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わたしと一緒に岩湧山へ行きませんか?

6月21日午後20時・・・


梅雨で雨が続いているためどこの山にも行けなくなっていたのだが、水城涼真はある企画を立てていた。若宮朱莉に話があるといって部屋に呼ぶと話はじめた。


水城涼真「朱莉ちゃん、来月の7月3日だけど、なんとか仕事を休むことできない?」

若宮朱莉「えっと7月3日は木曜日かぁ・・・ちょっと休みにくいかも」

水城涼真「朱莉ちゃんの特集を収録するって形でもええから、うまくテレビ局の人に伝えてもらえんかな?」

若宮朱莉「わたしの特集って?」

水城涼真「俺が朱莉ちゃんの旦那だと公表する番組企画や」

若宮朱莉「ええぇーーー!?涼真さん、そういうの嫌っていたんじゃないの?」

水城涼真「いや、もう俺も隠しておくのも限界やし、それやったらもう一度身内だけで盛大な結婚式をして、それを放送で流してもらえればええんよ」

若宮朱莉「わたしは構わないけど、でもどうして7月3日なの?」

水城涼真「俺らが出会った日と場所を覚えてる?」

若宮朱莉「あっ!2年前の7月3日に岩湧山ではじめて会ったんだよね」

水城涼真「そう。だから今年の7月3日にみんなで岩湧山へナイトハイクに行きたいと思ってるんよ」

若宮朱莉「でも平日だからみんな行けないんじゃない?」

水城涼真「既に樫田君とあっちゃんには有休使ってもらえることになってるから大丈夫。あとはテレビ局側が収録してくれるかどうかやけどな」

若宮朱莉「そういうことなら、来週にでも番組プロデューサーに話してみるよ。あと、天音さんにも来てほしいけど、忙しいから無理かな」

水城涼真「天音さんは誘うだけ誘ってみるといいかも。もしかしてってこともあるからな」


そういう話で7月3日は岩湧山へのナイトハイクへ行くことにした。2年前、はじめて水城涼真と若宮朱莉が出会った想い出の場所であり、そこで再び結婚式をするという企画である。水城涼真の部屋から自分の部屋に戻った若宮朱莉は天音琴美にSNS通話をしてみた。すると3コールで通話に出たので、若宮朱莉は今回の企画について説明した。


天音琴美「それなら是非参加させてもらうね。ちょうど7月4日から京都でロケがあるから3日はお休みいただいて朝一の新幹線で大阪に向かうことにするよ」

若宮朱莉「ありがとうございます。それでルートなのですが、今回はみんなバラバラのようでして、涼真さんとわたしは権現尾根ルートというバリルートで登るのですが、樫田君は滝畑ルート、あっちゃんは紀見峠からダイヤモンドトレイルでそれぞれ登って山頂で合流することになっています」

天音琴美「どうしてみんなバラバラのルートで登るの?」

若宮朱莉「そのほうが面白いんじゃないかという涼真さんの提案です。一番キツイルートですが、天音さんはあっちゃんとご一緒すればいいのではないですか?」

天音琴美「そうだね。登山デートの約束もあるし、あたしはあっちゃんと登るよ」

若宮朱莉「あと問題はテレビ局側が取材をするかどうかです」

天音琴美「そのことなんだけど、あたしのほうから大日テレビの蒲田さんに聞いておこうか?あの人そういう企画大好きだから」

若宮朱莉「わざわざ東京から来ていただけるでしょうか?」

天音琴美「蒲田さんはこないかもだけど、朱莉ちゃんのお仕事してるテレビ局って大日テレビ系列だから大丈夫だと思う」

若宮朱莉「なるほど。それではお願いします」


週明け、天音琴美が大日テレビの蒲田博之に今回の企画に関して話をしたところ「それは面白い」とのことで番組の収録が決まった。もちろん今回は大日テレビではなく、若宮朱莉が番組出演している読日テレビのスタッフが収録をして全国放送されることになる。



6月24日午前11時30分・・・


この日、天音琴美はオフだったので清水紗理奈と2人で室内クライミングジムでロープワークの訓練をしていた。天音琴美はビレイヤーとしてもかなり上達しているようであった。


