チートで救われた世界の歴史が間違いだらけだったので、前世が図書館司書だったから記録を残すことにした
一 凡人枠、記録なき王都に立つ
死んだのは、県立図書館の書庫だった。
享年四十二。心筋梗塞。
脚立の上で、明治期の土地台帳を棚に戻している最中に意識を失い、そのまま落ちた。死因より落下のほうが痛そうだが、幸い(と言っていいのか分からないが)心臓が先に止まったので痛みは感じなかった——はずだ。せめて『古文書を思い出の品として抱いて死んだ』と言えれば格好いいが、現実は『脚立から落ちた』である。地味だ。
十五年間、県立図書館の郷土資料室に勤めた。大学院で日本近世史の修士号を取ったが、研究者のポストは空かず、司書資格を取って図書館に入った。学芸員の友人には「研究者になれなかった歴史オタクが辿り着く墓場」と言われたが、俺はこの仕事が好きだった。
好きだった——が、それだけではない。この仕事には法的な根拠がある。図書館法第三条は、公立図書館の事業として「郷土資料の収集」を明記している。県の公文書管理条例は、歴史的公文書の保存と利用を義務づけている。俺がやっていたのは、趣味ではない。制度が求める仕事だ。
古い地図の修復。郷土史家への資料案内。小学生の自由研究の手伝い。地域の古老から昔話を聞き取って記録するオーラルヒストリーの事業。——地味な仕事だ。予算要求のたびに「それ、必要ですか?」と聞かれ、「法律で決まっています」と答えるところまでがセットだった。
あるとき、地域の再開発で揉めたことがあった。「この場所にはかつて何があったのか?」が争点になり、県の担当部署から問い合わせが来た。答えは、俺の資料室の棚にあった。三十年前の聞き取り調査の記録だ。——もし前任の司書がその記録を残していなかったら、県は判断材料を永久に失っていた。問い合わせてきた県の職員は言った。「こんな資料があったんですか」。——ある。あるから、あなたは今それを使えている。
記録は、残した瞬間には誰にも感謝されない。でも、なくなった瞬間に、行政が止まる。
人間は忘れる生き物だ。だから、記録する人間が必要だ。
——気がつくと、真っ白な空間にいた。
「はいはい、ご愁傷様でした」
カウンターの向こうに、とんがり帽子の青年が座っていた。「MAGIC★PREMIUM」と刺繍された星柄マントに、宝石のはまった安っぽい杖。生地はやけに上等だが、趣味は悪い。
「転生窓口の担当、ツクヨです」
「転生……?」
「はい。柏木さん、さっき亡くなりましたよね。心筋梗塞。脚立から落ちる直前に心臓が止まりました」
「……ああ、やっぱり死んだんですか。薄々そんな気はしていましたが。——死因が心筋梗塞なのはまだしも、『脚立から落ちた』は履歴書に書きたくないですね」
「履歴書ないですよ、死んだら。で、ちょっとだけ説明させてください。人間は死ぬと、本来は同じ世界に記憶をリセットされて生まれ変わります。いわゆる普通の輪廻転生ですね。ただ、ごく一部の方には、前世の記憶を持ったまま、別の世界——異世界に転生していただいています」
「なぜ?」
「異世界にも異世界の事情がありまして。人手が足りないとか、特定のスキルを持った人材が必要だとか。——それを管理しているのが転生管理局です。私はそこの末端職員。下っ端の神様です。正確には神様見習いですが、名刺には『神』と書いてあります。予算の都合で名刺の刷り直しができないので」
「……はあ。図書館で死んだと思ったら、異世界転生ですか」
——そういえば、図書館にいた頃、利用者からのリクエストで異世界転生モノのライトノベルを大量に入れたことがある。無職やニートが異世界に飛ばされて、超能力をもらって無双するやつ。若い利用者に人気があったので、棚を一つ増設したくらいだ。まさか自分がその登場人物になるとは。
「そうです。——ちなみに反応としてはかなり落ち着いてますね。前の方は『マジか』って三回言いました」
——司書という仕事は、カウンターの向こう側で何が来ても驚かない訓練を十五年続けたようなものだ。利用者が突然怒り出しても、予算がゼロになっても、脚立から落ちて死んでも、まず状況を確認する。その習慣が、死後の世界でも抜けていないらしい。
——改めて見ると、このチープな威厳は何だろう。とんがり帽子に星柄マント。刺繍をよく見ると「MAGIC★PREMIUM」と書いてある。杖にも宝石がはまっている。安物だが。
「……ずいぶん、凝った格好ですね」
「ありがとうございます。最近、うちの部署の実績が上層部に評価されまして。以前の案件がかなりの好成績だったので、予算が少し増えたんです。——マントの生地が一ランク上がりました。ウール混紡から、ウール混紡デラックスに」
「違いが分かりません」
「私にも分かりません。でも上層部が『成績がいいからご褒美だ』と。——神界にも人事評価制度があるんです。面倒ですよ」
「はあ」
「さっそくですが、柏木さんの案件ですね。——ちょっと変わったご依頼でして」
「変わった?」
「ええ。これまでの凡人枠は、領地の立て直しとか、戦後の外交とか、断罪イベントの対処とか、まあ、分かりやすい『困っている状態』を解決する案件でした。今回は少し違います」
