ボーイッシュ
寒くて布団から出られない。
「シュウ!」
姉貴に毛布をひっぺがされた。
「死ぬー返してくれ姉貴ー。」
「はぁ。情けない。何でそんなにナヨってんのよ。小さい頃は近所のワルガキから姉ちゃん守ってくれたじゃない。」
「うぜー。」
「なんですって!?起こしに来た姉ちゃんにウザイ?」
このやり取りで一気に目が覚めた。姉貴の前で着替える俺。
「腰パンするのはいいけど、何その蛍光色。」
「っせーな。暗闇で光んだよ。」
光らねぇけど。
「マジ?彼氏に買ってあげようかな。」
「彼氏いつ出来たんだよ。まぁ関係ねぇけど。」
「さて姉ちゃんは出かけるかな。」
俺が女嫌いというか、付き合いたくないのは姉貴が原因かも知れない。
「今日帰らないかも。てへ。」
「キんモ。俺に言うなよ。」
「行って来まーす!」
俺も時計を見て、のんびり家を出た。遅刻しそうな時間だが、事故にあうよりマシだ。
家を出るなり、綾部が走っていた。綾部章人はサボり仲間。だか、あいつはおっちょこちょいというか、ドジでサボりたくなくてもサボってしまうタイプ。
「シュウ!お前遅刻すっぞ!走れ!」
あーあコケた。
「章人走るなって言われてるだろ。」
「ってー。他人事かよ!」
「焦っても遅刻する時はすんだよ。」
「待てよー!膝擦り剥いた。」
絆創膏をカバンから出して貼る章人は手慣れたモンだ。
「女子みてぇ。」
「絆創膏が?」
「いつも持ってんのかよ。退くわー。」
ショックを受ける章人を置いて俺は学校に向かった。
章人はアレだな。同性からモテるタイプ。イジられキャラっての?そんな感じ。
そして俺はギリギリ遅刻しなかった。章人はギリ遅刻した。可哀想に。
「おはよ!」
休み時間、門脇が話しかけてきた。
「はよーさん。」
とは言うものの。気まずくて顔見れねぇよ。
「昨日のことは…」
昨日のことは忘れてという展開か?席に着いてる俺は、それを期待して門脇を見上げた。
「昨日のことはなかった事にしないでよ。」
「やっぱ門脇はつえーな。」
にっこり笑って、門脇は言った。
「当たり前じゃん。私最強女子だからね。」
「男子じゃなかったんだ?」
「こらぁ。それ冗談になんないから。」
ボーイッシュな門脇が微妙に女に見えた。
「何よ。」
「べつに。用がすんだら早く戻れ。俺は昼寝すんだよ。シッシ。」
「えー?まだ1時間目も始まってないじゃん!」
ばか。そんなに俺が好きかよ。
「っせぇな。」
俺は照れてんだよ。
「分かったわよ。また来るね。」
「もー来んなボケ。」
「ふーんだ。山田より頭いいから。」
門脇が女子の群れに戻った後、佑樹が俺を意味有り気に見て来た。
「良かった良かった。シュウもやーっと彼女が出来そうだな。」
「有り得ねぇ。」
「良いと思うんだけどなぁ。人気モノの門脇と不良に憧れるシュウ。いい画じゃん。」
「ほっとけ。俺は寝る。」
ハズい。なんなんだこの恋しろ的な佑樹の言葉は。
恋とか、柄じゃねぇんだよ。