清水紗理奈「天音さん、完璧だじょ!ロワーダウンはもう少しゆっくりでも構わないからな」

天音琴美「ありがとうございます」

清水紗理奈「ちょっと疲れたから休憩にしようか」

天音琴美「はい」


2人はベンチに座りながらスポーツドリンクを飲んで休憩していると清水紗理奈が「なんか面白いことでもないかな」と呟いた。


天音琴美「面白いことではありませんが来月の7月3日に涼真さんと朱莉ちゃんがもう一度結婚式をすることになって、それをテレビ収録することが決まりました」

清水紗理奈「なぬ!?また結婚式をするってどういうことなんだ?」

天音琴美「涼真さんが、朱莉ちゃんの旦那だって世間に公表するようです。ですから仲間内だけの結婚式になりますね」

清水紗理奈「そんな面白そうなことを、私や片瀬に黙っているなんていい度胸だなぁ」

天音琴美「あたしも参加する予定ですが、清水さんや片瀬さんはお忙しいので黙っていたのではないでしょうか?」

清水紗理奈「7月3日といったなぁ?よし、その結婚式、私と片瀬も参加してやる!」

天音琴美「お仕事は大丈夫なのでしょうか?」

清水紗理奈「梅雨の時期だし、私も片瀬も有休使うので問題ないじょ!」


こうして水城涼真の知らないところで清水紗理奈や片瀬彩羽まで参加することが決まってしまった。



7月3日午前8時30分・・・


この日、偶然にも太平洋高気圧が強まり梅雨前線が南下して天気は晴れとなった。水城涼真と若宮朱莉は新大阪駅の中央改札口で待っていると改札口から薄いグレーのTシャツにピンクのレインジャケットを羽織ってグレーのトレッキングパンツに茶色いトレッキングブーツを履いた天音琴美が出てきた。一人だけかと思ったら、その後ろから黄色いTシャツにグリーンのレインジャケットを羽織って黒いトレッキングパンツとトレッキングブーツを履いた清水紗理奈、ダークブルーのTシャツに赤いレインジャケットを羽織って茶色いトレッキングパンツとトレッキングブーツを履いた片瀬彩羽が出てきた。


水城涼真「清水さんに片瀬さんまで来たんですか!?そないに大それたことするわけやないんですけどね」

天音琴美「水城さん、こんにちは。すみません、清水さんがどうしても参加するとおっしゃいまして、ついつい連れてきちゃいました」

清水紗理奈「水城さん、こんなことを私や片瀬に黙っておくなんていい根性してるなぁ」

片瀬彩羽「今回のことは私たちにも関係することですのでご一緒させていただこうかと思って来させていただきました」

水城涼真「いや、そこまで考えてなかったんですが、これってそないに重大なことなんですかね」

清水紗理奈「重大なことだじょ!片瀬の運命も左右されるかもしれないんだ」

片瀬彩羽「清水、それは大袈裟だけど、大阪に来るのも久しぶりだわ。水城さん、もちろん今回は取材も兼ねてお願いします。権現尾根ルートなんてあまり知られていないようですからね」

水城涼真「わかりました。とりあえず、狭いと思いますがみなさん車に乗ってください」


その後、みんな車に乗り込むと水城涼真は大阪府河内長野市に向かって車を走らせた。



午前11時10分・・・


国道170号線沿いにあるファミリーレストランに到着するとみんな車から降りた。実はテレビ局の収録スタッフとの待ち合わせはこの場所になっていたのだ。しかし待ち合わせ時間は午後12時なので、少し早めの昼食をとることになった。まだテレビ局のスタッフが到着していなかったので、先車から降りるとみんなファミリーレストラン内に入った。食事は注文せずに座席に座ってテレビ局のスタッフを待っていると、2台の黒いワンボックスカーが駐車場にやってきた。そこで若宮朱莉と天音琴美は「きたから挨拶してくるね」と言って店の中から駐車場へ出て行ってワンボックスカーから降りてきた50代くらいの男性に挨拶していた。


天音琴美「一之宮プロデューサー、お久しぶりです」

若宮朱莉「東京からわざわざこんなところまでご足労していただきありがとうございます」

一之宮和樹「天音に若宮、本当に久しぶりだなあ。ここ大阪からでも遠いよ」

天音琴美「ここだと蒸し暑いと思いますで店内へどうぞ。お昼はまだですよね?」

一之宮和樹「うんもう腹減ってさ~でも若宮の旦那さんを先に見てみたいな」

若宮朱莉「店内にいますのでどうぞ」


そうして一之宮和樹とスタッフはファミリーレストランの中へ入っていった。若宮朱莉が水城涼真を紹介すると一之宮和樹は「これが若宮の旦那さんか、なんか他の人とは違うオーラを感じるな」と言った。


水城涼真「若宮朱莉ちゃんの夫である水城涼真です。よろしくお願いします」

一之宮和樹「水城さん、はじめまして。大日テレビのプロデューサーの一之宮です。本日のロケはよろしくお願いします」

水城涼真「今日のメンバーは3つのルートをバラバラに登りますが、基本は私と朱莉ちゃんだけの撮影でお願いします」

一之宮和樹「話は聞いています。他の2グループは自撮りはしてもらえるんだよね?」

水城涼真「私の登山仲間は基本顔出しNGなので、カメラマン役になりますが・・・」

天音琴美「プロデューサー、あまり時間がありませんので先にお食事にしましょう」

一之宮和樹「あっそうだった」


全員が揃ったところで料理を注文した。みんなハンバーグ定食を注文していたが、若宮朱莉だけはハンバーグミックスグリルとご飯大盛を注文した。一之宮和樹は「若宮は相変わらず大食いなんだな」と言っていたが、やはり東京に住んでいる時もそうだったのだとわかった。結局、全員が食事を終えたのが12時30分であった。次の待ち合わせ場所である南海河内長野駅はすぐそこであるし、待ち合わせ時間は14時なのでまだ時間があったこともあって、食後はドリンクバーを飲みながらまったりしていた。



午後14時・・・河内長野駅


みんな13時50分にファミリーレストランを出るとさっさと車に乗って河内長野駅へ向かっていった。河内駅前ロータリーに到着したときには既に有本淳史と樫田裕がザックを背負って駅の階段下で待っていた。車から降りていった水城涼真と若宮朱莉は2人のもとに走っていった。