「……困っていない、ということですか?」
「いえ、困っています。ただ、困っていることに気づいていない。——これが一番厄介なんです。病気と同じで、自覚症状がないまま進行するタイプが一番怖い」
「歴史学にとっては日常です」
「……あ、もうお気づきですか? 話が早い」
ツクヨはカウンターに一枚の羊皮紙を広げた。
『柏木亮 前世:県立図書館郷土資料室主任司書(十五年) 付与チート:なし 補助スキル:言語理解(標準装備のみ)』
「言語理解だけ?」
——付与チート:なし。そうか。図書館で棚を増設したあのライトノベルたちでは、主人公はみんな超能力をもらっていた。四十二歳の図書館司書がチートなしで異世界に行く話は、あの棚には一冊もなかった。
「凡人枠なので。——ただ、言い訳させてください。予算が増えたとは言いましたが、チートの追加に回せるほどは増えてないんです。マントの生地で使い切りました」
「マントに予算を使ったんですか」
「上層部の判断です。見た目が大事だそうで。——官僚組織はどこも同じです」
「前世で聞き飽きた台詞ですね」
「それで、困っていることに気づいていない、というのは?」
ツクヨが杖で宙に地図を描いた。大陸の中央に、ひときわ大きな城壁都市。
「五年前に、この世界の魔王が討伐されました。チート付きの勇者を派遣しまして、見事に成功。高校生の男の子でしたが、よく頑張りました」
「それで?」
「問題は、その後です。——柏木さん、歴史学ではこういう状況を何と言いますか?『戦争に勝ったが、何が起きたかの記録が一切ない』」
俺は即答した。
「史料の空白。歴史学で最も危険な状態です」
「その通りです。この世界は、五年前の戦争の記録がほとんど残っていません。勇者の活躍は吟遊詩人が広めたので『伝説』はありますが、『記録』がない。戦死者の名簿もなければ、休戦の条件を書いた文書もない。国境線の根拠は『勇者がこの辺で魔物を倒したから、たぶんここまでうちの領土』です」
「……最悪ですね」
「ええ。で、先日、別の凡人枠——外交官の方が講和条約を結んでくださったんですが、その交渉中にも『五年前の戦闘で、この地域を制圧したのはうちの国だ』『いや、うちだ』という争いが頻発しました。記録がないので、誰が正しいか検証できない」
「その外交官の方、苦労したでしょうね」
「ええ、かなり」
「記録がない中での交渉は、土台なしで建物を建てるようなものですから」
「とにかく。条約は結ばれましたが、このままでは五年後、十年後に『あの条約の根拠は何だ?』という疑問が必ず出てきます。記録がなければ、条約さえ紙切れになりかねない」
「つまり——歴史を作れ、と」
「歴史を作るのではありません。歴史を『記録』してほしいのです。——この違い、柏木さんなら分かりますよね?」
分かる。痛いほど分かる。
歴史を「作る」のは権力者の仕事だ。歴史を「記録する」のは、俺たちの仕事だ。
「行きます」
「ありがとうございます。——あ、転生時の身体調整ですが。享年四十二、少し不摂生気味でしたね。十歳、若返らせておきます」
「せっかくなら大卒の二十二まで戻してもらえませんか」
「無理です。二十年戻すと予算が四倍になります。以前なら五歳がやっとでしたが、予算増額のおかげで十歳分確保できました。——さっき言った好成績の案件のおかげです」
「会ったこともない人の功績で若返りが増えるというのは、よく分かりませんが感謝しておきます」
「どういたしまして。それに、柏木さんの価値は身体じゃなくて十五年分の記憶のほうです。プロの経験を積んだ三十二歳の身体で十分ですよ」
「……十五年分の、プロの記憶」
「はい。史料の扱い方、証言の聞き取り方、記録の体系化——全部、柏木さんの頭の中にある。それがチートの代わりです。図書館で脚立から落ちない程度の運動神経はつけておきました」
「……そこは前世のまま据え置きでよかったんですが」
二 伝説は記録ではない
転生から三日が経っていた。
ツクヨの話では、転生先の王国にはあらかじめ「別の世界から専門家を送る」と伝えてあるとのことだった。こちらの世界では、それは神官が受ける「神託」として届くらしい。転生者の存在自体は、この世界ではそれほど珍しいことではない。勇者ユーリも転生者だった。——ただ、「チートなしの凡人枠」というのは、さすがに説明が必要だったが。
王都フェルゼンの城門をくぐった瞬間、俺はまず空気の匂いを確認した。
石畳の湿った匂い。遠くから聞こえる鍛冶屋の槌音。路地裏で笑いあう子供たちの声。——戦後五年。街はそれなりに日常を取り戻しているように見えた。
だが、俺の目は別のものを探していた。記録だ。
掲示板。看板。張り紙。門の脇に貼られた条例。——この世界に、どの程度「文字で残す文化」があるのか。それが最初に確認すべきことだった。
案内役の書記官・マティアスが俺を迎えた。
「こちらへどうぞ、カシワギ殿。——王宮の神官が神託を受けまして、『別の世界から記録の専門家が遣わされる』と。お待ちしておりました」
