第一話 萌芽
「…これより魔女□□□□の処刑を始める」
処刑人は冷たく言い放つ。
十字架に磔られている少女の”白い”髪の毛がなびいていた。
2人の処刑人が松明を持って立っている。
空中には数多の小型ドローンが飛んでおり少女を四方八方から見張っている。
建物と建物の間から見ること出来る小さな空は暗くどんよりしていた。
処刑台の下には、少女を見に来た民衆がいる。
しかし不自然な程にその服装は統一されていた。
そうして十字架に磔られた少女の足元に火が放たれた。
少女は悲鳴の1つも上げない。
そうして、少女は焼きただれて
―死んだ…
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「ふぁあ、よく寝たぁ。」
私の名前はアルベド、北国にある武装国家の住人だ。
「アルベド朝だよー!」
その大きな声に私は狼狽えながら返事を返す。
私を呼んでいるのは幼なじみのナナ、綺麗な黒髪のボブをしている女の子だ。
「ちょっと待って、今支度してる」
ベッドの上にはくしゃくしゃになっている布団、コンクリートでできた床には脱ぎ散らかしている服があった。
「もー、どんくさいんだから、今日は卒業式なんだからシャキッとしないと」
今日は私たちが在校する軍学校の卒業式である。
ナナは文句を言いながら布団を畳み、服を洗濯カゴの中に入れた。
目線をおとすとそのネクタイが緩んでいる。
「ごめんって、もう支度済んだから行こ?」
私はナナの後ろに回り、首に手をかける。
「動かないで」
私はナナのネクタイを結びなおした。
「えへへ、ありがと」
「まったくどんくさいのはのどっちのことやら」
そう言い、私たちは部屋を後にする。
ドアを開けて見えるのは四方を囲うコンクリートでできた通路だけだ。
この国は生まれた時から管理されており、本当の家族なんて知らない。
それは家族だけではない、住むところだってそうだ。
「それにしたってアルベドは綺麗な”白色”の髪しているよね」
「そう?」
談笑しながら歩いていると、私たちは大きなドアの前で足を止める。
戸に手をかけるとそこには朝ごはんを食べている子供たちと1人の女性がいた。
言い忘れていたが私とナナは同じ”エリア13”の寮に住んでおり、ここは食堂だ。
「おはよう。アルベド、ナナ今日は卒業式なんだでしょう?」
寮母”シスター・アイレス”だ。
彼女は私たちが物心ついた頃一緒にいた母親だ。
母親と言っても血は繋がっていないが
本当の家族を知らないとは言ったものの私はここにいる人たち全員を家族と本気で思っている。
「ええ、そうよ、最後なんだから、シスターのご飯が食べたくてね」
ナナはそう言う。
「嬉しいこと言うわね、今ご飯を出すわ」
そう言い、シスターはハムエッグと、パンを出す。それを私たちは口に運ぶ。
「やっぱり美味しい」
私の口から言葉がこぼれる。
この味が、もう当分は食べられないのが悔しいほどだ。
「ふふ、よかった。」
シスターが微笑む。
「シスター、私たちは今日卒業なんだから、”あれ”あるよね」
ナナが言う。
「ええもちろん、ちょっと待ってね。」
そしてシスターは大きないちごのホールケーキを出す。
「お兄ちゃん達が出ていく度にいっつもナナは欲しそうに見てたよね」
私は頬に手を置いて言う。
シスターは誰かが寮に出ていく度に大きないちごのケーキを出してくれる。
「あったり前じゃん!こんな大きなケーキ誕生日の日でも食べられなかったんだから」
ナナはすでにケーキに手をつけている。
かく言う私も楽しみだったのは事実だ。
「寂しくなるねぇ、ここも」
私たちを見ているシスターは悲しそうな顔をしている。
いつもこの時期、シスターは寂しそうな顔をする。
私たちの上の学年、言わば兄姉たちがこの寮から出るからだ。
私たちは彼ら同様、軍学校を卒業と共に寮から出て、新たに軍隊の寮に編入される。
「シスター、アルベドたちどっか行くの?」
そういうのは寮の中でも最年少ノーマンだ。
それを聞き周りの子供たちは泣きそうになる。
ここにいる子供たちはまだ学校に行っておらず寮が彼らの世界であった。
「そうよノーマン、私たちは立派な軍人さんになるの。だけど休みの日にはちゃんと帰ってくるよ」
そう言い、ナナは子供たちをあやしている。
しかし子供たちは軍人という言葉にあまりピンと来てないようだった。
「ナナは、本当に軍人さんになれるかな?」
私は冗談交じりに言葉を放つ。
「なにそれ!私だって、アルベドほどじゃないにしても、成績はいいんだから」
ナナはほっぺを膨らませている。シスターはそれを見て笑っていた
「あら、もうこんな時間。」
シスターは祈りをささげて、何か呟いている。
「夜明けの神よ。どうか魔女狩りにこの子たちが巻き込まれませんように」