有本淳史「涼真さん、おつかれっす」

樫田裕「おはようございます。えっと今日は僕らだけやないんですね?」

水城涼真「実は余計な人まで来てしまって・・・」


その後ろから清水紗理奈と片瀬彩羽が車から降りて歩いてきた。


清水紗理奈「やぁ、君達はたしか有本君に樫田君だったよね?お久しぶり!清水でーすっ!!」

片瀬彩羽「お久しぶりです、片瀬です。本日もよろしくお願いします」

樫田裕「清水さんやないですか!えらいことなってますやん」

水城涼真「まあそうなんやけど、樫田君は滝畑から登るんやったな。悪いんやけど、この2人と一緒に登ってもらわれへんかな?」

樫田裕「僕が一緒にですか?清水さんはおもしろいですし、別に構いませんけど・・・」

水城涼真「それであっちゃんは天音さんと一緒に登ってほしいんよ」

有本淳史「また琴美ちゃんっすか・・・別にええですけど、僕らは距離が長いんでそろそろ向かわなやばいんですけど」

水城涼真「朱莉ちゃん、天音さん起こしてきて!」

若宮朱莉「わかった」


若宮朱莉は車に戻ってうたた寝している天音琴美を起こしにいった。5分程して寝起きの天音琴美が車から出てくると有本淳史の姿を見て走ってやってきた。


天音琴美「あっちゃんだ!あたし、今日はあっちゃんと二人きりで登るからよろしくね!!」

有本淳史「俺のコースは結構キツイけど琴美ちゃんは大丈夫なん?」

天音琴美「大丈夫だよ!あたし、あっちゃんについていくから!!」

水城涼真「じゃあここで一旦別れて、19時までには岩湧山の山頂で待ち合わせってことでお願いするわ」


みんな「はーい」といって、ここでそれぞれが別れることになった。水城涼真と若宮朱莉は車をコインパーキングに停めて読日テレビのロケバスに乗ってアプローチポイントまで行くことになった。ロケバスは2台あったが1台は下山時にメンバー全員を車に乗せて送っていくためのものなのでついてこなかった。ロケバスは権現尾根といわれる林道へ、樫田裕と清水紗理奈、片瀬彩羽はコミュニティバスに乗って滝畑ダム、有本淳史と天音琴美は南海高野線に乗って紀見峠駅へと向かっていった。



午後14時45分・・・紀見峠駅(有本淳史、天音琴美)


河内長野駅から南海電車に乗って紀見峠駅に着いたのは14時45分過ぎだった。ここから岩湧山までは約8.6km程あって今回の3グループの中で一番距離があるコースともいえる。有本淳史は紀見峠の駅を降りるとさっさと歩きはじめた。その後ろから天音琴美はついていったが今日はなんだか有本淳史のペースが早い。


天音琴美「あっちゃん、ちょっとペース早くない?」

有本淳史「ダイトレに入るまでは急がなあかん」

天音琴美「ダイトレ?」

有本淳史「ダイヤモンドトレイルのことで、縦走路のことやな」


有本淳史は無口のままひたすらダイヤモンドトレイル合流地点まで歩き続けた。ちょっとした登りがあったがペースを崩さずに紀見トンネルの上部を歩き続けること30分程で紀見峠ダイヤモンドトレイル入口に到着した。


天音琴美「ちょっとあっちゃん、ここで5分程休憩にしよ。いくらなんでも早すぎる」

有本淳史「んーせやね。やっとダイトレと合流できたからここからはテクテクいくようにするよ」

天音琴美「せっかくのデートなのに急ぎすぎだよ」

有本淳史「これデートなん?」

天音琴美「二人きりの登山だからデートじゃん。やっと約束を果せたね」

有本淳史「あの約束まだ生きてたんや」

天音琴美「あたしはあっちゃんと二人きりで山に登ってみたかったの!」


それから5分程休憩をして2人はダイヤモンドトレイルを西の方向に歩きはじめた。岩湧山三合目(標高650m)を経てひたすらアップダウンのある植林地帯を歩き続けていると40分程経過していた。


天音琴美「ねえ、あっちゃん・・・」

有本淳史「ん?」

天音琴美「あたしってそんなに魅力ない?」

有本淳史「えっ?そんなことはないけど・・・」

天音琴美「だってあっちゃん、あたしのこと女として見てないでしょ?」

有本淳史「そんなことあれへんよ」

天音琴美「嘘!だって、あたしに見向きもしないじゃない」

有本淳史「うーん、俺そういうの興味ないっつーか、恋愛に興味ないんよ。そもそも琴美ちゃんだって思わせぶりなこと言いながら本気やないやん」

天音琴美「それはそうだけど・・・あっちゃんだったら本気になれるかも」

有本淳史「憧れから本気にはなれんと思うんやけどな。琴美ちゃん、本当は俺のこと本気やないし」

天音琴美「・・・ごめん、今のは忘れて!」

有本淳史「仲のいい友達って距離感が俺らはええんとちゃうかな」

天音琴美「うん、そうだね」


それから30分程歩いていると根古峰(標高749.3m)に到着した。ここでちょうど半分くらいの距離といってもいいだろう。ここには電波塔と加賀田という点名の三角点が設置されている。2人はこの三角点が設置してある付近で休憩をした。