——せっかく異世界まで来たのだ。「図書館司書」と名乗っても通じない。ここでは「歴史学者」と名乗ろう。前世では研究者のポストが空かず諦めた肩書きだが、異世界には学会の査読もない。
「ええ。異世界から来た歴史学者です。——奇妙な経歴で申し訳ない」
「いえ、勇者様も別の世界の方でしたから。それ自体は珍しくありません。——ただ」
マティアスが少し言いにくそうに続けた。
「正直に申し上げますと……宮廷では困惑しております。神託は『記録の専門家を遣わす』でした。皆、勇者様のような戦士が来るものと思っていたので。『記録の専門家が来て、何をするのか?』と」
「そうでしょうね」
「剣も魔法も使えない方が来て、記録を取るだけと聞いて……失礼ですが、何の役に立つのかと。大臣も首を傾げておりました」
「大臣が首を傾げるのは、記録がないことの危険に気づいていないからです。——まあ、気づいていたら俺の出番はない」
石造りの建物が整然と並び、中央広場には勇者の巨大な銅像が立っている。台座には金文字で「光の勇者ユーリ、魔王を討ちし者」と刻まれていた。
——が、俺が気になったのは銅像ではなく、台座の裏側だった。
「建立年月日が書いてない」
マティアスが不思議そうな顔をした。
「……それ、必要ですか?」
「必要です。百年後にこの銅像を見た人が、『これはいつ建てられたのか?戦後すぐか、十年後か、五十年後か?』と考えます。その答えによって、この銅像の意味は変わる。戦後すぐなら追悼、十年後なら政治宣伝、五十年後なら歴史教育です。年月日がなければ、何のために建てたのかさえ分からなくなる」
「……そこまで考えますか?」
「考えます。これが記録の仕事です。——前世で、地域の石碑の建立年を調べるだけで三日かかったことがあります。それでも市役所に『それ、何の役に立つんですか?』と聞かれました」
「……それ、役に立ったんですか?」
「十年後に役に立ちました。建立年、いつも役に立つのは十年後です」
マティアスに案内されて、王宮の文書庫を見せてもらった。
扉を開けた瞬間、嫌な予感がした。
「……これが、全部ですか?」
棚が八つ。そのうち六つは空。残りの二つに、雑然と積まれた羊皮紙の束。
前世の世界史の授業で、アレクサンドリア図書館の火災を学んだことがある。古代世界最大の図書館が燃え、人類の知識の大半が失われたあの事件。——目の前の光景は、小型版アレクサンドリアだった。
「はい。魔王との戦争中に、王宮の東翼が魔法で焼かれまして。文書庫の大半がそのとき失われました」
「バックアップは?」
「ばっく……?」
「写し。控え。複製。同じ文書を別の場所に保管していなかったか、ということです」
「していません。そもそも、文書を写す習慣がなくて……」
——前世で「データが飛んだけどバックアップとってなかった」と泣きながら駆け込んでくる利用者を何人も見てきた。この世界では羊皮紙だが、やっていることは同じだ。
頭が痛くなった。
前世の図書館で、デジタルアーカイブの重要性を説いても予算がつかなかった日々を思い出す。「紙の本があるのに、なぜデジタル化する必要があるの?」と言われ続けた。——燃えたら終わりだからだ。アレクサンドリアから人類は何も学んでいない。
「ちなみに、羊皮紙自体の保存状態は悪くないですね。羊皮紙って、実は紙より頑丈で、条件が良ければ千年以上持つ。死海文書が二千年経っても読めるのは、羊皮紙の堅牢さのおかげです」
「しかいもんじょ……?」
「こちらの話です。気にしないでください。——それより、残っている文書を見せてください」
二時間かけて、残存文書をすべて確認した。
歴史学では、資料の種類を区別する。出来事の当事者が直接残したものを「一次史料」と呼ぶ。軍の報告書、兵士の日記、命令書。これが最も信頼性が高い。それについて後から書かれた解説や物語は「二次史料」だ。吟遊詩人の歌、英雄譚——これらは参考にはなるが、事実の検証にはならない。
結果。
・一次史料:ほぼ全滅。軍の報告書も、戦闘記録も、補給の帳簿も残っていない。戦前の文書は王家の系譜、一部の徴税記録、古い地図(年代不明がほとんど)のみ
・二次史料:吟遊詩人の歌、酒場の噂話——つまり伝説。伝説は面白いが、日付がない
・戦後の文書:講和条約の写し一部(先日の外交官の方が残したもの)、それ以外は口頭伝達のみ
「五年間の戦争の一次史料が、ほぼゼロ。——これは、歴史の空白どころか歴史の断崖です」
「断崖……」
「崖の向こうに何があったか、もう見えないということです」
三 証言を集める
記録がないなら、証言を集めるしかない。
俺は前世で培った「オーラルヒストリー」の手法を使うことにした。生きている人間の記憶を、聞き取って、記録して、照合する。文書が失われた時代の歴史は、そうやって復元する。前世の図書館でも、戦後の地域史を聞き取りだけで再構成したことがある。
ただし、証言には大きな弱点がある。記憶は変わるのだ。時間が経てば経つほど、人は自分の記憶を「整理」してしまう。都合よく書き換え、矛盾を埋め、物語として完成させてしまう。——だから、聞き取りには方法がいる。
