「まだ早いかなー。」
厳しい行正くんでした。