午後15時10分・・・滝畑ダム(樫田裕、清水紗理奈、片瀬彩羽)


河内長野駅からコミュニティバスに乗って滝畑ダムで下車した樫田裕と清水紗理奈、片瀬彩羽の3人は新関屋橋から標高280m地点の滝畑登山口から入山した。妙な組み合わせの3人だが樫田裕は清水紗理奈と一緒に登れるということで結構楽しみにしていた。


樫田裕「お二人はどうして今回参加したんですか?」

清水紗理奈「こんな面白いこと参加せざるにえなかったじょ」

片瀬彩羽「水城さんの大発表ですしね」

樫田裕「なるほど。まあこのままダイヤモンドトレイルを歩いていくだけですがこっち側は結構長いですよ」

清水紗理奈「それはわかっているじょ。ダイトレはいつか制覇してみたいけどな」

樫田裕「清水さん、ダイトレ知っているんですか?」

清水紗理奈「ダイトレは大阪のトレイルで有名だからな。二上山から槙尾山まで縦走してみたいじょ」


そんな話をしていると千石谷林道岩湧山登山口に到着した。ここから岩湧山の山頂を目指して登っていく。カキザコを左にいくと岩湧山第2ベンチを経て第3ベンチで一旦休憩とした。


樫田裕「ふぅー・・・ところで清水さんはまだ結婚されないんですか?」

清水紗理奈「樫田君、それは禁句だじょ!私はいつでも結婚できるからいいんだ。それより片瀬をもらってくれる人を探さないといけないのだ」

片瀬彩羽「清水のほうこそもらってくれる人見つけたほうがいいんじゃないの?」

清水紗理奈「なにを!こうみて私はモテるんだじょ」

樫田裕「いや、僕がもっと早く生まれていたら清水さんはありだったかもしれません」

清水紗理奈「樫田君、私のこと好きなのか?」

樫田裕「面白いですしめっちゃ好きですよ。ただ、僕には彼女がいますからね」

片瀬彩羽「樫田さん、上辺だけで判断してはいけませんよ」

清水紗理奈「余計なことを言わなくてもいいんだ。それより片瀬は水城さんが好きじゃなかったのか?」

片瀬彩羽「そんなこと一度も考えたことなかったよ。清水こそ水城さんのことお気に入りじゃないの?」

清水紗理奈「お気に入りだけど、変な意味はないじょ」

樫田裕「清水さん、やっぱり可愛いですね」

清水紗理奈「なんと!可愛いなんて言われると照れちゃうじょ!!」


そんな話をしながら休憩をして3人は先を進んでいった。それから30分程経って扇山・夕月橋分岐である岩湧山第4ベンチに到着した。日没にはまだ早かったのでここでもベンチに座って休憩をとりながら、樫田裕は清水紗理奈と話をしていた。



午後15時20分・・・権現尾根ルート(水城涼真、若宮朱莉、スタッフ)


河内長野駅からロケバスで細い林道にある権現尾根ルートのアプローチポイントに到着した水城涼真と若宮朱莉は登山準備をはじめた。マイクをつけてカメラ前に立って最初に話はじめたのが若宮朱莉だった。


若宮朱莉「みなさん、こんにちは。タレントの若宮朱莉です。今回はわたしと旦那様がはじめて出会った岩湧山でこの番組を見ていただいている視聴者のみなさんを含めて結婚式するという企画になっております。そこでわたしの山の師匠でありながら旦那様でもあるアウトドアライターの水城涼真さんをご紹介します。旦那様、お願いします!」

水城涼真「みなさん、はじめまして。えっと朱莉ちゃんの夫であるアウトドアライター水城涼真です。私はテレビ出演とか苦手なのですが、今日は特別に出演することにしました。今回は岩湧山をバリルートで歩いていくわけですが、いつもは私がルート解説をしています。しかし本日は朱莉ちゃんの成長をみていただこうと思い、若宮朱莉ちゃんに案内をしていただきます。私がテレビ出演するのはこれが最後だと思いますが、よろしくお願い致します」

若宮朱莉「涼真さん、かしこまらないで、いつもの感じで話してくれればいいから!ではでは、みなさんよろしくお願いします」


そこでスタッフがオッケーという言葉を発していよいよ権現尾根への入山口に到着した。ここには何の道標もなければわずかな踏み跡しかない。あらかじめ調べていた若宮朱莉はその入山口の前に立った。


若宮朱莉「みなさん、ここから権現尾根に取り付いていくわけですが、見ての通り道標やテープなどありません。わずかな踏み跡がありますので、それを辿って権現尾根へと登っていきます。これこそバリエーションルートといえます。ではここから入山していきましょう」


そういってカメラを切ると若宮朱莉は水城涼真のところへ行って「本当にこの道で合ってる?」と聞いてきた。水城涼真は「自分を信用せなあかん。方角的にも合ってるから大丈夫や」と言った。10分程登っていくと権現尾根に取り付いたので若宮朱莉は「岩湧山は左ですが、まずは権現山へピークハントします」とカメラの前で言った。尾根に出て右へ進み10分程で岩場のピークとなっている権現山(標高423m)に到着した。