前世の世界で「歴史の父」と呼ばれたヘロドトスという学者がいる。同時に「嘘の父」とも呼ばれた。彼は証言をそのまま書いたからだ。伝聞をそのまま載せれば、それは「歴史」にも「嘘」にもなる。——大事なのは、証言を照合し、矛盾を見つけ、なぜ食い違うのかを考えることだ。
まず必要なのは、記録用紙のフォーマットだ。
「聞き取り調査票」を作った。——前世で使っていたフォーマットを、この世界の構造に合わせて調整した。フォーマットは「仕事の突破口」とも言える。用紙の構成を見れば、その人がどれだけ現場を知っているかが分かる。
・証言者氏名
・年齢、職業、居住地
・戦争中の立場(兵士、住民、官吏、商人など)
・証言の内容(できるだけ本人の言葉のまま)
・証言の日時、場所
・聞き取り担当者名
・備考(他の証言との矛盾点など)
マティアスに見せると、「これを全部書くんですか?」と驚かれた。
「書きます。証言は記憶です。記憶は変わる。何年何月に、誰が、どういう立場で言ったかを記録しなければ、証言の信頼性を後から検証できません」
「信頼性の検証……? 聞いたことをそのまま書けばいいのでは?」
「それは歴史ではなく、伝聞です。——歴史学の基本は『史料批判』です。一つの出来事について、複数の証言を集め、矛盾点を検証し、もっとも信頼性の高い記述を確定する。一人の証言だけを鵜呑みにしたら、それは記録ではなくプロパガンダになります」
「……それ、全部、カシワギ殿が一人で?」
「前世でも郷土資料室は一人でした。慣れてます」
最初の証言者は、王都の老パン屋だった。
「ああ、戦争ね。勇者様が来てからは早かったよ。三日で城壁の外の魔物を全部片づけて、一週間で北の砦を取り戻した。すごかったねえ」
「三日で城壁の外を? 具体的には何日のことか覚えていますか?」
「日付……? さあ、もう五年も前だからねえ。秋だったのは覚えてるよ。パンに使う小麦の収穫が終わった後だったから」
「ありがとうございます。——えーと、ユーリ——勇者が来る前は、どのくらいの間魔物に囲まれていましたか?」
「一年……いや、二年? 途中で数えるのをやめたよ。毎日同じだったからさ」
次の証言者は、元兵士。
「勇者? ああ、強いのは間違いない。でも三日で片づけたってのは嘘だな。あれは二週間はかかった。俺たちも一緒に戦ったんだ。勇者だけで回るほど城壁は短くない」
もう矛盾が出た。パン屋は「三日」と言い、兵士は「二週間」と言う。
——慌てない。矛盾は、歴史学にとって宝だ。なぜ食い違うのかを考えることで、何が本当に起きたのかが見えてくる。
次の証言者は、城壁の見張り番。
「魔物の掃討は、まず西門から始まった。勇者が光の剣で薙ぎ払ったが、東門は俺たちが自力でやった。勇者は『東は任せた』って言って来なかった。だから東門の掃討には十日かかった」
ここで三つの証言を並べてみる。
パン屋:「三日で片づけた」——パン屋の店は西門の近くだ。彼が「見た」戦争は、西門の掃討だった。勇者が光の剣で薙ぎ払った三日間。それが彼にとっての「戦争のすべて」だった。
兵士:「二週間かかった」——兵士は全体を知っている。西門の三日に加えて、東門の十日、その前後の準備と掃討を含めると二週間。全体の話だ。
見張り番:「東門は十日」——具体的な数字。勇者が来なかった戦線を、自分たちだけで戦った記憶。
矛盾ではなかった。視点の違いだ。それぞれが見ていた「戦争」が違う。パン屋は自分の店の前の三日間を見ていた。兵士は作戦全体を見ていた。見張り番は、勇者がいない戦場を見ていた。——三つの証言を重ねることで、初めて「城壁掃討戦の全体像」が浮かび上がる。
これが史料批判だ。
「面白いでしょう?」と俺はマティアスに言った。
「……正直、面倒だと思いました」
「歴史学はそういう学問です。——ちなみに、前世で『地域史を編纂する』と言ったら、上司に『それは誰が読むの?』と聞かれました」
「……誰が読むんですか?」
「三十年後の誰かです。それが誰かは、三十年後まで分かりません」
四 歴史を変えたい者たち
証言を集めていくと、ある傾向が見えてきた。
王都の「公式な物語」——吟遊詩人が歌い、銅像が称え、酒場で語り継がれる物語——は、単純明快だった。
「光の勇者ユーリが、単身で魔王を討ち、世界を救った」
分かりやすい。痛快だ。人はこういう物語が好きだ。
——だが、歴史学を学んだ人間は知っている。分かりやすくて気持ちのいい物語は、大抵、正確ではない。前世でも異世界でも、それは変わらない。
証言を照合していくと、現実はもっと複雑だった。
勇者が直接戦ったのは、全戦線の三割ほどだ。残りの七割は、各国の正規軍と義勇兵が戦っていた。補給路を維持したのは商人たちで、後方の治療を担ったのは修道院の僧侶たちだった。戦死者の大半は、勇者がいない戦線で亡くなっていた。
勇者一人が世界を救ったのではない。大勢の名もなき人々が、地味な仕事を積み重ねた結果として戦争は終わった。
——しかし、ここでもう一つ気になることがあった。
なぜ、「勇者が単身で救った」という物語が、これほど強固に広まっているのか?