若宮朱莉「まずは軽く権現山(標高423m)に到着しました。これからいくつものピークを越えて岩湧山へ向かっていきます」


そこから戻って権現尾根をひたすら30分程南へと歩き続けるとキノコ型の東屋とベンチが設置されている横谷山(標高451m)に到着した。この東屋は珍しいので撮影をしたが、スタッフが少し息を切らせているようだ。まだ歩きはじめて1時間も経っていなかったのだが、重い荷物やカメラを背負っているスタッフに気を遣った水城涼真は若宮朱莉に「朱莉ちゃん、ちょっとここで小休憩にしたほうがええよ」と言った。若宮朱莉は頷いて「ここで少し休憩とします」と言った。


水城涼真「朱莉ちゃん、俺たちだけやなくてスタッフの様子も伺いながら休憩を挟むようにせなあかんで」

若宮朱莉「そうだね。わたし、自分のピースで進行させてたから反省するよ」

水城涼真「そういえば、今日はなんで40リットルのザックなん?そないに荷物あれへんやろ?」

若宮朱莉「それはナイショだよ」

水城涼真「まあそれはええけど、次はコヤブ山の先でもう一回休憩入れたほうがええかも。そこから先は本格的な登りになるからな」

若宮朱莉「地図でみるとこの辺りだね!?わかった!」


休憩が終わって再びスタッフとともに歩きはじめた。しばらくすると梨ノ木峠を通過して梨ノ木トンネルの上部を歩いていた。そこで若宮朱莉は「今、わたし達はトンネルの上を歩いています」と言って先を進んでいった。そして梨ノ木山(標高435m)を経てついにコヤブ山(482.8m)に到着した。


若宮朱莉「只今、コヤブ山を時刻通りに通過いたしました。まもなく岩湧山への本格的な登りがはじまります」


それを聞いた水城涼真は少し笑いながら若宮朱莉のほうへ歩いていった。


水城涼真「新幹線やあるまいし、三河安城駅を時刻通りに通過しましたみたいな解説いるか?」

若宮朱莉「あはは、それもそうかもね!」

水城涼真「それよりこの先の平坦なところで休憩入れたほうがええよ」

若宮朱莉「うん、わかってる」


コヤブ山のピークを過ぎた辺りの平坦な道で休憩となった。ここから距離は短いがダイヤモンドトレイルと合流地点までは急登が続く。



午後16時20分・・・根古峰(有本淳史、天音琴美)


紀見峠から歩いてきた有本淳史と天音琴美は根古峰で休憩していた。


天音琴美「ねえ、あっちゃんとせっかく登山デートしてるのに想い出がないのはつまんない」

有本淳史「想い出といっても単に山歩いてるだけやからね」

天音琴美「じゃあここで想い出作ろうよ」

有本淳史「どうやって作るん?」

天音琴美「えいっ!」


天音琴美は突然有本淳史に抱きついた。それに対して有本淳史は困惑してどうしていいのかわからなくなっていた。そこで天音琴美は有本淳史の右頬にキスをした。


有本淳史「これはまずいっしょ」

天音琴美「このくらい大丈夫よ。ちゃんとあっちゃんのファーストキスは奪わなかったしいいじゃん」

有本淳史「いや、それでも・・・これが想い出になるん?」

天音琴美「うん。あたし、あっちゃんのこと大好きだけどこれ以上踏み込むと後戻りできないから・・・」

有本淳史「わかった。でも、もし俺と琴美ちゃんが35歳になっても結婚してなかったらこの続きしてもええよ」

天音琴美「それって約束でいいの?あたし、本気にしちゃうよ?」

有本淳史「うん。それは約束するわ。それより先を急ごう」

天音琴美「そうだね。今日は涼真さんと朱莉ちゃんの第二結婚式だしね」


そうして2人は根古峰からダイヤモンドトレイルをひたすら歩いていった。そして午後17時過ぎには東峰に到着していた。岩湧山の山頂まであと少しというところだ。



午後16時30分・・・キトラ山(樫田裕、清水紗理奈、片瀬彩羽)


樫田裕と清水紗理奈、片瀬彩羽の3人は続いてキトラ山を目指して歩いていた。鉄塔を過ぎてしばらく歩いていると樹林帯の中にあるキトラ山のピークに到着した。まだ時間があるとのことでこのピークでまったりすることにした。


清水紗理奈「樫田君、あとどのくらいで岩湧山の山頂に着く?」

樫田裕「そうですね、40分くらいでしょうか」

片瀬彩羽「意外と早いんだね」

清水紗理奈「やはりバリエーションルートで登ってる水城さんと朱莉ちゃんが一番時間がかかりそうだな」

樫田裕「向こうは一応ロングコースで撮影もしていますからね」

片瀬彩羽「それにしても2人がはじめて出会ったこの岩湧山で二度目の結婚式をするなんてよく考えたわよね」

清水紗理奈「片瀬、羨ましいんだろ?」

片瀬彩羽「羨ましいってわけじゃないけどロマンチックなことを考えるんだって思っただけよ」

清水紗理奈「そうだな。私達もそろそろ考えないといけない年齢なのかもな」

片瀬彩羽「清水は特に考えないといけないわね」


そんな2人の話を聞きながら樫田裕は思わず「フフ」と笑ってしまった。


清水紗理奈「樫田君、何が面白いんだ?」

樫田裕「いや、清水さんって本当に可愛らしいなって思いまして・・・」

清水紗理奈「可愛いってなんだ!?私は年上のお姉さんなんだじょ!」

樫田裕「すんません。でも、僕はそういう清水さんが大好きですよ」

片瀬彩羽「うふふ、清水、よかったじゃない」

清水紗理奈「なんだかバカにされてるみたいだけど、一応ありがとうと言っておくじぇ」

樫田裕「そろそろ行きましょうか」


そうして3人はキトラ山から歩きはじめた。ここからはなだらかな斜面だったので岩湧山の高原地帯にさしかかったのは意外と早かった。



午後16時40分・・・権現尾根ルート最後の急登(水城涼真、若宮朱莉、スタッフ)


コヤブ山を後にした水城涼真と若宮朱莉は権現尾根ルート最後の急登にさしかかった。ここから標高約300m程は急登になるのだが、登りの手前で若宮朱莉がカメラの前に立った。


若宮朱莉「ここからダイヤモンドトレイルとの合流地点まで標高約300m程の急登になります。今回のルートで一番キツイとされるポイントですが、焦らずゆっくりと登っていきたいと思います。それではがんばりますが、旦那様からも一言お願いします」

水城涼真「えっと、急登といっても標高300mなので約1時間程ですが、こういう斜面では常に上を見ず、足元を見ながら登っていくのがコツです。それではいきましょうか」

若宮朱莉「それでは登っていきます」


そして収録を終えると水城涼真がやってきて「朱莉ちゃん、いきなり俺にふらんといてや。びっくりして何話したらええかわからんようなったわ」と言った。それを聞いた若宮朱莉は「うふふ、自然なコメントで涼真さんらしかったよ」と言った。そこから斜面を登っていったが、さすがの若宮朱莉も標高10m程登っては息を切らしていた。次第に周りは植林地帯へと化していったが登っていくにつれて斜面が穏やかになっていった。ところが尾根の途中から踏み跡が途切れてしまって若宮朱莉は戸惑ってしまった。


若宮朱莉「涼真さん、左側にわずかな踏み跡があるけど合ってるのかな?」

水城涼真「方角があってるんやからその方向に行けばええねん。バリルートに正規なんて存在せんからな」

若宮朱莉「じゃあ面倒だからこのまま尾根を登っちゃうね」

水城涼真「ホンマは左やろうけど、朱莉ちゃんの好きなように登って行けばええ」


そうして若宮朱莉は「このまま尾根を直登します」と言って踏み跡もない道を登っていった。本来は水城涼真のいうように左側に行くのが正しいのだが、そのことは後で気づくことになった。急斜面を登りはじめて1時間20分程でようやく鉄塔75番に辿り着いてダイヤモンドトレイルと合流した。そして若宮朱莉がカメラの前に立ってコメントした。


若宮朱莉「みなさん、ようやく急登が終わってダイヤモンドトレイルに合流しました。あとは東側へ進むと岩湧山の山頂になります。時刻は18時を過ぎていますが、日没までには登れそうです」


ここで本来なら滝畑ダムから登ってきている樫田裕、清水紗理奈、片瀬彩羽の3人と合流できるはずだったが、そこには姿がなかった。



17時30分・・・岩湧山山頂広場で合流


岩湧山山頂広場に一番に到着したのは滝畑ダムから登ってきた樫田裕、清水紗理奈、片瀬彩羽の3人であった。まだ日没前で山頂付近は明るかったが関西国際空港から大阪湾を経て神戸市街までの海岸線が見えている。北西側には普段大きく見えている生駒山が小さく見えており、さらにその東側には奈良市街、その北側には京都市街までも一望できていてさすがに新日本百名山の一つである素晴らしい眺望である。


清水紗理奈「これが岩湧山か。なかなかグッドな景色だな」

片瀬彩羽「水城さんから何度か写真で送っていただいたけど、やはり生で見ると違うわね。夜景が楽しみだわ」

樫田裕「どうやら僕らが一番だったようですね」


それから15分程すると北側から2人の男女が歩いてきた。よくみると有本淳史と天音琴美であった。岩湧山の山頂で一度立ち止まると山頂広場のほうへ歩いてきた。


樫田裕「あっちゃん、早かったやないですか」

有本淳史「結構ハイペースであるいてきたからな」

天音琴美「みなさん、お待たせしました」

清水紗理奈「天音さん、あっちゃんとのデートはどうだった?」

天音琴美「もう最高でしたよ!あははは」

片瀬彩羽「それより水城さんと若宮さんはまだなんですね」

樫田裕「あっちは一番のロングコースですからね。ここでまったり待っていましょう」


水城涼真と若宮朱莉はようやく広大なカヤト(ススキ)の草原地帯の階段になった。若宮朱莉はカメラの前に立って「岩湧山の山頂は広大なススキの高原になっておりまして、わたし達はようやく高原地帯に入りました。この階段を登っていくといよいよ岩湧山の山頂となります」と言った。今は時期的にススキが伸びていないが高原地帯の階段をひたすら登っていった。しばらく登っていると向こう側に見える山頂広場に人が集まっていた。そして18時10分過ぎに水城涼真と若宮朱莉は山頂広場に到着した。