吟遊詩人が自然に歌っているだけなら、もう少しバリエーションがあるはずだ。地域ごとに違う話が伝わっていてもおかしくない。なのに、どの街でも、どの酒場でも、同じ物語が同じ形で語られている。
——これは「自然に広まった伝説」ではない。誰かが「そう伝わるように」作っている。
大学院時代の授業を思い出した。「史料は、書かれた目的を持つ。書いた人間の立場と意図を読め。なぜこう書かれたか。何が書かれていないか。不都合な真実は消される」——入試問題にも出るような基本中の基本だが、これほど鮮やかにその実例を目にするとは思わなかった。
勇者の英雄譚を統一的に流布することで、利益を得るのは誰か。——現政権だ。
「光の勇者を派遣し、世界を救った王国」。この物語が定着すれば、現在の王家の正統性は盤石になる。逆に「勇者だけでは三割しか戦えず、各国の軍と民間の協力で勝った」が広まれば、王家の手柄は薄まる。
歴史が政治に利用されている。——前世でも、異世界でも、権力者のやることは変わらない。
そして——これを聞いて、怒る人がいた。
「カシワギ殿。その『調査』とやらは、いったい何が目的ですか」
王宮の大臣・ヘルムートが、俺の調査室に乗り込んできた。
予約なし。書記官を通さず直接来る。——この時点で、普通の「お問い合わせ」ではないと分かる。前世でも、予告なしに資料室に来る議員は、大抵「この資料を出すな」と言いに来た。
「記録を残すことです」
「記録? 勇者様が魔王を討った。それが記録のすべてではないか」
「大臣。歴史学の観点から申し上げます。一つの出来事を一文で要約することを、記録とは言いません。それは標語です」
「……何が言いたい」
「例えば。第三次ライゲル砦攻防戦で、帝国軍の第七師団が三日間の足止めを行ったという証言があります。この三日間がなければ、勇者の本隊は背後を突かれていた可能性がある。——しかし、公式の記録にはこの作戦は載っていません」
「小さな作戦まで記録する必要はない」
「小さくありません。この作戦で二百人が戦死しています。——大臣、二百人の死を、歴史から消すおつもりですか?」
ヘルムートの顔色が変わった。
「老人や兵士の記憶をかき集めて、何になるというのだ。勇者様の功績に泥を塗る気か」
「泥は塗りません。むしろ、勇者の功績を正確にすることで、その価値はより明確になります。『一人で全部やった』よりも、『困難な戦線を突破し、各国軍の連携を可能にした』のほうが、戦略的にどれほどすごいことか伝わるでしょう?」
「……お前の言うことは分かる。だが、民が求めているのは正確さではない。希望だ。『勇者がすべてを救った』という物語が、戦火で傷ついた人々の心を支えている。それを壊す権利が、記録屋にあるのか」
——それは、正論だ。歴史学は、時として残酷だ。人々がすがりつく物語を、事実で崩す。——だが、それでも。
「歴史とは、英雄の物語ではありません。名前の残らない大勢の人間が、それぞれの持ち場で仕事をした、その記録の総体です。——そして、その中には、生き残れなかった人がいます」
俺は続けた。
「二百人の兵士は死にました。彼らには名前がありました。家族がいました。帰りを待つ妻がいて、父の顔を知らない息子がいた。でも、公式の記録にはその作戦さえ載っていない。彼らの遺族は、夫や父が何のために死んだのかさえ知ることができない」
「………」
「生き残った人間には、記録する責任があります。死者は自分の物語を語れない。だから、生きている私たちが、彼らの代わりに記録を残す。——それが、歴史学がある理由です」
ヘルムートは黙って出ていった。
翌日、俺の調査室の予算が三割削られた。
——前世でも、郷土資料室の予算は毎年最初に削られた。慣れている。
だが、慣れていることと、正しいことは違う。
予算を削っても、記録の必要性は一円も減らない。——そういえば前世の上司は言った。「柏木くんの仕事は大事だと思うよ。ただ、予算は別の話だ」。——大事だと思うなら予算をつけろ。二つの世界を渡っても、この台詞だけは変わらない。
それにしても、予算三割カットの通知が羊皮紙一枚だというのは、ある意味潔い。前世のメール一本よりは、先方の顔が見える分、残酷だが。
五 燃やされた記録
事件が起きたのは、調査を始めて三か月後だった。
王都郊外の旧魔王軍陣地から、大量の文書が発見された。魔族側の戦争記録だ。
俺は興奮した。手が震えた。——記録屋が一番興奮する瞬間をご存じだろうか。未発見の史料が出てきた時である。勇者が魔王を討つ瞬間より興奮する。たぶん。