若宮朱莉「みなさん、おまたせしました!」

天音琴美「朱莉ちゃん、お疲れ様でした。みんな無事合流できて本当によかった」

若宮朱莉「それにしても今日はとても景色が綺麗ですね。夜景が楽しみです」

樫田裕「雨上がりやから空気が澄んでるんよ」

若宮朱莉「あっ!カメラマさん、あそこの景色を撮影していただけますか?」

天音琴美「朱莉ちゃん、どこを撮影するの?」

若宮朱莉「あそこから大峰山脈が綺麗に見えているんですよ」


若宮朱莉とカメラマン、音声さんは大阪方面とは反対側のほうへ歩いていくと若宮朱莉は「ここで解説をしますのでお願いします」と言って収録がはじまった。


若宮朱莉「あちら側にわたしの大好きな大峰山脈が一望できていますので紹介していきますね。右からいきますが、まずお釈迦様が設置されている釈迦ヶ岳、その左側の高い山が仏生ヶ嶽、そこからずっと左側に明星ヶ岳で真ん中が近畿最高峰の八経ヶ岳、その左側が弥山です。さらに左側に稲村ヶ岳とすぐ隣の尖った山が大日岳、さらに左側には女人禁制の山上ヶ岳と大天井ヶ岳が見えています。さらにずーっと左側を見てみると近畿のマッターホルンと呼ばれている高見山が見えています。岩湧山の山頂からこれほどの山が見えているなんて非常に珍しいかもしれません・・・以上です!」


そういって収録を終えると若宮朱莉は水城涼真のほうへ走っていき「涼真さん、さっきの解説で合ってるよね?」と聞いた。水城涼真は「朱莉ちゃん、よー勉強したな。完璧な解説やったわ」と答えた。


その後、しばらく休憩をとって日没を迎えた。雲が少し多かったので夕景は撮影できなかったが日没後30分程して辺りが暗くなると若宮朱莉が「ちょっと向こうのトイレで着替えてきます」と言ってザックを持って東峰ほうへ歩いていった。その間、水城涼真は地面にアルミシートを敷き、カメラの三脚にランタンを吊るして、チタン製のカップにコーヒードリッパーを取り付けてお湯を注いだ。コーヒーを全員に配り終えてまったりしていた。



19時10分・・・出会った頃のように


しばらくすると山頂のほうからカサッ、カサッという足跡が聴こえてきた。水城涼真は「ん?」と思いながら足跡が聴こえているほうをじっと見ていると、あきらかに女性だと思われるシルエットが現れてきた。そしてその女性が階段を登り終えると少し息を切らしながら「やっと岩湧山の山頂だね」と呟くと、岩湧山の山頂看板の前に立ち止まった。しばらくすると雲がはけて月が出てくると、山頂付近は月明りに照らされて明るくなった。そこには白いバケットハットをかぶって、白いレースの半袖ワンピース姿、白い革のレースアップシューズを履いてた。その後、その女性の姿を見た水城涼真は不思議そうな表情をしながら「あれはここではじめて会った時の朱莉ちゃん・・・」と呟いた。すると若宮朱莉は山頂広場のランタンの明かりと水城涼真に気づいて歩いてきた。若宮朱莉は「カメラさん、このシーンをお願いします」といって山頂広場のほうへ歩いてきた。


若宮朱莉「はじめて出会った時、わたしはこの恰好だったよね。今にして思うと恥ずかしいけど・・・」

水城涼真「あの時の服、まだ持ってたんや」

若宮朱莉「だって、運命の出会いだったから・・・今日も想像以上の素晴らしい夜景だね」

水城涼真「そっか、朱莉ちゃんはあの時の出会いを今でも大切にしてるんやね」


そこで他のメンバーが「ハッピーウェディング!」と声を揃えて言った。そこでカメラの前に立った若宮朱莉は「わたしはここではじめて今の旦那様と出会いました」と説明した。そして清水紗理奈がザックからチーズタルトを取りだすと「これがお二人の想い出の味でしょ」と言った。みんなコーヒーとチーズタルトを食べながら岩湧山からの夜景を眺めていた。そこで天音琴美がカメラの前に立って水城涼真と若宮朱莉にコメントをした。


天音琴美「みなさんこんばんは。女優の天音琴美です。今回は涼真さんと朱莉ちゃんの2回目の結婚式という形になりましたが、実は北アルプスの立山・雄山で一度本格的な式は終えています。しかし、2人がはじめて出会ったこの岩湧山の山頂で2回目の結婚式をするとのことであたしも参加させていただきました。この結婚式はみなさんにも祝福されたいという気持ちがあってのことです。今後ともこの2人のことを応援してください。よろしくお願いします。それと、全く別の話になりますが、あたしには好きな人がいましたが本日をもって諦めることにしましたことをご報告させていただきます」


天音琴美の最後の報告を聞いてみんな唖然としていた。これは間違いなくあっちゃん(有本淳史)のことなのだ。コメントを終えてすぐに若宮朱莉は天音琴美のほうへ走っていった。


若宮朱莉「天音さん、最後にいった報告ってあっちゃんのことですよね?」

天音琴美「そうなんだけどもういいの。あたしは芸能人、あっちゃんは一般人、住む世界が違いすぎるから」

若宮朱莉「そんなの関係ないじゃないですか!天音さんもあっちゃんも一人の人間なんですよ?」

天音琴美「それはわかってる・・・でも、どうしようもないし、あっちゃんはあたしのこと女性として見てないから!」


そこに水城涼真がやってきた。


水城涼真「天音さんは相当あっちゃんが好きなんやね。はじめて自分を一人の人間として見てくれた人なんとちゃうの?」

天音琴美「それは・・・」

水城涼真「言い訳が上手いのは芸能人の特権かしらんけど、自分の気持ちは言い訳で解決せんよ」

天音琴美「でもあたしにはどうすることもできないんです」

水城涼真「一つだけ方法があるやん。あっちゃんにその気持ちをぶつければええよ」

天音琴美「わざわざフラれに行くなんて嫌です」

水城涼真「本当にフラれるんかな?そんなんまだわからんやん。あそこのベンチにあっちゃん座ってるから試してきたらええやん」

若宮朱莉「天音さん、ファイトです!今の気持ちを伝えずにいたら後で後悔しますよ」

天音琴美「・・・わかった、だったらフラれてくる」


そのまま天音琴美は有本淳史が座っているベンチのほうへと歩いていった。



19:30・・・新しい恋


天音琴美が有本淳史が座っているベンチのほうへ行って「隣いい?」と声をかけた。有本淳史は「別にええよ」と言ったので天音琴美は隣に座った。最初は何から話していいのかわからず困惑していた天音琴美が「あの・・・」と声をかけた。


有本淳史「ん?琴美ちゃんどないしたん?」

天音琴美「あ、あのね、あっちゃんってあたしのことどう思ってるの?」

有本淳史「どうって、難しい質問やね」

天音琴美「あたしのことやっぱり女性として見てないの?」

有本淳史「そんなことはないけど、芸能人やからどういう見方したらええかわからんのよ」

天音琴美「あたしが芸能人ってことはどうでもいいというか、一人の人間としてどう見ているの?」

有本淳史「うーん、気の合う人って感じかも。琴美ちゃんいじりやすいし」

天音琴美「あ、あたしが、あっちゃんのこと大好きって言ったらどうする?」

有本淳史「それは普通に嬉しいな」

天音琴美「そうじゃなくて恋愛感情があって大好きって言ったらどう?」

有本淳史「あっえっと、そういうこと考えたことないからよーわからんかも」

天音琴美「あたしは、恋愛感情としてあっちゃんのことが好きなの。大好きでたまらないの。ずっと一緒にいたいの!」

有本淳史「それは困るかも。だって琴美ちゃんは東京やし、うまくやっていける自信あれへんよ」

天音琴美「だったらあたしが毎月あっちゃんの家に行くし、結婚を前提にお付き合いしたい!あたしじゃダメ?」

有本淳史「ダメやないけど、琴美ちゃんは俺なんかでええん?」

天音琴美「あっちゃんがいいの。それ以外の人は考えられない!」

有本淳史「うーん・・・じゃあそういう方向性でいこか」

天音琴美「え?それってあたしと付き合うってこと?」

有本淳史「うん。俺は恋愛に興味はなかったけど、ここまで想われたら断られへんからな」


こうして有本淳史と天音琴美の恋愛関係がはじまった。実は半年後に有本淳史が引越しをして東京にある天音琴美の家で一緒に住むことになり、最初に子供ができたのも有本淳史と天音琴美であった。



20:10・・・下山、その後


水城涼真と若宮朱莉の第二回目結婚式の収録を終えるとみんなきゅうざかの道で下山していった。ロケバスは下山口の岩湧寺の前で待機していた。最後に水城涼真と若宮朱莉が2人でベンチに座って話をしたところに到着した。若宮朱莉は「カメラマさん、ここで最後の収録をお願いします」といった。ベンチには水城涼真と若宮朱莉が座って収録がはじまった。そこで若宮朱莉が突然「いいことを思いつきました!!!」と少し大きな声で言った。


水城涼真「なんや突然、びっくりするやん!」

若宮朱莉「ごめんなさい。でもかなり名案だと思います」

水城涼真「話がよーわからんのやけど、名案って何?」

若宮朱莉「これからも涼真さんと一緒に山へ行きましょう!!」

水城涼真「はぁ?」

若宮朱莉「これからもわたしと一緒に山へいきませんか?」


これは最初に2人が出会った時の会話そのものだった。これで全ての収録が終わったのだが、放送されたのはそれから1週間程後のことであった。この放送はあまり視聴率がよくなかったが、一部のファンからは否定的なコメントはなく「お幸せに」といった励ましのものが多かった。その後の水城涼真と若宮朱莉の夫婦生活は安泰であったことはいうまでもない。

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