これまで人間側の証言しかなかった。歴史学では、片方の立場からの記録だけでは真実に辿り着けない。裁判で原告の証言だけ聞いて判決を出すようなものだ。魔族側の記録があれば、戦争の全体像が見えてくる。「歴史」は、勝者の記録だけでは完成しない。敗者の記録があって初めて、何が起きたかが分かる。
これは、いわばこの世界のロゼッタストーンだ。人間側の記録と魔族側の記録、二つを突き合わせることで、初めて「解読」が可能になる。
文箱を二十個。運搬の手配をして、翌朝に回収するはずだった。
——朝、現場に行くと、灰になっていた。
「昨晩、火事がありまして」とマティアスが青い顔で言った。
「火事? この建物だけが? 周囲は無傷なのに?」
「………」
「放火ですね」
「……たぶん」
俺は灰の中に膝をついた。
焼け残った羊皮紙の断片を拾い上げる。魔族の文字で、日付と部隊名が読み取れた。それだけだ。あとは全部、灰だ。
——前世の世界史で「焚書」という概念がある。権力者が都合の悪い書物を焼く行為だ。秦の始皇帝がやり、ナチスがやり、そして——おそらく、この世界の誰かがやった。焚書は、文明と同じくらい古い犯罪だ。
前世でも、これに近いことはあった。
ある地域の戦後史を調べていたとき、「不都合な記録」が自治体の倉庫から「紛失」したことがあった。誰が処分したのかは分からなかった。ただ、その記録がなくなったことで、ある政治家の過去の発言が検証できなくなった。
記録を燃やすのは、人を殺すのと同じだ。
いや——もっと悪い。人は殺されても、誰かの記憶に残る。だが、記録を燃やされた出来事は、「最初から存在しなかった」ことにされる。記録のない人間は、存在しなかったことにされる。記録のない出来事は、起きなかったことにされる。
あの陣地で戦い、死んでいった名もなき魔族の兵士たちが、もう一度殺された。今度は、記憶からも。
「カシワギさん……大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないです。——魔族の記録は燃えた。でも、魔族側の生存者はどこかにいるはずです。記録は燃えても、記憶は燃えません。彼らを探し出して、一から聞き取ります」
——生き残った者には、記録する責任がある。人間も、魔族も。
俺は立ち上がった。灰のついた膝を払って、調査票を取り出した。
六 歴史が命を救う日
記録の価値が証明されたのは、予想外の形だった。
旧魔王領の領土問題が紛糾した。帝国が「この土地は戦時中に我が軍が制圧した。よって帝国領である」と主張し、トレイス公国連邦が「いや、最初に入ったのは我が国の部隊だ」と反論した。
——講和条約では、旧魔王領は信託統治領として共同管理されることになっていた。だが、帝国は条約を骨抜きにしようとしていた。「共同管理」を認めつつ、実質的な支配権を主張する。その根拠が「戦時中に制圧した」だ。
条約を結んだ外交官はすでに任務を終えて去っており、後任の若い担当者では帝国の圧力を押し返しきれなかった。
講和条約協議会が紛糾しかけたとき、俺は証言記録を持って会議室に入った。
「失礼します。——この件について、資料があります」
ヴァルター帝国代表が俺を睨みつけた。
「何だ、貴様は」
「王立文書館——と言っても棚八つの小部屋ですが——の記録官、カシワギです。歴史学者が、ちょっとお邪魔します。——武器は調査票ですが」
俺は調査票の束を広げた。
「帝国第三軍団がベルガ高原に到達したのは、元暦三一二年の枯れ葉の月の二十日です。——これは帝国軍の元兵士三名の証言が一致しています。一方、トレイス公国連邦の義勇兵部隊がベルガ高原に到達したのは、同年枯れ葉の月の十五日です。これは公国側の兵士二名と、現地住民の証言で確認しています」
「……何が言いたい」
「帝国軍の到着は公国軍の五日後です。『最初に制圧した』のは帝国ではありません。——ただし」
俺は続けた。
「ただし、トレイス公国連邦の部隊は通過しただけで、駐留はしていません。帝国軍は到着後に駐屯地を作り、三か月間維持しています。つまり『最初に到達した』のは公国ですが、『実効支配した』のは帝国です」
両国の代表が、複雑な顔をした。
「——そして、勇者ユーリがベルガ高原の魔王軍を掃討したのは、帝国軍の到着よりさらに二か月前です。どちらの軍も到着前に安全が確保されていなければ、そもそも両軍ともあの地域に入れていません」
会議室が静まった。——前世の会議で「データがあります」と言った瞬間に場が静まる、あの感覚だ。数字に反論できる人はいない。
「記録というのは、こういう時に必要なものです。『うちが先だ』『いや、うちだ』の水掛け論を止められるのは、日付と事実だけです。記憶は人の数だけありますが、記録は一つです」
条約履行を監視していた若い外交官が、小さく頷いた。
——この日、帝国は領有権の主張を撤回した。
撤回の理由は「講和条約の精神に鑑み」と公式には発表されたが、実際には、たかが棚八つの文書館から出てきた聞き取り調査票の束に、反論できなかっただけだ。
前世の世界に、「ペンは剣よりも強し」ということわざがある。——正確には、「調査票は剣より地味だが、たまに勝つ」だ。
七 歴史学は生活を良くしない
赴任から六か月が経った。
ある夜、例の夢を見た。真っ白な空間。カウンター。とんがり帽子。
——マントがさらにアップグレードしていた。裏地に星座の刺繍が入っている。杖の宝石も二つに増えている。
「定期フォローです。——あ、マント見ました? 裏地が新しくなったんです」
「ツクヨさん、見ました。好調のようですね」
「おかげさまで。以前の凡人枠の案件が次々にうまくいきまして。上から『チート枠より費用対効果が高いのでは?』と言われてます。——チートを付けずに、前世でちゃんと仕事をしてきた人を送るほうが結果が出ると。チート枠の担当者が不機嫌です」
「チート枠と競合してるんですか」
「してます。あちらは一人あたりの予算がこちらの百倍なので、実績で負けると立場がない。——ただ、カシワギさんの仕事だけはちょっと困惑ぎみでして。『何か劇的に変わった?』と聞かれて、私も答えに困りました」
分かる。
「歴史学は、生活を劇的に良くしません」
「ですよね。以前の凡人枠だと、排水溝を直してきれいな水が出たとか、条約を結んで戦争が正式に終わったとか、プロの謝罪で場を収めたとか——上層部のスライドに入れやすい成果だったんです。カシワギさんは?」
「……証言を集めて、調査票を書いて、棚に並べました」
「スライド映えしませんね」
「歴史学に映えを求めないでください。——前世の世界にランケという歴史学者がいまして。『それが実際いかにあったかを示す』のが歴史学だと言った。地味です。でも、それが歴史学の本質です」
「……ランケって誰ですか」
「前世のおじいさんです。気にしないでください」
「それだけ?」
「それだけです。——でも、ツクヨさん。その『それだけ』がなかったら、先日の講和条約は崩壊しかけていました」
「ああ、帝国の領有権主張の件。あれは見事でしたね。——実はあれ、上層部にはウケました。『日付を調べただけで領土紛争を止めた。コストゼロ』と。費用対効果の鬼です」
「嬉しくない褒められ方ですね。——そもそも、調査票を書くための羊皮紙代はかかっているので、コストゼロではないです」
「羊皮紙代を入れてもマントの生地代より安いでしょう?」
「……それはそうですが。それに、見事というほどのことでもありません。俺がやったのは、日付を調べただけです。——でも、日付を調べた人間が誰もいなかったから、それだけで領土紛争が止まった。歴史学は地味です。生活を良くしません。排水溝を直す仕事のように、目に見える成果はない。パンの匂いは漂ってこない。条約の調印式もない」
「なのに、なぜこの仕事を?」
「——前世の図書館で、ずっと考えていたことがあります」
俺は言った。
「百年後の人間が、『あの時代に何が起きたのか?』と知りたくなった時に、答えがある。それだけです。百年後に誰かが調べに来た時に、棚に答えがある。——その『誰か』は、たぶん俺には会えない。百年後だから。でも、棚は残る。記録は残る」
「……」
「歴史学が生活を『劇的に』良くすることは、たぶんありません。でも、歴史学がなければ、何が悪かったのかさえ分からない。同じ過ちを繰り返す。チート勇者に丸投げして失敗したことを記録しなければ、百年後の王様がまた同じことをする。——『前回もうまくいったはず』と思い込む。記録がないから」
「前例がないのではなく、前例の記録がないだけ、と」
「その通りです」
俺は少し間を置いた。
「——もう一つ、あります。この戦争で死んだ人がいます。二百人どころか、たぶん何万人も。勇者がいない戦線で、名前も記録されないまま死んだ人たちがいる」
「……ええ」
「彼らは、もう自分の物語を語れません。でも、生き残った人間——俺たちには、記録する責任がある。あの時代に何があったか。誰が何のために死んだか。それを残すのは、生き残った側の義務です。——歴史学は、未来の人間へのメッセージであると同時に、死者への責任です」
ツクヨはしばらく黙った。
「……カシワギさん。凡人枠の方は皆さん、いいことを言いますね。忘れないうちにメモしておきます——紙で」
「最高の返答です」
「ちなみに、上層部への報告書ですが。カシワギさんの成果をどう書けばいいですか?」
「……記録件数、でいいです。証言三百六十二件、文書目録四百八十項目、照合済み年表一本」
「地味ですね」
「地味です」
「——でも、その年表がなかったら講和条約は守られなかったかもしれない」
「たぶん」
「それは、報告書に書いてもいいですか? 『調査票だけで国際紛争を解決』って、チート枠への殺し文句になるんですけど」
「好きにしてください。——事実なので。事実を書くのが、俺の仕事です」
「では私も事実を書きます。——『凡人枠第四号、歴史を記録中。成果:地味。効果:甚大。予算:ほぼゼロ。結論:マントの生地代のほうが高い』」
「……それは流石に上層部に怒られるのでは」
「大丈夫です。事実なので」
八 棚に並ぶ未来
夢から覚めた。
窓の外はまだ暗い。
王都フェルゼンの夜明けは、まだ少し先だ。
文書館——棚八つの小部屋——に向かった。
六か月前、空だった棚が少しずつ埋まっている。
調査票の束。照合済みの年表。戦死者名簿の草稿。地図の模写。証言者の索引。
戦死者名簿の草稿を手に取った。
まだ完成にはほど遠い。判明しているのは、全体のおそらく三割。残りの七割は、名前さえ分かっていない。
——でも、三割は分かった。三割の人間に、名前が戻った。
その名前の一つ一つに、家族がいた。子供がいた。帰りを待っていた人がいた。
誰も見に来ない。
たぶん、しばらくは誰も見に来ない。
でも——この棚は残る。
チートがなくても。聖剣がなくても。
棚に記録が並んでいて、日付と名前が書いてあって、誰が何をしたかが読める。
それだけで、歴史は嘘をつけなくなる。
俺は机に向かった。
いつもの朝の習慣——まず、今日の予定を確認する。
午前:旧魔王領の村落生存者からの聞き取り(第七回)。
午後:戦死者名簿の照合作業。帝国から提出された名簿と、現地証言との突合。
夕方:マティアスへの史料整理法の講習(週二回の定例研修)。
夜:年表の第二稿改定(継続案件)。
地味な一日だ。
昨日と同じで、明日も同じだろう。
——ちなみに、前世でも同じだった。それを「退屈」と呼ぶ人もいたが、俺は「安定運用」と呼んでいた。
でも——それでいい。
チートで救われた世界には、英雄譚はあっても、歴史がなかった。
必要なのは、地味で、退屈で、誰も褒めてくれない——記録の仕事だ。
前世で十五年。この世界でも、続ける。
毎日、証言を聞く。毎日、日付を確認する。毎日、棚に記録を並べる。
それを「凡人」と呼ぶなら——凡人で構わない。
ただ。
百年後に、誰かがこの棚の前に立つ。
「あの時代に、何があったのか?」と問う。
その時に、答えがある。
死者の名前がある。
彼らが何のために戦い、何を守り、なぜ死んだか——その記録がある。
棚に並ぶ記録は、誰のものでもない。
百年後のまだ見ぬ誰かのものだ。
——それが、歴史を記録する人間の、ただ一つの報酬だ。
(完)
【新連載のお知らせ】3月7日(金)より、凡人枠シリーズ初の長編連載を開始します!
→【連載版】チートで荒らされた領地に赴任したら、前世が地方公務員だったので普通の行政で立て直すことにした
「記録は裏切らない」——柏木さんも中村さんも、たどり着いた答えは同じでした。
短編版を全39話に大幅拡張。住民台帳から始まる、もう一つの「記録の物語」です。
毎日18:00更新。ブックマーク登録で更新通知が届きます!
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お読みいただきありがとうございます!
チートで魔王を倒した後、誰が記録を残すのか——そんな地味で退屈な話を書いてみました。
歴史学は生活を劇的に良くしません。
でも、歴史がなければ、同じ過ちを繰り返す。
百年後の「答え」を、棚に並べておく仕事が、実はいちばん長持ちする仕事なのかもしれません。
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凡人枠シリーズ、他の作品もあります:
→「チートで荒らされた領地に赴任したら、前世が地方公務員だったので普通の行政で立て直すことにした」
→「悪役令嬢、断罪されたので謝罪します ~前世が百貨店クレーム対応部長(勤続25年)なので、プロの謝罪で全員黙らせてもいいですか?~」
→「チートで終わらせた戦争の後始末に赴任したら、前世が外交官だったので普通の交渉で片づけることにした」
よろしければそちらもぜひ!




